侍ジャパン、投打の布陣を予想 ポイントは「1番」と「山本由伸の起用法」

中島大輔

注目は山本由伸の起用法

先発も中継ぎもこなす山本由伸。真夏の炎天下での試合が予想される中、決勝トーナメントはリリーフ陣の活躍が金メダルへの鍵となりそうだ 【Getty Images】

 投手陣は国際経験豊かな田中将大(東北楽天)、菅野智之(巨人)から、今季のプロ野球で大活躍を見せている平良海馬(埼玉西武)、栗林、青柳晃洋(阪神)というフレッシュな面々まで11人が選出された。役割別に分けると、以下のようになりそうだ。

【先発】
田中将大(東北楽天)、菅野智之(巨人)、山本由伸(オリックス)、大野雄大(中日)、森下暢仁(広島)

【リリーフ】
平良海馬(埼玉西武)、山崎康晃(横浜DeNA)、栗林良吏(広島)、青柳晃洋(阪神)、岩崎優(阪神)、中川皓太(巨人)

 注目されるのは、山本の起用法だ。稲葉監督は「先発、リリーフの両方をできる、非常に重要な投手」と話しており、大会序盤は先発で使い、決勝トーナメントではリリーフに回すことも考えられる。短期決戦でポイントになるのは、いかにリリーフ陣を整えるかだ。

 2017年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では5回から平野佳寿(オリックス)、増井浩俊(当時・北海道日本ハム/現・オリックス)、松井裕樹(東北楽天)、秋吉亮(当時・東京ヤクルト/現・北海道日本ハム)、牧田和久(当時・埼玉西武/現・東北楽天)とつなぐ試合もあった。データの少ない国際大会では、細かい継投は相手打線にとって特に対応しにくい。稲葉監督は「プレミアを経験し、ピッチャーを早めに代えたいと感じて今回の11人を選びました」と起用法を明かしており、真夏の炎天下で行われる東京五輪でも5、6回から細かくつなぐ必勝パターンになりそうだ。

 クローザーについて、指揮官は「ギリギリまで決めないで、バッターによって『このピッチャーなら抑えられる』と決めていきたい」と話した。右腕の青柳、栗林、山崎、平良、さらに左腕も中川、岩崎とリリーフのスペシャリストがそろっている。大会終盤になって山本を加えれば、必勝リレーは「鬼に金棒」となるだろう。

 そうした意味でも、ポイントになるのは田中、菅野の両右腕だ。両ベテランがいかに少ない失点で試合を作り、後ろにつないでいけるか。稲葉監督は二人に対し、「投手陣を引っ張ってもらいたい」と話した。沢村賞投手の大野も含め、経験豊富な先発陣にかかる期待は大きい。

稲葉監督が金メダルの先に見据えるもの

 コロナ禍という未曾有の事態で開催される東京五輪。大きな期待を背負って臨む侍ジャパンには、金メダルの先に見据えるものがある。稲葉監督が会見で何度も繰り返したのは「野球人口減少」についてだった。

「野球はこれまで皆さんが非常に注目してくれてきました。野球の競技者人口がどんどん減っているなか、少しでもこのオリンピックが野球に興味を持ったり、野球を始めるきっかけになってくれたりする大会になればいいと思います」

 侍ジャパンの集大成へ。7月28日に始まる初戦に向け、稲葉監督が信頼を寄せる24人が決戦に挑む。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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