パートナーとともに歩んできたこれまで、そして今後の軌跡「協業が生み出す価値と切り拓く未来」【未来へのキセキ-EPISODE 25】

鹿島アントラーズ
チーム・協会

【©KASHIMA ANTLERS】

 たとえば、混み合う飲食ブースや売店でわざわざ財布から現金を出さずにスマホ決済で”ピッ”と商品を購入できたり、公共施設にもかかわらず女性用トイレが斬新なデザインで衛生かつ機能的だったりする。昨今、一般の商業施設などでは当たり前のことかもしれないが、スポーツイベントが行われるスタジアムや競技場ではそうではないのが実情だ。鹿島アントラーズの本拠地となるカシマサッカースタジアムでは、すでにそれらが実現されている。

 カシマスタジアムでの最新技術導入の立役者は、アントラーズを支えるパートナー企業たちだ。キャッシュレス決済はNTTドコモやメルカリ、おしゃれで機能的な女性用トイレはLIXILによるもの。豊かな観戦環境が提供されるメリットは、スタジアムを訪れるファン・サポーターだけでなく、それらパートナー企業にとっての価値提供も目指している。キャッシュレス決済導入によるスマートスタジアム化を推進するNTTドコモと、ファミリー層や女性層の来場者に対してブランドエンゲージメント向上を図るLIXILの期待も込められている。

 この他にも、イエローハットによるホームゲームで選手が3ゴールすると表彰する「イエローハット ハットトリック賞」や理想科学工業による特別色で印刷した「オリジナル手ぬぐい」の来場者プレゼント、サントリーによる試合日のプロモーションイベントとして「プレモルセミナー」開催や、昭和産業によるSDGs(持続可能な開発目標)という社会的課題に対して環境に配慮されたバイオマスごみ袋の実証実験など、パートナー企業とアントラーズの施策は多岐にわたる。いずれも双方にとっての利益を生むものだ。

【©KASHIMA ANTLERS】

 これまでスポーツ業界において、企業による従来のスポンサーシップは、いわゆる「露出主体型」がメインだったと言える。スポーツクラブはスポンサー企業に対し、コーポレートロゴの「露出」を価値として提供してきた。だが、アントラーズは長期にわたり、そのスポンサーシップのあり方として、クラブとスポンサーの「協業」を重視している。

 そのようなクラブの思いは2020年に明確化された。「協業型」スポンサーシップをさらに推進させる意図もあり、アントラーズでは「スポンサー」という言い方を改め、「パートナー」に統一。クラブとして提供できる価値は単なる「広告露出」だけではない。「パートナーシップ」を結ぶ企業と目的を共有し、あらゆる企業課題の解決に対してともに取り組むことなど、その確固たる意思を示した形だ。マーケティングダイレクター(MD)の鈴木秀樹は言う。

「我々としては単純に今まで通りではなく、考え方を変えて企業の課題解決のお手伝いができればというメッセージを込めて、〝スポンサー〟から〝パートナー〟へとネーミングを変えました。これからはパートナーと協業していくことが求められています。それも言葉だけではなく、結果としてのアウトプットが必要。一緒に何をもたらしたのか。お金なのか事業なのか、それとも社会貢献なのか。いろいろな形はあるけれど、一緒にやったことが対外的に表れるようアウトプットすることがすごく大事になる。今まで単純にセールスをやっていたスタッフは、相当に頭を使わなくてはいけない時代になりました」

【©KASHIMA ANTLERS】

 地域の企業に向けた取り組みとしても新たに会員制の組織「ビジネスクラブ」を立ち上げ、2021年10月時点で43社が集った。加盟企業からの年会費の一部を理念協賛金として、クラブが実施する地域貢献活動へ充て、その対価としてPR支援やカシマスタジアムにおける観戦と応援のための特典を提供している。また、加盟企業同士の交流を通じたビジネス機会も創出。アントラーズが加盟企業によって地域と「共存共栄」し、ともに盛り上げていく狙いがある。

 アントラーズの資産と権益を最大活用し、ともに課題解決を目指して成長する「オフィシャルパートナー」、目的に応じてアントラーズの資産と権益を活かしてクラブを支える「ビジネスパートナー」、成長を掲げながらともに地域を盛り上げていく「ビジネスクラブ」、商品・サービスの提供によってクラブを支援する「サプライヤー」、相互発展に向けた学術提携を行う「アカデミックアライアンス」。これら5つのカテゴリーから成る「パートナー」は、2021年10月時点で「122」を数えた。

2021年10月21日、株式会社カネカとクラブオフィシャルパートナー契約締結を発表した記者会見での様子 【©KASHIMA ANTLERS】

 そのなかでも、アントラーズの最上位パートナーが「オフィシャルパートナー」だ。継続20年を超える企業数は、15社中9社と半数を超える。パートナー企業との長期にわたる関係性によって成り立っていることもクラブの特長の一つであり、それらの企業が30年の歴史をともに歩んできたことは、大きな財産であるとも言える。ただ、それに甘んじるつもりはない。時代の変化とともに、これまでと同じでは通用しない。それに見合ったアップデートを見据えている。

「選手のトレンドと同じように、スポーツを支援する世の中のトレンドも変わってきています。むしろ上場企業では、SDGsなどの文脈は外せなくなっていて、企業価値に直結してきているわけです。社会の一員として、どのような役割を果たしているか。それをアントラーズとともに世の中へ伝えていくことが求められています。昔は一つのセールスシートで10社営業できました。それがそれぞれのパートナーに対して、それぞれに合った形へカスタマイズしていかないといけない時代になってきている。クラブとしてそういった能力を求められているし、それに沿った人材育成も進めていかないといけません」(鈴木秀樹MD)

 30年前、人口約4万5000人だった茨城県鹿島郡鹿島町に誕生したアントラーズは、「99.9999%不可能」といわれたJリーグ加盟を果たし、現在では国内最多のタイトル数を誇るクラブとなった。その奇跡を支えたパートナー企業とともに、アントラーズは新たな未来に向けた軌跡をたどっていく。「Football Dream」の理念のもと、アントラーズに関わるすべての人が笑顔であふれることを目指して。

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著者プロフィール

1991年10月、地元5自治体43企業の出資を経て、茨城県鹿島町(現鹿嶋市)に鹿島アントラーズFCが誕生。鹿角を意味する「アントラーズ」というクラブ名は、地域を代表する鹿島神宮の神鹿にちなみ、茨城県の“いばら”をイメージしている。本拠地は茨城県立カシマサッカースタジアム。2000年に国内主要タイトル3冠、2007~2009年にJ1リーグ史上初の3連覇、2018年にAFCアジアチャンピオンズリーグ初優勝を果たすなど、これまでにJリーグクラブ最多となる主要タイトル20冠を獲得している。

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