銀メダル獲得は“驚き”であり“当然” 解説者が見た、稲見萌寧の強さ
現世界ランキング1位のネリー・コルダやリディア・コらと堂々渡り合い、日本の22歳、稲見が銀メダルを勝ち取った 【Photo by Mike Ehrmann/Getty Images】
人気ゴルフ解説者のタケ小山氏は、この快挙をどう見たのか。同氏には、稲見に加えて畑岡奈紗、そして今回はフィリピン代表として出場した笹生優花の2人もトップ10入りし、五輪の大舞台でレベルの高さを証明した日本の若い女子選手の未来についても語ってもらった。
自分のスタイルを貫く稲見は世界でもやれる
4連続バーディのあと、16番でパーセーブすると17番でもバーディ。中断明けに4メートルのパットを決めた稲見は、これで一度は首位のネリー・コルダに並んだ 【Photo by Mike Ehrmann/Getty Images】
今年、稲見は日本の女子ツアーですでに5勝するなど絶好調。世界ランキングこそ畑岡奈紗の9位(8月7日現在)より下の28位ですが、それは米女子ツアーの試合のほうが加算ポイントが大きく、上にいきやすいから。今回のオリンピックで2位となり、稲見も十分に世界で戦えることが証明されました。
彼女はショットメーカーとして知られていますが、オリンピックではパットも冴(さ)えていました。どれだけアイアンで寄せても、最後、決めるのはパットですからね。
キーホールは雷雲の接近でサスペンデッドになった17番パー4(311ヤード)。稲見はアプローチをグリーンに乗せたところで中断となりました。グリーンのラインは、すでに読んで決めていたと思います。中断時間は45分ほどだったと思いますが、クラブハウスに戻った稲見はキャディを務める奥嶋(誠昭)コーチと、決めたラインに乗せるイメージの素振りを繰り返していたはずです。
再開後、ハナ・グリーン(豪州)が先にパットを打ったことでグリーンの速さもつかめたでしょう。グリーンは雨を含むと芝が重くなり、遅くなりますからね。その読みがピタリとはまって、4メートルのバーディパットを決めた。これが稲見の勝負の1打だったと思います。後半12番から4連続バーディでノリノリでしたが、16番をパーとし、ふっと気が抜けそうになるところにもうひとつバーディをとってくるんですから、さすがです。
稲見はメンタルも強い。日本女子ツアーでプレーオフ3戦3勝ということからもわかりますが、マッチプレーになってもポーカーフェイスでね。今回の相手は世界ランク11位のリディア・コでしたが、臆することがなかった。
スウィングにしても稲見は自分のスタイルを変えません。これもメンタルの強さがあってこそだと思いますが、流行りのスウィングに流されるプロも多いなか、稲見は自分のスタイルを貫いている。遠くから見ても、いつもどこでも“稲見萌寧”ですから。彼女のようなタイプは長く活躍する。それも世界でやれる、そう思いますね。
最終走者の前でバトンが落ちたような畑岡
畑岡は4日間ともアンダーパーで回り、通算10アンダーで9位タイ。キャディが代わるという緊急事態に見舞われた最終日も60台でまとめた 【Photo by Chris Trotman/Getty Images】
オリンピック後に日本国籍を選択することが決まっている笹生優花も、本当にすごいです。初日に74を叩いてしまいましたが、最終日の17番パー4での1オン1パットのイーグル。彼女の真骨頂でしたね。すでに全米女子オープンというメジャーを獲っていますが、次にまた、いつメジャーを獲ってもおかしくないほどです。
そして、今回のオリンピックには選ばれなかった小祝さくらや、古江彩佳など、国内ツアーで活躍する若い面々は、いずれも“いつでも世界に出せる”選手。渋野日向子はすでにメジャー(2019年全英女子オープン)を獲っていて、もちろんあのときは怖れを知らなかったことも大きいですが、有望な選手であることに変わりはありません。逸材揃いの日本女子は、まるできら星のよう。国内ツアーが盛況ですが、その成果が選手層の厚さに出ています。
日本女子が世界のゴルフシーンで躍動し始めています。ワクワクしかないですね。
(企画構成/YOJI-GEN)
タケ小山(たけ・こやま)
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