「DAZN Jリーグ推進委員会」月間表彰

J1月間MVP 神戸・古橋亨梧が遂げた変貌 「今年はワガママに、よりエゴイストに」

飯尾篤史

居心地がいいと思ってもらえるように

加入4年目を迎え、主力選手になってきた今、外国籍選手や若手をサポートする意識も芽生えてきた 【(c)J.LEAGUE】

――今シーズンの序盤はサイドハーフでプレーしていましたが、4月頃から前線でプレーするようになり、そこからゴール数が増えていきました。あれは三浦淳寛監督に「得点を取りたいから前でプレーしたい」と直訴したんですか?

 そうですね。どこかのタイミングで「FWをやりたい」と伝えました。今の神戸のサッカーで自分の特徴をより生かせるのはFWだと思ったので、いつだったかは忘れたんですけど、言いましたね。

――前でプレーすれば、点を取れるという自信もあったんですか?

 そうですね、ありましたね。

――そういうところが、すごく力強くなってきましたよね。

 神戸で4年目になって、シーズンを追うごとに結果を残せるようになってきて、自信がついて、自分らしくプレーできるようになったので。調子に乗って、天狗になってしまったらダメだと思うので、そこはちゃんとケジメをつけて、努力をしながら頑張らないといけないんですけど、この自信というのは、なくしたらいけないなと思います。

――チームメートへの感謝、ファン・サポーターへの感謝が真っ先に出てくるあたり、鼻は伸びていないな、と感じますよ。

 良かったです(笑)。サッカーができているのも、いろんな人が協力してくれるおかげですし、僕たちがサッカーを自由にできているのも、ファン、サポーターの皆さんがお金を出してスタジアムまで足を運んでくれるおかげですし、TVやDAZNで見てくれているから頑張らないと、と思わせてもらっています。試合に出ている選手、出ていない選手、みんながひとつになれているから、僕も自信を持って、試合で点を取るために努力できる。ひとりではサッカーできないと思います。

――素晴らしい考え方ですね。ドウグラス選手はもちろんですが、リンコン選手、アユブ・マシカ選手と、ライバルも増えました。

 今は試合に使ってもらっていますけど、ミスをしたり、調子が悪かったりして点が取れなくなってしまったら、スタメンの保証はない。点を取り続けないと、自分のポジションは奪われてしまう、努力していかないといけないな、と思わせてくれる存在ですね。マシカも、リンコンも、素晴らしい選手なので、彼らが自信を持ってプレーできるようにするのも僕の役目かな、とも思っています。マシカもリンコンも日本が初めてで、難しい部分もあると思うんですけど、このチームは居心地がいいと思ってもらえるように、2人が自信を持ってプレーできるように、他の選手と協力してやっていけたらと。

――神戸に加入した頃は、自分のことで精いっぱいだったと思います。この豪華なメンバーの中でどうやっていくか、彼らに迷惑をかけないようにしなければ、というふうに。神戸在籍4年目に入り、結果も付いてきて、チームの中心選手となるなかで、周りの選手をサポートしたい、といった気持ちも生まれてきたのですか?

 そうですね。若手のひとりだった僕も年齢を重ねて、上の方になってきましたし、今まで先輩たちにサポートしてもらったことを、これからは僕もやっていかなければならない立場になったのかなと。もちろん、代表で学んだことを伝えれば、神戸の若い選手も伸びると思うし、プレーで引っ張りながら、自分も成長して、周りの選手も一緒に成長できるような環境を作っていけたらな、と思っています。

――チームは現在(7月9日時点)、リーグ3位です。驚かされるのは、戦い方に幅があることです。3バックにしてみたり、中盤をダイヤモンドにして戦ってみたり、相手によって戦い方を変えています。古橋選手もプレスのかけ方が試合によって異なり、チームとして相手をしっかり分析していることが窺えます。

 試合前のミーティングで、相手がこういうふうにくるからこうしよう、という話をしっかりやっています。ただ、試合をやるのは僕たち選手で、どれだけミーティングで分析したとしても、試合では違うことをやってくるチームもあります。そうしたときに、神戸には素晴らしい選手がそろっているので、ピッチ内で対応できるし、コーチからの指示もすぐに理解できるので、そうした対応力のおかげで今はいい波に乗れているのかな、と。

 負けている時間帯でも、何とか1点をもぎ取って引き分けに持ち込む力もついてきました。ただ、紙一重だとも思っていて。1年間戦っていると、悪い波に飲み込まれてしまう時期もあるので、悪くなったときに、いかにみんながひとつになって、やってきたことを信じて戦えるか。それぞれがやれることをピッチで表現できれば、悪くなったとしても乗り越えられるんじゃないかな、と思っています。

「負けたくないんだろ」って問いかける

今年3月、6月と日本代表に招集され、意識が変化したとともに、欲が高まっているという 【Getty Images】

――日本代表で刺激を受けて帰ってきたと話していましたが、3月の代表戦のあと、4月にゴールを量産し、6月の代表戦のあともまたゴールを量産しています。刺激を受け、成長して帰ってきたことが、分かりやすく数字に表れていますよね。

 そうですね(笑)。コミュニケーションを取って、一緒にプレーをして、たくさんの刺激をもらって。海外組の選手の方が代表に入るうえで、やっぱりアドバンテージがあると思うんですよ。普段から世界を相手に戦っているぶん、評価が高いでしょうし。僕は神戸の選手なので、今いる場所で結果を残し続けないといけない。海外組の選手たちに勝つためには、目に見える結果を出し続けて、追い越さないといけないと思っていて。今は定期的に呼んでいただけているので、そこで得たものを自分の中で整理し、自分の中に落とし込み、目標を高く設定できているから貪欲にできているのかな、と思います。

――海外組の選手たちと話して、課題との向き合い方や目標の立て方において、どんなヒントを得られましたか?

 またこのメンバーと一緒にプレーしたい、またあのユニホームを着て試合に出たいということがすごくモチベーションになるんです。それから、誰にも負けたくないという気持ちが強くなりました。JリーグのFWには、外国人選手もたくさんいますけど、その選手たちに負けたくない、という気持ちがあれば、どれだけ嫌なことも、どれだけキツくても頑張れる。苦しくても「負けたくないんだろ」って自分に問いかければ、走れますし、嫌なことから目をそらさずに頑張れると思うので。それが原動力になっていますね。

――先発出場した6月7日のタジキスタン戦で先制ゴールを決めたとき、大きく吠えていました。あそこまで喜びを爆発させる古橋選手を見たのは初めてで驚きました。どういう思いが爆発したんですか?

 まず、代表に合流するまでリーグ戦で数試合、結果が残せなくて。いいプレーができていないことにモヤモヤして、ストレスがたまった状態だったんです。U-24日本代表との試合にも起用してもらったんですけど、思うようなプレーができず、自分の中で、「何がしたかったんだ」ってすごく後悔したんですよ。

 タジキスタン戦でスタメンで使ってもらえることが分かったとき、もちろん、日本のためにチームプレーをするのが大前提ですけど、なんとしても結果を残したい、と思ったんです。あの試合は初スタメンの選手も初出場の選手も多かったので、先制点が大事、早い時間に点を取ろうと話していたなかで、自分のところにボールが転がってきて、決められた。悪い流れが一気に弾けたというか。あまり、ああいう場面で喜びを爆発させてはいけなかったかもしれないですけど、それぐらい、あのときの僕は切羽詰まっていたというか。

――追い込まれていたんですね。

 そうです。あの点を決められたことで余裕ができたというか、肩の荷が少し下りたというか。だから、叫んでしまったんだと思います。

――すっきりしたことで、そのあと、山根視来選手のパスを引き出してニアに鋭いボールを蹴り込み、南野拓実選手のゴールをアシストするという、躍動感あふれるプレーにつながったわけですね。

 アシストに関しては、拓実がすごくいいポジションに入ってくれたので良かったです。

――代表に定着し始めたことで、最終予選出場やW杯出場という目標も、現実的に捉えられるようになってきて、それがまたモチベーションを駆り立てる部分もあるのではないでしょうか?

 こうやって定期的に呼んでもらえて、また呼んでもらいたい、という気持ちが強くなってきました。最終予選を突破すれば、W杯という素晴らしい舞台がある。なんとしても選ばれたいので、結果を残し続けたいと思っています。

――では最後に、今シーズンの半分が終わりましたが、後半戦はどういうシーズンにしたいですか。

 チームとしては最低でもACL圏内。ひとつでも上の順位を目指して、首位を走る川崎フロンターレに1ポイントでも近づけるように頑張りたいと思います。個人としては得点王を狙っているので、20点以上取りたいですね。

(企画・構成:YOJI-GEN)

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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