車いすラグビー、かつての課題が武器に 悲願の金へ、ローポインターがカギを握る
王者・豪州を破った相手にほぼ完ぺきな立ち上がり
前日に金メダル最右翼の豪州を撃破したデンマークに快勝した日本。悲願の金メダル獲得へ、勢いを増していく 【写真は共同】
デンマークは世界ランキング7位で、パラリンピック初出場。世界ランキング3位の日本には問題ない相手にも見えるが、前日の25日にパラリンピック2連覇中の王者・豪州を相手に1点差の劇的勝利を収めた、勢いのあるチームだ。車いすラグビーに精通している人ほど、「豪州に勝ったチームが相手」と不安な気持ちを持つかもしれないが、ティップオフするとそんな疑念は一瞬で吹き飛ぶほど、第1ピリオドから素晴らしい試合展開を見せた。
開始からトライを連発したエースの池崎大輔や、変幻自在の“タッチダウンパス”を送る池透暢の通称「イケ・イケコンビ」の躍動もちろんあるが、それと同じくらいにローポインターの活躍に要因があるだろう。
守備から流れを呼び込んだ若山、今井
スタメンに名を連ね、相手ハイポインターの攻撃を抑えた若山(写真右) 【写真は共同】
障がいの重い選手は持ち点が低く、主に持ち点1.5以下の選手を「ローポインター」と呼ぶ。一方で障がいの軽い、主に得点に絡む池崎、池、島川慎一の主力選手3人は持ち点3.0で「ハイポインター」と言う。ハイポインターのうち2人がコートに立つとき、他の2選手で2.0点以下にしなければならないため、必然的にローポインター2人がコートに立つことになるのだ。
ローポインターのチームでの役割は主にディフェンスで、ゴールの前に壁を作ったり、車いす前部のバンパーを生かして相手選手を止めたりする。攻撃時には、バスケットボールのスクリーンプレーのように、相手選手の進路を車いすでふさぎ、ハイポインターのための進路を作ったりする、縁の下の力持ちとしての役割をこなす。
デンマーク戦では、ローポインターがその役割を見事にこなした。スタートから出場したローポインターの若山英史は「相手のハイポインターが良いプレイヤーなので、スピードに乗せると自分たちがすごく不利な状況に追い込まれると思った。なので、(開始から)しっかりプレスをかけて、ディフェンスからしっかり自分たちの流れを作っていこうと(チームで)話をしていた。そういったことができたんじゃないかなと思います」と、試合開始からのアグレッシブなディフェンスが効いたと語っている。
ケビン・オアーHCは試合後、「(スタート時の持ち点)3-3-1-1がマッチアップ的にもすごく機能し、トランジションも理想的だった。彼らがやってくれたプレーでチーム全体に良い活力を与えた」とコメント。スタメン起用された持ち点3-3のイケ・イケコンビと、1-1の若山と今井友明のローポインター2人の活躍が、チームに良い流れを与えたと言えるだろう。