城彰二が日本代表の金メダルに太鼓判 「この流れで逃したら永遠に獲れない」
チームに勢いをもたらした選手として、城氏は3戦連続ゴールの久保を挙げたが、一方で、その久保を生かすプレーに徹する堂安の成長ぶりも称えている 【写真は共同】
グループステージのMVPは遠藤と田中
敵の攻撃の芽を摘み、スピーディーなアタックの起点にもなる。文字通りチームの心臓部を担った遠藤と田中のダブルボランチが、城氏の選ぶグループステージのMVPだ 【Getty Images】
最終戦の相手フランスも立ち上がりは前掛かりに来ましたが、個の力だけでは今の日本は倒せません。しかも今大会のフランスは、メンバー的にもランクが落ちる印象が否めませんでしたし、個人的には“順当勝ち”だったと思っています。
メキシコ戦からスタメンを3人代えるなど、ある程度この先を見据えての試合でしたが、前半のうちに2点を取って、早い段階でフランスのやる気を失わせましたね。
3連勝での首位通過の最大の要因を挙げるなら、もちろん初戦の緊張感の中で南アフリカに競り勝ったこともそうですが、やはり一番大きかったのは、グループステージ最大のヤマ場だったメキシコ戦の勝利でしょう。立ち上がりにいきなりポポンと点が取れて(6分と11分)、大会全体の流れまで一気に引き寄せた気がします。技術的にはメキシコのほうが上だったかもしれませんが、それ以上に日本の勢いとゲーム運びのうまさが目を引きましたね。
戦術的には攻守の素早い切り替え、グループでの守備からのスピーディーな攻撃という形が徹底されているのが大きいと思います。全員がハードワークし、誰一人としてサボらない。
その中でチームに勢いをもたらした選手を1人挙げるなら、やはり久保(建英)選手になるでしょうね。フランス戦も彼に自然とボールが集まってきましたし、3戦連続となる先制点もそうでしたが、本当にここぞという場面で、久保選手の前にチャンスボールがこぼれてきますよね。ああいったラッキーボーイ的な存在が現れるかどうかは、こうした短期決戦ではとても重要なんです。
ただ、僕が感心させられたのは堂安(律)選手。南アフリカ戦の後に、「堂安選手がちょっと心配」と話しましたが、確かにコンディションはベストではないと思うんです。でも、良くないからこそ切り替えている。自分よりも状態が良い久保選手を生かそうと、コンディションが悪いなら悪いなりにプレースタイルを変えているんです。そのあたりは、「大人になったな」という印象ですね。少し前までは一番じゃないと気が済まないタイプでしたが、今は自分がゲームから消えたとしても、チーム全体のバランスを取ることや、周りを生かすことを考えながらプレーできるようになりました。
もっとも、僕が選ぶグループステージのMVPは、やはり遠藤(航)選手と田中(碧)選手ですね。このダブルボランチは本当にすごい。相手の攻撃の芽を確実に摘み取るだけじゃなく、そこからビルドアップの起点にもなっている。まさしくチームの心臓で、2人のうちどちらか一枚が抜けただけで、まったく違うチームになってしまいます。
金メダルも狙える良い流れが来ている
準々決勝を突破すれば、準決勝の相手はコートジボワールか、約2週間前に対戦したスペイン。「ヨーロッパ勢のほうがやりやすい」とは城氏の見立てだ 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
フランス戦で右サイドバックの酒井(宏樹)選手が、オーバーエイジらしからぬ不用意なファウルでイエローカードをもらい、次戦は出場停止となってしまいましたが、幸い相手は韓国ではなかったし、大きな不安要素にはならないでしょう。そういった意味でも、今の日本はツイているのかなと思いますね。うまく先制点が奪えているゲーム展開や対戦相手も含め、良い流れを掴んでいる。
ただ、ここからは一発勝負。開始早々に失点すると、バタバタしてしまう可能性もあります。そうなったときに、オーバーエイジを中心にどう立て直すか。あとは、韓国もグループステージ初戦で攻め続けながらニュージーランドに0-1で敗れましたが、決めるべきところで決めておかないと痛い目に遭うということを、いま一度肝に銘じておくべきでしょうね。
とはいえ、フランス戦ではセンターバックに冨安(健洋)選手も戻ってきましたし、1トップではケガが癒えた上田(綺世)選手も初先発で存在感を見せてくれました。選手層がさらに厚みを増した感がありますし、中2日でうまくコンディションを整えれば、間違いなくベスト4には勝ち上がれると僕は思っています。
そして、ここを突破すれば、準決勝の相手はスペインかコートジボワール。どちらも手ごわいですが、個人的にはスペインのほうがやりやすいと思っています。つい先日(7月17日)の強化試合でも互角の戦いを演じましたが(1-1)、スペインのように繋いでくるチームに対しては、守備のバランスを整えながら、落ち着いて戦えるはずなんです。
一方のコートジボワールは、南アフリカとはまた違ったアフリカ勢ならではの独特のリズムがあって、読めない怖さがある。前線は一発も秘めています。もっとも、一度ハマらなくなったら、なかなか修正が効かないチームでもあるので、そうした脆さを突きたいですね。
はっきり言って、金メダルも狙える良い流れが、今の日本には来ています。戦力がそろっているし、試合運びの安定感も抜群なうえに、運もある。ここから大きく崩れるとはちょっと考えにくいでしょう。
今回、この流れとこのメンバーで獲れなかったら、永遠に金メダルは獲れない──。そう言い切ってもいいくらい、今のU-24日本代表は充実しているんです。
(企画構成:YOJI-GEN)
城彰二(じょう・しょうじ)
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