城彰二が日本代表の金メダルに太鼓判 「この流れで逃したら永遠に獲れない」

吉田治良

チームに勢いをもたらした選手として、城氏は3戦連続ゴールの久保を挙げたが、一方で、その久保を生かすプレーに徹する堂安の成長ぶりも称えている 【写真は共同】

 グループステージ最終戦でフランスを4-0で撃破し、出場国中唯一の3連勝で準々決勝に進出したサッカーのU-24日本代表。ここまで抜群の安定感を誇るチームには、いよいよ1968年メキシコ五輪以来のメダル獲得の気運が高まっている。元日本代表FWの城彰二氏は、すでにニュージーランドを倒してのベスト4入りを確信。「今回を逃したら永遠にないかもしれない」と、金メダル獲得への期待を口にする。

グループステージのMVPは遠藤と田中

敵の攻撃の芽を摘み、スピーディーなアタックの起点にもなる。文字通りチームの心臓部を担った遠藤と田中のダブルボランチが、城氏の選ぶグループステージのMVPだ 【Getty Images】

 グループステージ3連勝を飾り、U-24日本代表が首位で決勝トーナメントに駒を進めましたね。

 最終戦の相手フランスも立ち上がりは前掛かりに来ましたが、個の力だけでは今の日本は倒せません。しかも今大会のフランスは、メンバー的にもランクが落ちる印象が否めませんでしたし、個人的には“順当勝ち”だったと思っています。

 メキシコ戦からスタメンを3人代えるなど、ある程度この先を見据えての試合でしたが、前半のうちに2点を取って、早い段階でフランスのやる気を失わせましたね。

 3連勝での首位通過の最大の要因を挙げるなら、もちろん初戦の緊張感の中で南アフリカに競り勝ったこともそうですが、やはり一番大きかったのは、グループステージ最大のヤマ場だったメキシコ戦の勝利でしょう。立ち上がりにいきなりポポンと点が取れて(6分と11分)、大会全体の流れまで一気に引き寄せた気がします。技術的にはメキシコのほうが上だったかもしれませんが、それ以上に日本の勢いとゲーム運びのうまさが目を引きましたね。

 戦術的には攻守の素早い切り替え、グループでの守備からのスピーディーな攻撃という形が徹底されているのが大きいと思います。全員がハードワークし、誰一人としてサボらない。

 その中でチームに勢いをもたらした選手を1人挙げるなら、やはり久保(建英)選手になるでしょうね。フランス戦も彼に自然とボールが集まってきましたし、3戦連続となる先制点もそうでしたが、本当にここぞという場面で、久保選手の前にチャンスボールがこぼれてきますよね。ああいったラッキーボーイ的な存在が現れるかどうかは、こうした短期決戦ではとても重要なんです。

 ただ、僕が感心させられたのは堂安(律)選手。南アフリカ戦の後に、「堂安選手がちょっと心配」と話しましたが、確かにコンディションはベストではないと思うんです。でも、良くないからこそ切り替えている。自分よりも状態が良い久保選手を生かそうと、コンディションが悪いなら悪いなりにプレースタイルを変えているんです。そのあたりは、「大人になったな」という印象ですね。少し前までは一番じゃないと気が済まないタイプでしたが、今は自分がゲームから消えたとしても、チーム全体のバランスを取ることや、周りを生かすことを考えながらプレーできるようになりました。

 もっとも、僕が選ぶグループステージのMVPは、やはり遠藤(航)選手と田中(碧)選手ですね。このダブルボランチは本当にすごい。相手の攻撃の芽を確実に摘み取るだけじゃなく、そこからビルドアップの起点にもなっている。まさしくチームの心臓で、2人のうちどちらか一枚が抜けただけで、まったく違うチームになってしまいます。

金メダルも狙える良い流れが来ている

準々決勝を突破すれば、準決勝の相手はコートジボワールか、約2週間前に対戦したスペイン。「ヨーロッパ勢のほうがやりやすい」とは城氏の見立てだ 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 さて、準々決勝の相手はニュージーランドに決まりました。正直、フィジカルこそありますが、決して強くはない相手だし、ここは普通にやれば突破できると思っています。

 フランス戦で右サイドバックの酒井(宏樹)選手が、オーバーエイジらしからぬ不用意なファウルでイエローカードをもらい、次戦は出場停止となってしまいましたが、幸い相手は韓国ではなかったし、大きな不安要素にはならないでしょう。そういった意味でも、今の日本はツイているのかなと思いますね。うまく先制点が奪えているゲーム展開や対戦相手も含め、良い流れを掴んでいる。

 ただ、ここからは一発勝負。開始早々に失点すると、バタバタしてしまう可能性もあります。そうなったときに、オーバーエイジを中心にどう立て直すか。あとは、韓国もグループステージ初戦で攻め続けながらニュージーランドに0-1で敗れましたが、決めるべきところで決めておかないと痛い目に遭うということを、いま一度肝に銘じておくべきでしょうね。

 とはいえ、フランス戦ではセンターバックに冨安(健洋)選手も戻ってきましたし、1トップではケガが癒えた上田(綺世)選手も初先発で存在感を見せてくれました。選手層がさらに厚みを増した感がありますし、中2日でうまくコンディションを整えれば、間違いなくベスト4には勝ち上がれると僕は思っています。

 そして、ここを突破すれば、準決勝の相手はスペインかコートジボワール。どちらも手ごわいですが、個人的にはスペインのほうがやりやすいと思っています。つい先日(7月17日)の強化試合でも互角の戦いを演じましたが(1-1)、スペインのように繋いでくるチームに対しては、守備のバランスを整えながら、落ち着いて戦えるはずなんです。

 一方のコートジボワールは、南アフリカとはまた違ったアフリカ勢ならではの独特のリズムがあって、読めない怖さがある。前線は一発も秘めています。もっとも、一度ハマらなくなったら、なかなか修正が効かないチームでもあるので、そうした脆さを突きたいですね。

 はっきり言って、金メダルも狙える良い流れが、今の日本には来ています。戦力がそろっているし、試合運びの安定感も抜群なうえに、運もある。ここから大きく崩れるとはちょっと考えにくいでしょう。

 今回、この流れとこのメンバーで獲れなかったら、永遠に金メダルは獲れない──。そう言い切ってもいいくらい、今のU-24日本代表は充実しているんです。

(企画構成:YOJI-GEN)

城彰二(じょう・しょうじ)

1975年6月17日生まれ。北海道室蘭市出身。鹿児島実業高時代から名をはせ、卒業後の94年、ジェフユナイテッド市原(現・ジェフユナイテッド千葉)に入団。97年に移籍した横浜マリノス(現横浜F・マリノス)でも中心選手として活躍し、2000年1月、スペイン1部のバジャドリーへ。翌年に横浜へ復帰し、その後ヴィッセル神戸、J2の横浜FCに在籍。96年にはアトランタ五輪に出場し、「マイアミの奇跡」と呼ばれるブラジル戦の勝利に貢献。A代表のエースとして98年フランスW杯にも出場した。06年12月の引退後は、サッカー解説者をメインに、13年秋に開校したインテルアカデミージャパンのスポーツディレクターや、故郷・北海道の社会人チーム「北海道十勝スカイアース」の統括ゼネラルマネージャーなど、幅広い分野で活躍する。また、YouTube『JOチャンネル』(チャンネル登録はこちらから⇒https://bit.ly/2IInF8H)のパーソナリティーとしても人気を博す。
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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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