ブラサカ日本代表、国際大会で快挙の準V 高田監督、東京パラで「メダルは50%」

スポーツナビ

本番と同じスケジュールで行われた大会で好結果

決勝でアルゼンチンに敗れるも、国際大会で準優勝という結果を残した 【©︎JBFA/H.Wanibe】

「悔しいというよりは惜しかったというか、もったいないなというゲーム」

 決勝後の取材で、日本代表を率いた高田敏志監督はそう語った。やや表情を緩めながら話した言葉は、おそらく偽らざる本音だろう。

 ブラインドサッカーの国際大会「Santen IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2021 in 品川」が、5月30日〜6月5日に品川区立天王洲公園で開催された。東京パラリンピックと同じ日数、競技スケジュールで行われた今大会。男子日本代表は出場5カ国の総当たりで行われたグループリーグを2勝2分けの2位で突破し、世界大会では初となる決勝進出を果たした。決勝は世界ランキング1位のアルゼンチンに0-2で敗れたが、強豪を相手に準優勝という結果を残した。それでも優勝まであと一歩だっただけに、結果を残した安堵感と悔しさが入り混じる感情が高田監督から伝わってきた。

 今大会には、アルゼンチン以外に世界3位のスペインなども参加。7日間で5試合をこなす厳しいスケジュールを戦い抜き、結果を残せたのは、パラリンピック本番に向けて好材料となったことは間違いない。そして、日本代表の現在地とメダル獲得へやるべきことが明確になった良い大会になったと言えるだろう。

守備と攻撃、それぞれに見つかった課題とは?

5試合で3失点と強固な守備を武器に、世界で戦える事を証明した。パラ本番では初出場でメダルを目指す 【©︎JBFA/H.Wanibe】

 この5試合を通して世界に通用する部分があった一方で、課題も見えてきた。

 まず、守備に目を向けると、グループリーグ4試合をわずか1失点に抑え、ディフェンスの強固さは世界でもトップレベルであることを証明した。中でも、中盤の底を担う田中章仁は危機察知能力に長け、相手の攻撃を摘み、サイドフェンス際でのデュエル(競り合い)に何度も勝利した。ブラインドサッカーはフットサルとほぼ同じ40メートル×20メートルのコートで行われるが、両サイドラインに高さ1メートルほどのフェンスが並び、それを利用した攻防が多い。前が見えないブラインドサッカーにおいて、フェンスを利用したパスや、掴んだプレーはとても重要で、そこでのデュエルが勝負を分けることもあり、田中は相手の攻撃を幾度となく封じ続けた。

 チームで取り組んだ守備も機能しており、グループリーグを通じていい距離感で守ることができていた。GL第4戦のアルゼンチン戦でもエースのマキシミリアーノ・アントニオ・エスピニージョを封じ、世界1位のチームを0点に抑え切った(結果は0-0で引き分け)のは大きな自信につながる。

 しかし、決勝ではそのマキシミリアーノに2得点を許し、敗戦を喫した。高田監督は守備面に関して「前回(GL)は100パーセントだったのが、今回(決勝)は98パーセント。その2パーセントをつかれた」と悔やんだ。世界トップレベルの選手になると、1つのミスを見逃してくれない。また、GLと決勝ではモチベーションの違いを含めて全く別のチームになるという経験が、東京パラリンピックを前に経験できたことは貴重な収穫だ。

 一方、攻撃面に関しては5試合を通じて3得点と、やや物足りない結果に終わり、特にアルゼンチン相手には2試合で1点も奪えなかった。それでもチャンスが全くなかったわけではなく、GL初戦のフランス戦でゴールをあげた主将の川村怜も「精度を上げていくことがこれからの課題」と雪辱を誓った。

 高田監督は2018年に行った南米遠征のアルゼンチン戦と比較して、「(南米遠征では)ただ耐えているだけでボールが前に出ないという試合が続いた。今回は意図的にボールや人を動かして、相手のキーマンで世界トップのディフェンダーを狙って潰したりといろいろな仕掛けができた」と、ポジティブな要素を列挙した。

 ブラインドサッカーは、過去のパラリンピックで2つのアジア枠を巡り、強豪の中国、イランの壁を越えられずに出場を逃してきた。東京パラリンピックは開催国枠での初出場となるが、今大会の結果を見ても分かる通り、世界と戦えるだけの力はついてきた。高田監督も「メダルの可能性は50パーセント」と意気込む。地元開催での大舞台に向け、改めて見えてきた課題を昇華し、初出場でのメダル獲得に期待したい。

(取材・文:細谷和憲/スポーツナビ)
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント