優勝した長崎と不完全燃焼のJリーグOB  当事者が振り返るソナエルJapan杯

宇都宮徹壱

「もっとOBを使ってほしいですよね」都並敏史(J-OB副会長)

現在はブリオベッカ浦安を指揮するJ-OB副会長の都並敏史さん。ソナエルJapan杯の結果に反省しきり 【宇都宮徹壱】

 今回のソナエルJapan杯では、8グループに分かれての予選ラウンドが行われ、各グループ1位通過クラブ、各グループ2位のクラブの中から最も100点取得者の多いクラブ(今回は藤枝MYFC)、合計9クラブにチームJリーグOBが加わって決勝ラウンドが行われた。前述の通り、チームJリーグOBは10位に終わった。4人いるJリーグ選手OB会(J-OB)副会長では最年長、元日本代表でブリオベッカ浦安の監督でもある都並敏史さんは、いたく恐縮した表情で語る。

「順位もさることながら、チームJリーグOBの点数があまりにも低かったので、非常に反省しております。上位3クラブが4桁、他のクラブも3桁だったのに対して、われわれだけが74点。せっかくJ-OBの会員は500人以上いるのに、横のつながりが生かしきれていない。あとは発信力が足りていないですよね。僕自身、今はツイッターをやっていないです。昭和の人間の弊害ですかね(苦笑)」

 J-OBが「一般社団法人Jリーグ選手OB会」として設立されたのは09年。今年7月に理事の顔ぶれが刷新される中、15年に入会した都並さんは橋渡し役として残ることになったという。今回のソナエルJapan杯に限らず「もっとOBを活用すべき」というのが都並さんの主張。その理由をこう語る。

「OBというのは、言ってみれば地域のレジェンドですからね。自分たちは、地域にとっての財産でもあるという意識付けを取り組んでいきたいと思います。それと僕たちOBには、もともとネットワークがありますし、それなりに知名度もあります。ですから、本当はもっといろんなことができるはずですよ。僕自身、現役選手よりも時間はあります(笑)。ですので、もっとOBを使ってほしいですよね」

 今回のソナエルJapan杯に関して、J-OBは9月1日の記者発表会に佐藤寿人会長や中田浩二副会長が登場するなど、組織としてかなり貢献している印象を受けた。それだけに肝心のコンペティションで、不完全燃焼な結果に終わってしまったのは実に残念。もうひとりのOBにも、話を聞いてみることにしよう。

「誰もが被災者になるリスクがある」播戸竜二(J-OB副会長)

引退後はJ-OBの副会長をはじめ、さまざまな分野で活躍する播戸竜二さん(2019年撮影) 【宇都宮徹壱】

「JリーグのOBって、5000人くらいいるらしいんですよ。でも、実際にJ-OBに入っているのは1割くらい。もともと分母が少ない上に、今回のソナエルJapan杯では告知もできていなかったし、準備の時間も足りていませんでした。まずJ-OBの会員数を1割から2割、2割から3割と地道に増やしていきたい。そのためにはJリーグとの関係性、そしてファンやサポーターとの交流を増やしていくことで、OBが入りたいと思えるような組織にしていきたいですね」

 そう語るのは、やはりJ-OB副会長の播戸竜二さん。現役引退の会見で「将来、Jリーグチェアマンになりたい」との夢を語っていただけに、J-OBの発展についても意欲的だ。ちなみに現チェアマンの村井満さんは、ソナエルJapan杯でのチームJリーグOBについて、このようなコメントを残している。

「Jリーグも開幕から30年近く経って、当時20代だった選手たちも50代くらいになりました。その間に家族を持ち、一家の大黒柱となり、引退後はひとりの社会人としてさまざまな分野で、さまざまな地域で活躍されています。これだけOBの層が分厚くなってきたわけですから、今回のソナエルJapan杯でのジョインの仕方についても、プログラムの設計段階でもっと考察すべきでした。そこのところは反省しています」

 幸いソナエルJapan杯は、今後も続くようだ。今回の反省点を踏まえて、より広い層にもリーチできるようなJ-OBの活用を考えたいところ。ネットワークと知名度があり、さまざまな土地にファンを持つOBには、各クラブとは違った形で防災の入り口へと導く可能性が秘められている。最後は「未来のチェアマン」を目指す男に、締めていただこう。

「僕自身も参加して思ったのが、こうした防災の知識が得られるのは、とても有意義なことだということ。設問のひとつひとつが、覚えて損がないことばかりです。地球規模の気候変動によって、いつでもどこでも自然災害は起こり得るし、誰もが被災者になるリスクがある。そんな中、防災の入り口としてソナエルJapan杯があって、各Jクラブや僕らOBがハブになっていけば、地域や社会への恩返しになるんじゃないかと思っています」

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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