引退の美学 キムハヌル―第2の人生はユーチューバー

チーム・協会

【<Photo:Yoshimasa Nakano/Getty Images>】

NOBUTA GROUP マスターズGC レディース マスターズゴルフ倶楽部(兵庫県)最終日

 キムハヌルのラストホール、18番は必死のパーセーブだった。「どうしても、バーディーで締めたい」と開幕前から話していただけに、残念無念。しかし、これが勝負の厳しさ。とはいえ、涙をこらえながらの表情は、ギャラリーの胸を熱くした。

 「朝から、普段と変わりはない。いつもの試合の感じでプレーができた。でも、18番のティーイングエリアに立つと、これが最後…。そう思うと自然に涙が出そうになって、とても悲しい気分」。引退試合のファイナルラウンドは2バーディー、3ボギーの73だった。通算2アンダー、20位タイ。

 そして、今大会を振り返り、「予選通過は絶対、果たしたかった。いいプレーができたと思います」と笑顔をのぞかせている。この日、改めて、第二の人生へ言及。意外な進路を語った。

 「ユーチューバーになります」。このひとことに、思わず目を見開いてしまった。「私のいろいろな姿をお見せしたい。ゴルフの動画はたくさんある。だから、違うものをつくります。たとえば、選手がどんな感じで1日を過ごすか。引退はするわけですけど、選手のハヌル。普段のハヌルなど、すべてを皆さんへお見せしたい。ダンスも考えている」と明かす。まったく新しい将来像。実に楽しみだ。

 日本では7シーズンを過ごした。これも人生の計画。来日する2年前から、日本語の家庭教師をつけ、きっちりと準備を行ってきた。しかし、日本語は外国人にしてみれば複雑怪奇。とても難解だ。

 「数字の4。よんと、し、2つの発音がある。苦労しました。また7も、しちとなな。本当に使い分けが難しい。です、ます、の使い方も、選手の皆さんはもとより、コースでたくさんの時間を過ごしたキャディーさん達が親切に教えてくださった。ありがとうございます」と感謝のメッセージを伝えている。

 一方で、忘れられないのはたくさんのファンから愛されたことだ。「皆さんの声援が力になりました。また、お会いできる日を楽しみにしています」と、もちろん日本語でお別れの言葉をのべている。

 アスリートの引き際は、さまざまだ。「まだ、第一線でプレーできる」。多くの人が早すぎる引退を惜しむ。しかし、悔いはない。記録はもちろんだが、日本のファンの記憶に残った。ひとつ、加えるならハヌルさんはショット、所作などを含め、すべてが美しい。とりわけ、桜の花が似合う選手だった。ご活躍をお祈りいたします。
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