堂安律が“負のサイクル”にハマる危険も 南アに手を焼いた日本代表を城彰二が解説
強化試合で4戦連続ゴールと好調だった堂安だが、南アフリカ戦ではやや動きが重かった。負のサイクルにハマらぬよう、メキシコ戦に向けて気持ちを切り替えたい 【写真は共同】
攻撃陣で一番目立っていたのは林大地
前線で身体を張り、ゴールへの貪欲な姿勢も見せた林に、城氏は好印象を抱いた。もう少し冷静さがあれば、オフサイドにかからずゴールも奪えたはずだ 【写真は共同】
ただ、南アフリカは新型コロナ感染者が出て主力を何人か欠いた状況もあって、かなり守備的に臨んできましたから、日本はボール保持率こそ高かったものの、崩し切るのはなかなか難しかった。
加えて今日の日本は、ワンタッチでリズム良く繋いだり、縦パスを入れて落としたところに3人目が絡んだりとか、そういった連係があまり見られなかった印象です。
初戦の硬さはそんなに感じませんでしたが、全体的に動きの質と量が物足りず、なかでも堂安(律)選手が、僕の目には重そうに映りましたね。
強化試合で4戦連続ゴールと、気持ち的にはノッていたと思うんですが、意外とそういうときに“落とし穴”は潜んでいるものなんです。今日、うまくいかなかったのは、たぶん本人が一番よく分かっていると思うので、次のメキシコ戦に向けて、コンディションをもうワンランク上げてほしいですね。
攻撃陣で一番目立っていたのは、1トップで起用された林(大地)選手。スペースに流れて起点を作ろうと頑張っていましたし、自分よりも大きな相手に体をうまく当ててボールをキープするだけでなく、ゴールキーパーとディフェンダーの間に飛び込もうと常に狙ってもいました。
ただ、彼らしいゴールに向かう貪欲さは十分に感じましたが、それプラス、冷静さが必要でした。オリンピックの初戦という意識が強すぎたのかもしれません。だからオフサイドにもよくかかっていましたし、例えばもう少しプルアウェイの動きを取り入れても良かった。それでも、前からの献身的な守備も含め、林選手のスタメン起用はベストな選択だったとは思います。
引いた相手を崩し切れなかった要因としては、ミドルシュートが少なかったことも挙げられます。とくに今日は、田中碧選手がなかなか前線に絡んでいけなかった。バランスを重視したんでしょうが、彼がいつものように2列目から飛び出していくシーンがもっとあれば、もう少し早い時間帯にゴールが生まれていたかもしれません。
中が堅いから、サイドから攻略したくなる気持ちも分かります。しかし、そればかりだと攻撃が単調になるし、今日は左から中山(雄太)選手が何度かいいクロスを入れていましたが、逆サイドの酒井(宏樹)選手は縦にうまく抜けても、クロスの精度がいまひとつ。であれば、縦パスで一度スイッチを入れて、そこから一気にスピードアップする攻め方も、アクセントとしてトライすべきだったと思います。そうしないと、引いた相手は崩せません。林選手のポストプレーも、堂安選手にシュートを打たせた53分の一度くらいでしたからね。
久保(建英)選手も、あの決勝ゴールは本当に素晴らしかったけれど、序盤の決定的なチャンスも外しましたし、“本当の久保”ではなかった気がしますね。彼ならもっとやれるはずです。
いずれにしても、全体的に重かった印象が強いのですが、その原因はやはり“気負い”だったと思います。林選手だけでなく、自国開催のオリンピックの初戦、なんとしても勝たなくてはという想いが、普段着のプレーを邪魔してしまったんでしょう。