プロ野球・チーム別前半戦MVP

里崎智也が混戦のパ・リーグを分析 各球団の「前半戦MVP」も選出!

前田恵

「どのチームも決め手がない」とパ・リーグ前半戦を振り返る里崎智也氏。混戦を抜け出し、優勝をつかみ取るためのキーポイントとは? 【撮影:スリーライト】

 パ・リーグは、オリックスが開幕前の大方の予想を覆し、首位と健闘。だが、首位・オリックスと5位・西武までゲーム差はわずか6.5(7月19日現在)。最下位・日本ハムもAクラス入りのチャンスは十分に残されている。後半戦に向けてペナントの行方がなかなか読みづらい大混戦のパ・リーグ。印象論や感情論を排除して、データとファクトのみで野球を捉える里崎智也氏はどのように分析しているのだろうか。

“吉田頼み”から脱却できたオリックス

杉本裕太郎の活躍が、吉田正尚など他のバッターにも良い相乗効果を与えていると里崎氏は見ている 【写真は共同】

――パ・リーグ6球団の前半戦について、里崎さんからの総評をお願いします。まず前半戦を1位で折り返したオリックス。5月まで5、6位をさまよっていたのが、交流戦の優勝を機に1位へと躍り出ました。

 確かに交流戦での優勝は大きかったですね。昨年までのオリックス打線は、吉田正尚が打てば勝てる、打てなければ負ける、と吉田次第のようなところがありました。吉田の前後を打つ打者が一向に固まらず、外国人選手も不発。だから、山本由伸が最優秀防御率を獲っても、2ケタ勝利につながりませんでした。しかし、今季は吉田の後ろに杉本(裕太郎)が定着したために、吉田が打たなくても杉本が打って勝てるようになった。吉田頼みにならなくなりましたね。また後ろに杉本がいるから、そう簡単に吉田を歩かせられなくなり、結果、吉田をさらに輝かせるという相乗効果が生まれました。あとはもう少し外国人バッターが機能してくれれば、打線がより強化されますね。一番・福田(周平)、二番・宗(佑磨)の一、二番コンビが固定されたことも、非常に大きいと思います。杉本を含めたこの3人が吉田の周りを固めることで、打線につながりが生まれました。

――投手陣には、2年目の宮城大弥投手が前半戦9勝とブレイクしましたね。

 宮城が出てきたことによって、山本で負けても大型連敗せず済む。山岡(泰輔)がヒジの故障で戦線離脱してガタガタッと崩れかねなかったところを、宮城のおかげで踏ん張りました。
――さて2位の東北楽天は7連敗などもありましたが、7月5日に一度4位に落ちただけで、開幕からほぼAクラスを維持しています。

 結局楽天は、マー君(田中将大)、岸(孝之)、則本(昂大)、涌井(秀章)の4人のベテラン投手陣にかかっているんですよね。だから、彼らが状態のいいときはチームも噛み合って連勝するけれども、彼らの状態が悪くなってくるとゲームが作れなくなり、一気に負けが込んでくる。前半はルーキーの早川(隆久)がうまく回りましたが、疲れもあって前半戦の最後に抹消されました。彼は(東京五輪開催に伴う)公式戦中断期間明けには復活するでしょう。打線のほうが島内(宏明)、岡島(豪郎)と頑張っていますが、もう一つ味気なく感じるのは、外国人選手がまったく機能していないところ。そこが後半戦に向けての不安要素ではないでしょうか。

――石井一久監督は、「救援陣が頑張ってくれた」と総括していましたが……。

 今のところ頑張ってはいますが、ガッチリ固まっていないのが心配ですね。安樂(智大)が縦横無尽に、いろいろな場面で頑張ってくれているけれども、ストッパーの松井(裕樹)につなぐまでの7、8回にこの人、というリリーバーがいない。酒居(知史)あたりが頑張っているものの、福山は一度打たれてから連打されるようになったし、ブセニッツも機能しなくなっています。後ろ全体を見れば絶対的とは言えないので、先に言ったように4人のベテランが崩れたら終わりです。そのあたりが、首位をキープできない所以でしょう。
――前半戦、3位に滑り込んだ千葉ロッテはいかがでしょうか。チーム得点384は、なんと12球団トップの数字です。

 まあ、頑張っていますよね。マーティン、レアードが打てば勝てる。この両外国人に荻野(貴司)、中村(奨吾)がつないで、打線がうまく機能しています。ただロッテの課題は、先発投手。2ケタ失点連発で二軍調整になった美馬(学)も、五輪明けぐらいから復帰するとは思いますが、それでもまだ頭数が足りないですよね。

――ロッテのフレッシュな話題としてはW佐々木の千隼&朗希投手と、前半戦終盤の藤原恭大選手の活躍がありました。

 唐川(侑己)がいなくなっても、佐々木千隼が出てきたのはよかったですね。あとは7回をどうするかも、先発不足と共に五輪明けのポイントでしょう。佐々木朗希はまだまだピッチングのスキルが必要です。藤原はチーム全体がいい感じになったのと時を同じくして活躍しているのも、いいと思います。ただ、あの輝きが“夏の蛍”で終わっては意味がないので、後半戦も長く好調を維持できるかどうかですね。

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著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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