体操新エース橋本大輝の五輪回顧「3つのメダルは5年間努力してきた証し」

平野貴也

東京五輪で3つのメダルを獲得した日本男子体操界の新エース橋本大輝。サイン色紙には感謝のメッセージを添えた 【平野貴也】

 カラン、カラン、カラン――
 競技終了の翌日、記者会見の壇上に進んだ橋本大輝(順大)の胸元から、金属音が聞こえてきた。体操男子で個人総合の金、種目別鉄棒の金、そして団体総合の銀。3つのメダルを首にかけていた。団体戦は銀だが、優勝したROC(ロシア五輪委員会)とは、わずか0.1点差。初出場4人で頂点に迫った。

 橋本は、3種目で堂々たる戦いぶりを見せ、ポスト内村航平時代の新エース誕生を国内外に知らしめた。団体、種目別ともに、最後の鉄棒の着地は、見事の一言。プレッシャーが高まる中で、美しい体操を見せつけた。新時代の旗手は、どんな思いで東京五輪に臨み、何を感じ、何を得たのか。競技を終えて間もない橋本選手にインタビューを行った。(取材日8月4日)

延期された1年の使い方がみんなうまかった

今回の東京五輪で獲得した3つのメダルからは、ここまで努力した成果が伝わってくると橋本は説明する 【Photo by Laurence Griffiths/Getty Images】

――記者会見で首にかけていた3つのメダルがとても重そうでした。どう感じていますか?

 この3つのメダルは、ただ純粋に重いだけではなくて、この5年間、僕がリオから感じたことを努力してきたというのが、すごく伝わる重さだと感じています。リオのときはテレビで見ていて「いつか出られたらいいな」って、絶対に出たいという信念が明確ではありませんでした。

 初めて本気で目指したのは、高校2年生(2018年)なんですけど、やっぱり、あの(リオ五輪の団体総合で日本が)金メダルを取れたときというのはすごく印象に残って、憧れの舞台として目指してきました。この5年間、いろいろな人に支えられてやってこられたなって思いました。

――素晴らしい成績ですが、会見で「一番の気持ちは、団体で金メダルを取りたかった」と話したのを聞いていると、金メダルが2つあっても、銀メダルの悔しさは消せないものなのだなと感じました。

 やっぱり、団体で金メダルを取ることが、日本が一番なんだと証明することになります。4人いなかったら、僕も個人総合、鉄棒で金メダルを取れていなかったと思っていて、このメンバーでやってきて、勝てなかったというのが、本当に悔しいなと思いました。

――しかし、団体戦は、中国やロシアには勝てないと思われていたところから、東京五輪の1年延期によって、橋本選手や北園丈琉(徳洲会)選手の成長で世代交代が進んで、強いエネルギーを持ったチームに変わった印象があります。

 延期された1年の使い方が、みんなうまかったと思います。代表選考会や五輪でベストを出すために1年準備してきました。1年前だったら、僕は多分「五輪に出るため」しか努力できなかったと思います。金メダルを取ることの努力をしていなかったというか、していても、身体の状態も追いついていなかったと思います。本当に取れるのか、という不安もありました。でも、この1年で精神的な不安が取れ、身体の休養もできたので、本当にベストコンディションで臨めました。

世代交代ほど面白いものはない

世代交代ほど面白いものはないと語る橋本。ジュニア年代から新たな才能の台頭にも期待を寄せている 【Photo by Laurence Griffiths/Getty Images】

――新世代の台頭がある一方、やはり日本の体操界においては、内村航平(ジョイカル)という絶対的なシンボルとなっている選手がいて、4人の代表が決まっても、取材時の質問に彼の名前が出てくることが多かったわけですが、次の時代の到来をしっかりアピールできた大会になったのでは?

 そうですね。4人の平均年齢が22歳弱だったと思いますけど、世代交代ほど面白いものはないですよね。五輪は4年に一度。毎回同じヤツが出ているなんて面白くないじゃんって、僕は思います。(2004年アテネ五輪で「栄光の架け橋」と呼ばれた鉄棒の着地を決めて団体金メダルを取った)冨田洋之さんと内村さんで9年離れていますし、航平さんと僕が12年離れています。世代交代が10年に1回は起きる感じだったのかなと思いますけど、この先は、僕の1歳年下に北園君がいて……。世代交代されたくないから、もう不安というか(笑)。でも、逆に、安心というか、そう思える相手がいるから強くなれると思います。

 今の体操界は、ジュニア年代から強化されていて、世代交代は簡単に起きます。例えば、僕は今回(代表選考会の対象だった)全日本選手権とNHK杯を優勝しましたけど、もしかしたら萱和磨(セントラルスポーツ)選手、あるいは谷川航(セントラルスポーツ)選手、北園丈琉選手の優勝と何パターンもありえたじゃないですか。

 リオ五輪の代表選考では、航平さんが絶対王者でしたけど、今までに比べて1位を争える人、世界のトップを目指せる選手が増えています。もちろん、航平さんのように何回も(五輪や世界一を)経験している人がいたら心強いなとは思いますけど、世界一を狙える選手が4人もいたら、そりゃ世界一を取れるだろうというような、そんなチームだなって思います。だからこそ、僕は過去最強というか、今までにない強さを持ったメンバーじゃないかと思っています。

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著者プロフィール

平野貴也

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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