アスリートが心置きなくプレーするために――東京五輪の有観客決定は“スタート”だ

大島和人

最終コーナーを回った東京五輪

6月23日で残り30日となった東京五輪の開幕。観客数の上限も決まり、いよいよ実行に向けた最終段階に入った 【写真は共同】

 最終コーナーを回り、7月23日の開幕に向けて強くアクセルが踏み込まれた。それが6月21日の五者協議から見えてきた、東京五輪の現状だ。

 五者協議は国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会、東京都、そして政府による会議体。五者のトップが来日前に顔を合わせるのはこれが最後だった。21日のオンライン会議にはIOCトーマス・バッハ会長、橋本聖子組織委員会会長、小池百合子都知事、丸川珠代五輪相らが出席し、東京五輪の観客数上限を「会場定員の50%以内」「最大1万人」とする決定がくだされた。

 バッハ会長は協議の冒頭でこう述べた。

「アスリートは東京に到着し始めていて、夢を叶える準備をしている。彼らは非常に喜んでいますし、安全安心の大会を実現するために、コロナ対策は意識していると口にしている。IOCのスタッフも現地入りして、いろいろな報告を受けた。彼らは日本のパートナーや友人に感謝をしつつ、大会を楽しみにしている。これからの1日1日が大切です。勤勉に対策をして、すべての必要な対策を講じている日本側の皆様全員に私から感謝を申し上げたい」

 コロナ対策についても、自信を口にする。

「選手村に入る人のワクチン接種率は80%をはるかに超える。メディア全体の接種率も80%に近い数字になると思う。ただワクチンをしていてもしていなくても、ルールは万人に適用され、違反した人は制裁を受ける。多くの参加者は完全にプレーブックを守っている。対策の必要性を分かっていて、遵守すると誓っている」

難しい立場に置かれたアスリート

6月21日に行われた五者競技では、コロナ対策への自信を口にしたバッハ会長 【写真は共同】

 2020年3月24日に東京五輪の1年延期が発表されて以降、大会の中止をIOCや組織委が提起したことはない。一方で「本当に開催できるのか」「開催するべきなのか」という疑問を持っていたスポーツファン、国民は多かったに違いない。

 特に難しい状況に置かれていたのはアスリートだろう。反対世論が強い中で、大会の開催を前提に応援を呼びかけるようなメッセージは抑えざるを得ない。中止の可能性がある大会に向けて準備する精神的な難しさもあったはずだ。

 21日の五者協議では最後の論点だった観客の有無に関する結論が出され、開催に向けた意思決定はすべて終わった。選手村のプレオープンは7月7日で、正式な開村は7月13日。五輪は8月9日の閉幕に向け、実行に向けた最終段階に入ったと言える。

1/2ページ

著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント