ニューヒロイン山内梓“風にも負けず”躍進 アーチェリー女子団体が史上初のシード獲得
自分のペースを貫き、風が吹く中でも次々と矢を放つ
女子ランキングラウンド、的を狙う山内梓=夢の島公園アーチェリー場 【共同】
午前9時開始とはいえ、江東区の気温は29度でやはり暑い。時折、心地よい風が吹き込んだが、選手にとってはこれが厄介だった。70メートル先にある、直径122センチの的を狙うが、風が吹けば、矢が流れる。2012年ロンドン五輪で女子団体の銀メダル獲得に貢献したベテランエースの早川でも「6本を打つ間でもコロコロ変わっていた」と言うほど定まらない風だったが、山内は迷わずに自分のペースを貫き、次々と矢を放った。6本の矢を4分間のうちに打たねばならない。それを12回行う。風が気になると打ち切れず、4分の制限時間をいっぱいに使う選手もいる。そんな中、山内は毎回のように1分以上を残して6本を打ち終えた。この日、最高の4位に入った24射を終えた際には、90秒も残すほどのハイペースだった。
山内は「途中で風の向きが変わったり、強さが変わったりして難しいところはあったのですが、そこは風に意識を取られ過ぎず、自分に集中して心掛けました」と試合を振り返った。風向きや強さが一定のときは、風の影響を考慮しながら打つ。そうすることで、風が止むのを待ち過ぎたり、それによって制限時間のプレッシャーを受けることを回避。持ち味であるテンポの良さを存分に発揮した。前日の練習までは少し不安もあったというが、所属先で指導を受けている金清泰コーチに練習の動画を送り、アドバイスをもらっていた。「言われたことはたくさんあったけど、一番は、流れよく。流れが止まって打っていたので。あとは、最後に、押し手を残すこと」と山内。試合中は、点数を気にせず、指摘されたポイントだけに集中したという。
初の五輪、難しい風といった課題を乗り越えて自己ベスト。最年少がチームを引っ張った。ベテランエースの早川も「今日は、お姉さんたちが足を引っ張っちゃったので申し訳ないですけど(笑)、一番若い子が引っ張ってくれたので、日本のアーチェリー界にとって嬉しいことと思う」と山内の躍進を喜んだ。
翌24日の混合団体にも出場。今大会日本勢初のメダル獲得なるか
女子ランキングラウンドの競技前、氷と小型扇風機で体を冷やす山内梓=夢の島公園アーチェリー場 【共同】
山内の躍進は、今後の決勝3種目(混合団体、女子団体、女子個人)の期待を大きく膨らませるものだ。「自分の力が100パーセント……まではいかないですけど、自分の力がいつも通り出せたら、良い結果はついてくるとは思っていたので、ホッとしている」と話すあたり、自信と不安が半々と言いながらも、胸の内にはやってやるという強い気持ちを秘めていたように感じた。
翌24日に男子の武藤とペアを組んで臨む混合団体に向けては「出るからにはメダルを獲得できるように頑張りたい」と意欲を示した。試合の実施時間を考えると、日本勢第1号のメダリストとなる可能性がある。続けて26日に女子団体が行われる。「シードに入ったのが初めてということだったので、そこは自信にして、団体戦まで気持ちをつないでメダル獲得に向けて頑張りたい」と笑顔を見せた。同日夜には開会式が行われ、いよいよ本格的に競技が開始する中、楽しみなニューヒロインが誕生した。
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