「マスターズのときとは“顔”が違った」 人気ゴルフ解説者が松山英樹の敗因を分析
7人を2組に分けて行われたプレーオフでは、最初のホールでパーパットを外して脱落。メダル獲得はならなかった 【写真は共同】
自国開催のオリンピックというプレッシャー
優勝したマスターズのときとは、まず“顔”が違ったとタケ小山氏は指摘する。自国開催の五輪ということで、松山が大きなプレッシャーを感じていたのは間違いないだろう 【Getty Images】
首位と1打差の2位からスタートした最終日。ショットは3日目までほどではないですが曲がっていましたし、頼みのパットもいまひとつで、かみ合わなかった。結局、銅メダル争いのプレーオフで脱落し、メダルには届きませんでした。
メダルを獲得できなかった一番の理由は、やはり自国開催のオリンピックというプレッシャーだったように思います。松山の今春のマスターズ制覇を見ていた方ならわかるはずですが、まず“顔”が違いました。マスターズではミスショットが出てもふてくされることなどなく、イライラした様子も見せず、終始にこやかにプレーしていました。それが今日は、神経質そうな様子でマスターズに勝つ前の松山に戻ったような感じがしました。プレッシャーの表れだと思いますね。
もともと、会場の霞ヶ関CC東コースは松山と相性のいいコース。ジュニア時代(2010年)にアジアパシフィックアマチュア選手権で優勝していますし。コース改造は、トム&ローガンのファジオ親子で、彼らはアメリカだと、マスターズの開催コースであるオーガスタナショナルGCも手がけています。松山はファジオ親子のコースと相性がいいと言えます。
また霞ヶ関CCは、松山が2017年に優勝したブリヂストン招待の開催コースであるファイアストンCCに似ているとも言われ、試合前から「カスミ(霞ヶ関CC)は松山のためのコース」「松山には圧倒的な地の利がある」と言われていました。それを本人が意識しすぎてしまったのではないでしょうか。
“見える敵”と戦ってはいけなかった
同組で回った首位シャウフェレ(写真左)を意識しすぎたのも敗因だとタケ小山氏は見る。やはり最終日に同組だったマスターズのリベンジを許す結果に 【Getty Images】
金メダルを獲得したシャウフェレは、松山がマスターズを制覇したときの同伴プレーヤーでした。それが今度は五輪という大舞台でも最終日同組。松山はそれも意識していて、「今度はザンダーが自分を倒しにくる」といったコメントをしていました。自分で自分を苦しくするような発言だなと思いましたね。“見える敵”と戦ってはいけなかったんです。
自分の得意コースで、淡々と20アンダーを目指してプレーすればよかったのですが、相手との戦いを意識しだし、金メダルが大命題というプレッシャーにも襲われて……。結局、シャウフェレにマスターズのリベンジを許す結果となってしまいました。
メダルを逃したもうひとつの要因がフィジカル面。松山は7月に新型コロナ陽性となり、休養を余儀なくされました。今回、松山のお腹がちょっとポチャッとしているように見えましたが、十分なトレーニングができなかったのでしょう。練習をしないと体力は落ちます。しかも炎天下での試合。最終日の後半は歩いている様子を見ても、足が上がっておらず、疲労しているのが見てとれました。プレッシャーで疲労も増幅しますからね。
プレッシャーの要素が幾重にも重なったなかでの4位タイ。今回、もし、自国開催もしくはシャウフェレと最終日同組というプレッシャーがなければ、松山は勝てたのではないかと思います。
(企画構成/YOJI-GEN)
プロフィール
プロゴルファー・ゴルフ解説者。アメリカのゴルフ場所属プロとして世界を転戦。解説業も兼務し、テレビ「サンデーモーニング」(TBSテレビ)や、ラジオ「Green Jacket」(InterFM897)、「The News Masters TOKYO」(文化放送)などで活躍中。世界のゴルフ事情に精通し、歯に衣着せぬその語り口も人気を博す。1964年7月7日生まれ、東京都出身。
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