冠番組が2年目に入った内田篤人が明かす 日本代表運命の10月決戦のポイントは?

飯尾篤史

冠番組が始まって1年、対談をしたり、大学に指導に行ったりと、「やりたいことをやらせてもらっている」と話す内田篤人さん 【YOJI-GEN】

 DAZNで配信中の初の冠番組「Atsuto Uchida's FOOTBALL TIME」が好評だ。欧州でプレーする日本代表選手たちがゲストとして登場し、深いトークを繰り広げたかと思えば、内田篤人さん自らグラウンドに飛び出し、大学生を指導。野村明弘アナウンサーや日向坂46・影山優佳さんとのやりとりも軽快だ。9月のカタール・ワールドカップ(W杯)・アジア最終予選ではDAZNの裏チャンネルで解説にも挑戦。そんな内田さんの目には最終予選を戦う日本代表がどのように映っているのか。「真夜中のサバイバルマッチ」となるサウジアラビア戦のポイントとして挙げたのは……。

ソファに座って好きなことをしゃべっているだけ

――DAZNで昨年10月1日から始まった「Atsuto Uchida's FOOTBALL TIME」が1周年を迎えました。1年やってみて、どうですか?

 もう1年経ったんだなって。あっという間ですね。引退してすぐに声を掛けていただいて。自分のサッカー番組をやるなんて想像もしていなかったので。話を持ってきてくれた方が、すごくサッカーが好きそうな方で、内容を聞いて面白いかもな、やったら楽しそうだな、って感じたんですよね。それで引き受けさせていただきました。

――“MC内田篤人”の自己評価は、いかがですか?

 いや、自分ではMCじゃないと思っているので。MCは(アナウンサーの)野村(明弘)さんだと思っていて、自分はソファに座って好きなことをしゃべっているだけ。カゲ(日向坂46の影山優佳さん)もうまく回してくれますし、いろんなゲストの話が聞けるのも楽しいですね。だから、仕事としてのプレッシャーはほとんどないです(笑)。すごく良い形で、やりたいことをやらせてもらっています。

――あらためて、この番組の魅力やウリはどこだと感じていますか?

 番組として海外の日本人選手を追いかけているんですけど、自分も海外で長くプレーしてきたので、彼らの考え方とかバックグラウンドを伝えられたらいいなと思っています。あと今、U-20日本代表、次のパリ五輪世代の選手たちを(ロールモデルコーチとして)見させてもらっているので、練習内容とかメンバーの情報も入れていきたいですね。

――選手目線のカメラを取り入れたボード解説も好評のようですよ。

 これは僕が「やりたい」と言ったんです。サッカーは上から俯瞰して見ると簡単そうに見えるけど、実際には限られた時間とスペースの中でプレッシャーを受けながらプレーしているわけで。選手目線じゃないと分からないことってたくさんある。それを伝えられないかなと思って、やってみたいと言いました。

――特に印象に残っている企画は、ありますか?

 いろいろなゲストの話を聞けるのは楽しいし、あとは実技ですね。(岩政大樹さんが監督を務める上武)大学に行った企画。これも僕がやりたかったことで、楽しかったです。やっぱりプレーできる人がやって見せるのが一番、手っ取り早いので。こういう練習をしていたんだよ、とか。それができないんだったら、自分がやっている意味がないので。

一緒に戦ってきた選手にマイクを向けるのは難しい

ホームで迎えたW杯アジア最終予選・初戦のオマーンに不覚を取った日本代表に対して内田さんの意見は…… 【Getty Images】

――内田さんのアドバイスの効果がすぐに出ていましたね。

 ああいうのって、うまくいかないと「ん?」って感じになると思うんですけど、岩政さんがトップチームの選手たちを連れて来てくれたので、飲み込みが早かったんじゃないかと思います。

――あと、影山さんが意外とうまくて、驚きました。

 カゲは本当にうまいですよ。ちゃんとサッカーをやってきた感じがありますよね。あんなサッカー好きな女の子も、なかなかいないです。

――「いろいろなゲストの話を聞けるのは楽しい」という言葉もありましたが、これまで吉田麻也選手、川島永嗣選手、大迫勇也選手、遠藤航選手、植田直通選手、鈴木優磨選手……といった面々が登場しました。インタビュアーとして心掛けていることは?

 そこは難しくて。今まで自分が答える側だったので、相手に失礼のないようにしています。引退したからといって、何を言ってもいいわけではないと思うので。一方で、気持ちが分かるからこそ引き出したいなとも思うし。そのバランスが難しいです。例えば、(吉田)麻也とは仲が良いので、その関係性は生かしたいけど、リスペクトしたいので茶化したくはない。そのあたりはしっかり線を引きたいな、と思っています。

――ズバッと切り込みたいけれど、気持ちが分かるだけに切り込めない部分もあったり?

 切り込むとかは正直、思ってなくて。自分が聞きたいことを聞いているだけですね。ただ、試合後の選手インタビューは本当に難しいです。自分も(日本サッカー)協会の仕事をしているし、かつて一緒に戦ってきた選手にマイクを向けるのは、正直難しいですね。短い時間しかないから、しっかり話を聞けるわけでもない。しかも、負けた後にインタビューするのは特に難しいです。勝った後なら、なんでもオーケーだからいいんですけどね。

――9月には日本代表のカタールW杯アジア最終予選が開幕しました。オマーンに0-1で敗れ、中国に1-0で勝利しました。率直にどう感じましたか?

 スタートの1個目がうまくいかなかっただけで、そんなに問題ないかなと思っています。みんな「大丈夫か?」って言うじゃないですか。でも、あれで危機感が生まれたと思うし、今までもそうした経験をしてきたし、なんやかんやで大丈夫でしょう、という気持ちでいます。それに後から、ああだこうだ言っても取り返せないわけじゃないですか。切り替えればいいだけです。

――1敗ぐらいで動じず、普段通り行けよ、と。

 行ってほしいですね。一緒にプレーした選手もたくさんいるし、ノビノビやっているところが見たいですから、僕は。頑張ってほしいと思います。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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