桑田真澄のコーチとしての指導力 経験を生かして新たな自分を作り上げる

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チャレンジ精神と年齢差

若手選手たちと膝を突き合わせる桑田氏にとって、息子と過ごした時間が指導のヒントになる可能性も 【写真は共同】

 心配が杞憂に終わりそうな理由として、桑田氏の向上心と柔軟性、常に新しいものに挑戦するチャレンジ精神があるだろう。その姿勢は現役時代から変わらず、登板後のアイシングをいち早く取り入れ、移動バスや球場内での禁煙・分煙化を言い出したのも桑田氏だった。今ではしっかりと認知されたトミー・ジョン手術も、桑田氏がメスを入れた95年当時は数件しか報告例がなかった。

「とにかく勉強家です。現役時代からそうでしたけど、引退してからはさらに専門的に野球のトレーニング法だったり、ケガの予防法だったり、いろいろと研究してきました。そこで学んだことを私に対して語ることはないですけど、現役の選手たちに聞くと、『聞いたことに対して返ってくる言葉がすごい』と言う。それは現役時代の経験だけじゃなくて、引退してからいろいろと学んで見識が広がった部分が大きいのだろうなと思います」

「これまでも桑田さんが子供たちに対して怒鳴ったりしているところは見たことがない。どこがどうダメなのかをしっかりと説明する感じです。お互いが話し合って、お互いが納得するまで話をする」

 今回、桑田氏に密着したTBS『バースデー』のテーマは「令和の指導法」だった。父親としての顔とコーチとしての顔。そこには多くの共通点があるはずだ。

新たな桑田像を作り上げる

引退後は早稲田大学の大学院に進学するなど、現役時代に培った経験値に新たな視点を加えて自身のアップデートを図ってきた 【写真は共同】

 TBS『バース・デイ』は今年3月にも桑田氏の密着番組を放送した。自身が出演した番組はまったく見ないという桑田氏だが、放送後の周囲からの反響は大きく、「これまではそんなことなかったんですけど、前回の放送が終わった後に『(番組の)DVDを送ってね』って言われたんです」と田中氏は明かす。「それでも本人は見てないと思います。桑田さんのお母さんやMattは見たかもしれませんけど……」と続けるが、桑田氏にとっての2021年の生活は、近年になく刺激的で、自分自身としても興味があるはずだ。

 そして桑田氏を長く取材してきた田中氏は、桑田真澄という男の魅力を訴える。

「桑田さんの優しさは普段の言葉遣いからも伝わると思います。それだけじゃなくて、あんまりイメージにはないかもしれませんけど、基本的には大阪人ですから面白いことが好きですし、ダジャレもよく言いますから(笑)」

 世代によって「桑田真澄」に対するイメージは大きく異なるだろう。そしてこの先、令和の時代もまた違ったものになっていく。素のままの桑田真澄を多くの者が知り、桑田氏自身も新しい挑戦を続けながら、父として、そして巨人軍コーチとして、新しい自分像を作り上げる。その作り手は他でもない、桑田氏本人の手に委ねられている。
田中悦子(たなか・えつこ)
長年TBSの野球班として活躍。TBSスパークル所属

TBS『バース・デイ』
<放送日時> ※関東ローカル
9月18日(土)夕方5:00〜 後編
先週(9/11)の放送回はTVer.で見逃し配信中! ※9月18日(土) 16:59 終了予定

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