【新日本プロレス】野中大三の「盤石6人タッグ王者に見るロール概念」!!

チーム・協会

【野中大三】

大好評! テレビゲームのプロデュースを行っている、野中大三さんによるプロレスコラム。今回は、いま絶好調のNEVER6人タッグ王者組について執筆!

第32回 盤石6人タッグ王者に見るロール概念

【野中大三】

みなさん、こんにちは。
株式会社カプコンでゲームプロデューサーをしている野中です。

NEVER無差別6人タッグ戦線が熱いです。そう、ものすごく熱い。
話題の中心は言うまでもなく、第21代王者の、石井選手、後藤選手、YOSHI-HASHI選手組です。
昨年8月の王座決定トーナメントを勝ち上がって王座戴冠すると、あれよあれよと言う間に防衛記録のV7を達成してしまいました。
防衛戦はどれも名勝負ばかりで、同王座の価値がグングン上がっているところです。
今回はこの王者組と6人タッグについてゲーム的プロレス論を展開してみます。

6人タッグで盤石の強さを誇る意義

【新日本プロレスリング株式会社】

当たり前のことですが、現王者組は負けていません。負けていないから王者組なわけですが、6人タッグで負けないというのはかなり難しいものです。
6人タッグマッチはシングルタイトルやタッグタイトルの前哨戦で組まれることが多く、結果が読みにくい試合形式だと言えます。
それもそのはず、参加選手が6人、対戦組み合わせは6通り、更にツープラトン、スリープラトンも可能となると個々の力量では試合を決めることが難しくなり、結果的に予測困難な試合になる傾向があります。
予測困難な試合形式なのにずっと負けていない、というのが王者組のすごいところです。
実際のところ、現王者が樹立した防衛回数7回の前の防衛記録は4回で、短命王者が非常に多いタイトルでした。絶対王者が現れにくいタイトルであることが証明されています。
現王者組は王座決定トーナメントから数えると10連勝中であり、この形式では稀に見る盤石の強さであることがわかりますが、その強さの秘密はどこにあるのでしょうか?
3選手とも強いから?絆が深いから?
いえ、僕の見立ては異なります。

それはズバリ、「ロール(役割)」概念が強いチームであるから、なのです。

ゲーム的なロール概念

ロール(役割)というのはゲーム内でのキャラクターの担当役割のことを指します。
攻撃、防御、回復、サポートなどがロールの代表例です。
これだけ聞くと「なんだ、職業(ジョブ)のことか。」と思う方は多いでしょう。
確かに昔からロール概念は存在していました。80年代のRPGの職業は有名ですよね。
戦士、魔法使い、僧侶、武闘家。モンクや盗賊、パラディン、暗黒騎士に遊び人と、いろんな職業が存在してきました。

現在のロールも似たようなものですが、役割はより明確に分けられるようになりました。
現在のロールの代表例は「タンク」「アタッカー」「ヒーラー」が挙げられます。
「タンク」は敵の攻撃を受けて活路を切り開く、防御力に優れたロール、アタッカーはその名の通り攻撃担当のロール。そしてヒーラーはチームの回復薬で、戦闘に直接関わらずタンクとアタッカーの支援を担当するロールです。
シングルゲームの戦士は攻撃も防御も高く、最前線で戦っていたし、僧侶は回復もできて攻撃もそこそこできていました。
それと比較すると最近のロールは役割分担がよりハッキリしたものになっています。

その背景は、オンライン上で遊ぶ多人数参加型ゲームが増えたことにあります。
シングルプレイでコンピューター相手に戦うのではなく、人間同士がチームを組んで競い合うようになると、役割分担を明確にした方がチーム力を発揮しやすくなり、そしてそのチーム力の差が生まれます。

理由は明確で、相手が生身の人間だからです。
AIではなく人間の脳が相手となると、チームワークがモノを言います。
そう、まさにチーム力が個人力を上回るのです。
全員が攻撃可能な戦士パーティでの突撃が通用したのはシングルゲームまでで、多人数対戦となると、きちんとロール分担をしてチームの総合力を高めたチームが勝利と掴むのです。

現王者はロール分けが明確

【新日本プロレスリング株式会社】

さてこのゲームのロール概念を現王者組に当てはめてみましょう。
まず、石井選手は間違いなく「タンク」ですね。後ろに下がらないファイトスタイルで相手の攻撃をとにかく受けます。試合中盤であっても開始直後と変わらない頑丈さで相手の攻撃をガンガン受けてチャンスを切り開きます。

次にYOSHI-HASHI選手。ロールは「アタッカー」と言えます。爆発力のあるファイトスタイルは巡ってきたチャンスをつかむのに適任と言えるでしょう。

最後に後藤選手ですが、僕は「ヒーラー」であると捉えています。
プロレスに回復役?と思われる方もいると思いますが、6人タッグでの後藤選手はとにかくカットプレーの速さと的確さが群を抜いています。もともとタッグの名手でもある後藤選手はタッグマッチの流れの把握力に長けているのでしょう。ピンチのシーンで見事なカットを決めてチームを救います。逆境を跳ね返す活躍はまさに「ヒーラー」といっていいのではないでしょうか。

王座決定トーナメントから数えた10戦中、YOSHI-HASHI選手が勝利を奪った試合は半数の5試合になることからデータ的にこのロール分けは的を射ていると思います。

NEVER6人タッグ戦線の鍵はロール概念にあり!

ロール概念の基本理念は個の力をチームの力で上回ることにあります。
現王者がここまで防衛してきたチームには、オカダ選手、棚橋選手、内藤選手、ジェイ選手といったシングル王座戴冠経験者が含まれていることから、個の力では勝てない、獲れないタイトルであることがわかります。ロール分けに卓越した現王者組を破るのはより強いロール分けをしたチームになるでしょう。
バランスのいいチームだけではなく、タンクが1人でアタッカーが2人といったアンバランスなチームにも可能性は出てくるでしょう。
大切なことは個の力を過信せず、チーム力を上げるためのロールを担えているか、という点にあります。

これから先の防衛戦ではそれぞれのチームのロール分けに着目すると、より深い楽しみ方ができるのではないでしょうか。

野中大三(のなかだいぞう)

株式会社カプコン プロデューサー
プロレス観戦歴、ゲーム歴ともに37年。
好きなロールはタンク一択。

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著者プロフィール

1972年3月6日に創業者のアントニオ猪木が旗揚げ。「キング・オブ・スポーツ」を旗頭にストロングスタイルを掲げ、1980年代-1990年代と一大ブームを巻き起こして、数多くの名選手を輩出した。2010年代以降は、棚橋弘至、中邑真輔、オカダ・カズチカらの台頭で再び隆盛を迎えて、現在は日本だけでなく海外からも多くのファンの支持を集めている。

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