日本バスケ界期待の20歳・富永啓生 パリ五輪はNBA選手として「メダル獲得」

平野貴也

東京五輪新種目のバスケットボール3x3に出場した富永啓生。3人制での五輪初挑戦をどのように感じ、どのような糧にしようと考えているのか。オンラインで話を聞いた 【スポーツナビ】

 東京五輪で新種目として注目されたバスケットボール3x3に出場した男子代表最年少の富永啓生は、将来が楽しみだ。東京五輪では8試合を戦い、チーム最多55得点をマーク。得意の外角シュートだけでなく、ドライブでゴール下へ切り込むプレーでも得点を重ねた。桜丘高(愛知)3年生だった2018年ウインターカップで1試合平均39.8得点を挙げて名を上げた選手だが、シューターとしての高い能力にはさらに磨きがかかっている。

 今も主戦場は5人制。高校卒業後は米国にわたって活動を続けており、今秋からは、NBAの登竜門とも言えるNCAA(全米大学体育協会)1部のネブラスカ大に編入する。3人制代表としての五輪初出場を経て、夢のNBA入り、5人制日本代表での五輪出場と夢は広がる。富永は3人制での五輪初挑戦をどのように感じ、どのような糧にしようと考えているのか。オンラインで話を聞いた。(取材日:8月14日)

詰めのところを少し直せれば、また違った展開に

決勝トーナメント準々決勝でラトビアに惜敗。目標としていたメダルには届かなかった 【Getty Images】

――東京五輪が閉幕して少し時間がたちました。今は、落ち着いた感覚ですか?

 次に切り替えないといけない時ではあるので、切り替えようとはしていますけど、まだ少し余韻もありますね。五輪は世界で一番注目される大会。そういった大会に出場できて戦えたということは自信を持って、これから先に生かしていけたらいいなと思っています。

――初めて出場した五輪の雰囲気はどうでしたか?

 五輪は今までに経験したことのない、一つひとつが未知の場所で、貴重な経験ができました。無観客でしたけど、その分、SNSとかでたくさん応援していただきましたし、「面白かった」「楽しかった」という反応がたくさんいただけて嬉しかったです。選手村では、ケビン・デュラント(ネッツ/米国代表)とかルカ・ドンチッチ(マーベリックス/スロベニア代表)とか、至るところにNBA選手がいて、異次元の世界でした。あまり他競技の方との交流はありませんでしたけど、テニスの錦織圭さんとすれ違ったときは、オーラがあるなと感じました。

予選R最終戦、日本は大逆転で決勝T進出を決めた

予選ラウンド最終戦、決勝トーナメント進出を決めてチームメートと喜ぶ冨永(写真中央) 【Getty Images】

――大会は全体的に惜敗が多かった印象ですが、世界との距離はどう感じましたか?

 まず、チームで目標としていたメダルに届かなかったのは残念でしたが、本当にあと一歩の差だったと思っています。セルビア戦以外は、どの試合も2点差、3点差の接戦。大事な場面のターンオーバーや、あと一歩の詰めのところを少し直せれば、また違った展開になっていたと思いますし、日本ももっとレベルアップしてメダル争いに加わることができたらいいなと思います。

――大会のハイライトとしては、予選ラウンド最終戦で中国に21-16で勝って大逆転で決勝トーナメント進出を決めた劇的な試合が挙げられます。また、準々決勝では、優勝したラトビアに18-21と食らいつきました。この2試合は、どう感じましたか?

 中国戦は、ベルギーがポーランドをロースコアの展開で破ってくれたので、(予選ラウンド突破の条件となる6位入りを日本と争っていて勝敗だけでなく得点数を稼ぎたかった)自分たちは18点以上を取って2点差以上で勝てば(決勝トーナメントに)行けるというのは、試合前に知っていました。自分たちがやってきたことをやるだけだとチームで話して、それが本当に体現できた試合が中国戦だったのかなと思いました。

 準々決勝は、もうちょっとやれたと言えばやれましたけど、ラトビアは、本当に一つひとつのプレーが正確で隙がなくて、やはり自分たちの思い通りにやらせてもらえなかったところが点差がついたところだと思います。それでも金メダルを獲ったチームとあれだけの戦いができたというのは良かったと思います。

――1ゲームあたりの得点数6.9点は、全選手中3位。持ち味の得点力は発揮された印象でしたが、ご自身のプレーの手ごたえは、いかがですか?

 1日目だけは、大会の独特な雰囲気で緊張して、少し力が入り過ぎましたが、2日目からは自分のシュートタッチが戻ってきて、良いパフォーマンスでできたかなと思います。レベルの高いところでプレーできて、本当に良い経験だったと思っています。(ゴールに近い)ポストのディフェンスや、イージーミスが出ていた部分は課題だと感じましたけど、通用する部分もたくさんありましたし、今後の自信につながります。

――2019年から3人制の代表に呼ばれるようになり、5人制の活動と3人制の代表活動を両立してきましたが、違いやメリットはどう感じていますか?

 ボールの大きさや、コンタクトの部分のファウルの基準などが違うので、それぞれにアジャストしなければいけない部分はあります。でも、自分は5人制でも3人制でも、求められるのはシュートとドライブで、役割の部分では苦労はしていません。

 プレー面で違うのは、3人制は試合のテンポが早く、コーチが指示できない分、自分たちでたくさんコミュニケーションを取らないといけませんし、チームの人数が少ないので、一人ひとりの(勝敗に対する直接的な)責任が少し大きいかなとも感じました。自分から(チームとしてどう戦うべきかという)アイデアが出てきた部分などは、本当に良い勉強になりましたし、5人制でも続けてできるところもあるので、今回の東京五輪(に至る3人制の挑戦)は、本当にすごく良い経験ができたと思っています。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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