久保と堂安の同時替えは正解だったのか? 本田泰人が指摘するスペイン戦の敗因

吉田治良

延長戦にもつれ込む激闘の末、スペインに敗れて決勝進出を逃したU-24日本代表。個の力で打開できる久保と堂安のどちらかを、ピッチに残しておく手もあったか 【写真は共同】

 優勝候補の筆頭スペインと激闘を繰り広げたU-24日本代表だったが、延長の115分にゴールを許し、あと一歩のところで金メダル獲得の夢は断たれた。オーバーエイジの3人を中心に、ディフェンス陣は奮闘していた。ならば、両者の明暗を分けたファクターはなんだったのか。元日本代表MFの本田泰人氏に、強豪を苦しめながらも最後は力尽きた敗因を分析してもらった。

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途中出場で良かったのは相馬くらい

延長前半の102分に惜しいヘディングシュートで見せ場も作った前田だが、最大の武器であるスピードを生かしたシーンはほとんど見られなかった 【写真は共同】

 負けてしまったね、残念ながら。最後は力尽きた感じだったね。

 失点する少し前くらいからペナルティーエリアに入られるシーンが増えてきて、それまではなんとか耐えていたけど、あの時間帯だけパタリと足が止まってしまった。

 ただ、(マルコ・)アセンシオじゃなかったら、あんなシュートは打てていないと思う。(83分に)彼が入ってくるまでのスペインには、あれほど質の高いシュートを打てる選手はいなかったからね。

 そういう意味でも、明暗を分けたのは途中出場の選手だったかもしれない。日本で良かったのは相馬(勇紀)だけだった。途中から入ったら、あれくらいアグレッシブじゃないと。三好(康児)や上田(綺世)はバイタルエリアでなかなか攻撃に絡めなかったし、特に前田(大然)はスピードが一番の武器のはずなのに、それがまったく生きてなかった。

 押し込まれた状態でボールを奪い返した瞬間は何度かあったのに、そこから前へ飛び出していくスピード感がなかったね。惜しいヘディングシュートはあったけど、前田のストロングはそこじゃない。ちゃんとアップをしたのかなって、そう思ってしまったくらいだよ。

 この過密日程の中で、途中出場の選手が力を発揮しなくてはならないのは、相手が疲れている試合終盤。スペインはアセンシオ以外の選手も自分の役割を全うして、日本にとって嫌な存在になっていた。例えば後半の頭から右サイドバックで起用された(ヘスス・)バジェホとかね。そこには相馬をぶつけて、向こうの良さは消せたんだけど。

 これは「たら・れば」で、あくまでも結果論だけど、延長になっても久保(建英)か堂安(律)のどちらかは、ピッチに残しておいても良かったかもしれない。2人とも疲れていたのは確かだけど、彼らには単独で局面を打開できる力があるし、(延長の頭から)同時交代させるのではなく、どちらかを残していれば、あと何回かは決定的なチャンスを作れていた可能性がある。やっぱり攻撃に関しては、ここぞというときに絶対的に必要なのは、チャンスを決めきる「個の力」だから。

 ただ、久保はスペインが相手で、ちょっと気合が入り過ぎていたかな。ボールロストも多かったし。ドリブルでの仕掛けで脅威は与えていたけど、相手を意識し過ぎず、もうちょっと普通にやれれば良かったね。

 それでもチームとしてはゲームプラン通りの戦い方ができていたし、アセンシオにやられる115分まではほぼパーフェクトだった。立ち上がりは前から行って、うまくハマらなくてすぐに引いてブロックを作るように切り替えたけど、あの判断も正しかったと思う。

 実際、よく戦っていたし、勝てるチャンスは十分にあった。(1-1で引き分けた7月17日の)強化試合のときよりも状態を上げてくると想定しても、俺は勝たなきゃいけない相手だと思っていた。スペインの前線にはそれほどスーパーなタレントがいないからね。もちろんペドリはすごい選手で、この試合もたくさんボールに触れて、怖い存在ではあったけど、彼も直接的にゴールに絡むタイプじゃない。

 総合力は一枚上手で、ある程度支配されることはわかっていたけれど、日本も吉田(麻也)、酒井(宏樹)、遠藤(航)のオーバーエイジ3人を中心に、守備は安定していたからね。強豪相手にディフェンシブに戦わざるをえない状況で、あらためてあの3人のチョイスはベストだったと感じたよ。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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