プロ野球・チーム別前半戦MVP

岡田彰布が選ぶ、セ・リーグ前半戦MVP 阪神がこのまま逃げ切る可能性は?

大利実

前半戦を首位で折り返した阪神だが、このまま逃げ切れるのか? 岡田彰布氏がセ・リーグ前半戦を振り返り、後半戦の展開を占う! 【撮影:スリーライト】

 首位・阪神から、2位・巨人まで2ゲーム差、さらにその後ろには0.5ゲーム差でヤクルトが追う混戦のセ・リーグ。阪神の監督として2005年にリーグ制覇の経験を持つ岡田彰布氏に、前半戦の振り返りとともに、後半戦の展望を語ってもらった。果たして、岡田氏の古巣である阪神とオリックスの日本シリーズは実現するか――。

ルーキーの佐藤輝明が打線を引っ張った阪神

話題のルーキー・佐藤輝明を岡田彰布氏はどう評価しているのか? 【写真は共同】

――阪神が貯金15で前半戦を終えました。交流戦後、9勝14敗1分と少し苦しみましたが、ここまでの戦いをどう見ていますか?

 オリンピックまでに貯金が二桁あれば、優勝争いをするだろうと見ていたけど、開幕から思った以上にうまくいきすぎかな。一番大きかったのは、サンズ、マルテ、スアレス、ガンケルの外国人を開幕から使えたことでしょう。他球団がなかなかベストメンバーを組めない中で、最初から万全の状態で戦えたことが、開幕ダッシュにつながったと見ています。

――前半戦のMVPを挙げるとしたら誰ですか?

 そりゃ、佐藤輝明でしょう。キャンプのときから、佐藤の存在感が攻撃陣にいい影響を与えていて、開幕2戦目ですぐにホームラン。チームも本人も、「よし!」という気持ちになったんじゃないかな。普通は得点力不足を解消するのは外国人になるけど、日本人の新人がやってのけた。ひとりの選手でこんなにも変わるのかと。それぐらいの影響力がある。セ・リーグ全体で見ても、前半戦のMVPは佐藤ですね。
――三振の多さが話題になっていますが、気にしなくていいですか?

 いや、気にしなくちゃいけない。あんなに三振したらあかんよ。三振を見に来ているお客さんはいないと思うしね。「まだ新人だから」と言われるけど、もうクリーンアップを打つ主力選手。「新人だから200三振をしてもいい」なんて規則はないわけだから、三振記録を作ったらあかんでしょう。

――岡田さんならどんなアドバイスを送りますか?

 「ボール球を振るな。ストライクを打て」。監督やコーチが、選球眼に対する意識をもっと植え付けないと。芯に当たりさえすれば飛ぶんだから。俺からすると、無理にフルスイングしているようには見えなくて、佐藤にとってはあれが普通のスイング。ボール球を振らないようにすれば、もっと打率も上がるし、三振も減ると思うけどね。

――後半戦のポイントはどこになりますか?

 外国人の使い方でしょう。1試合4人までの出場枠(一軍の外国人登録枠は5人。1試合に出場できるのは4人まで)を、どうやって使いこなすか。みんなが活躍しているから使い方が難しい。スアレスは、投手陣のMVP。それぐらい、いい働きをしている。ロハス・ジュニアも、使い続ければ打つよ。

――岡田さんならどういう使い方をしますか?

 まず、そんなに外国人を獲らないね(笑)。その分のお金はほかに使う。みんなが好調だと、本当に迷うからね。

原監督の采配が光る巨人

勝ち方を知り尽くす巨人・原辰徳監督(左)。阪神にとって一番怖い存在であることは間違いないと岡田氏は話す 【写真は共同】

――2位の巨人は、ジリジリと追い上げてきました。

 菅野(智之)が万全ではなく、コロナの影響で主力が離脱した時期があったにもかかわらず、この位置に付けている。後半にメンバーが揃ってきたら、阪神にとっては怖い存在になるでしょう。
――ここまで粘れた要因はどこにありますか?

 原(辰徳)監督の采配じゃないかな。勝ち方を知っているし、長丁場の戦い方も知っている。取材で聞いたときには、「オリンピックまではピッチャーはたくさん使って、後半戦からベスト布陣で戦えれば」という話をしていた。原監督にすれば、まだ“馬なり”だと思うね。

――6月20日の阪神戦では、7回2死二、三塁、打者・北條史也選手のカウントが2ボール2ストライクなったところで、高梨雄平投手から鍵谷陽平投手に代える継投がありました。見事に三振に取って、采配が的中しました。

 あの試合は解説していたけど、原監督なら、やると思ったよね。阪神ベンチはそこまで読んで、代打の準備をしておかないと。北條のところに、代打の糸井(嘉男)。俺ならそうしているかな。

――3位の東京ヤクルトは前評判を覆す戦いを見せています。

 キャンプ中に小川(淳司)GMと話したときには、「外国人2人が合流するまではとにかく我慢」。4月下旬に、オスナとサンタナが入ってから、得点力が上がっている。チーム全体で見ると、山田(哲人)と村上(宗隆)の存在が大きく、投手陣もこの2人が引っ張っている感じがするよね。試合の流れを変えるホームランが多いでしょう。これだけ得点を取ってくれると、投手陣も楽な気持ちで投げられる。そういう意味で、投打がうまくかみ合っているよね。
――3位と4位の差は10ゲームまで開いています。

 中日は投手陣が安定しているけど(チーム防御率3.31でリーグ1位)、得点力がなかなかね(249得点でリーグ最下位)。ナゴヤドームがホーム球場になると、投手有利の野球になるのは当然だけど、ホームランを期待できるのがビシエドぐらいしかいないのは厳しい。足を生かして得点を狙うなど、何かほかの策が必要じゃないかな。

――期待されている根尾昂選手はどう見ていますか?

 根尾は、高いレベルでやらせたほうが成長するタイプ。一軍で使っていることには賛成だけど、下位打順で使うと、その打順に染まった選手になりやすい。上位を打たせてもいいと思うけどね。
――5位の広島はどうでしょうか?

 チームを変えているときじゃないかな。若い選手を積極的に使っている。小園(海斗)は思い切りがよくて、積極的にバットを振れるのがいい。チームとして今はなかなか結果が出ないだろうけど、数年先に良くなっていく可能性は十分にあるよ。
――最下位は横浜DeNAです。

 オースティンとソトが開幕からいれば、もう少し上の位置にいたでしょう。元来、打って勝つチームなので。それだけに、ポイントになるのは投手陣の踏ん張り。ここ数年、ケガで離脱するピッチャーが多くて、しかもその期間が長いのが気になる。今永(昇太)にしても、東(克樹)にしても、ローテの中心になる投手が年間通して投げられないのは、三浦(大輔)監督にとってもきついんじゃないかな。

1/2ページ

著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント