2次予選を難なくクリアした日本代表だが…ミャンマー戦から最終予選を見据えてみる

宇都宮徹壱

2試合続けて2桁ゴールで2次予選突破を決めた日本

6試合連続ゴールで勝利に貢献した南野拓実。日本はモンゴル戦に続く2桁ゴールで力の差を見せつけた 【高須力】

 先制したのは、やはり日本だった。前半8分、最終ラインから縦に入ったパスを鎌田が落とし、拾った南野が鎌田とのワンツーで相手の守備網を瞬時に無力化。最後は右足でゴールに流し込む。追加点は22分、相手がカットしたボールを伊東が拾って、ドリブルで左サイドまで移動してパス。受けた南野が縦に送り、ゴールラインぎりぎりで長友が折り返すと、これを大迫がヘッドで決めた。

 前回のモンゴル戦に続き、日本の容赦ない攻撃は続く。30分には酒井がペナルティーエリア内で倒され、PKを獲得すると大迫がゴール右隅を突き刺して3-0。その6分後には、右サイドからの伊東のクロスに、長友がヘディングで競り勝ち、最後は大迫が右足を延ばしてネットを揺らす。大迫は36分でハットトリックを達成。前半は4-0で終了する。

 日本ベンチは、ハーフタイムで吉田と酒井を下げ、代わって入ったのは植田直通と室屋成。予定どおりの交代だった。後半も日本の優勢は変わらず。4分には、右サイドの深い位置から鎌田が折り返すと、南野のシュートに大迫が押し込んで5-0。11分には、右サイドからの室屋のクロスに、走り込んできた守田が左足ワンタッチで6点目を挙げる。

 17分には、その守田に代えて原口元気がピッチに送り込まれ、遠藤がアンカーに入る4-1-4-1にシステムを変更する。21分に南野のゴールで7点差とすると、24分に遠藤OUTで橋本拳人IN、33分には伊東OUTで浅野拓磨IN。この間、日本はやや攻めあぐむ時間帯が続くが、一連のベンチワークで攻撃陣が再び活性化する。39分には鎌田、43分には大迫、45+1分にはU-24代表の板倉がA代表初ゴールを決める。試合は10-0で終了した。

 試合後、ピッチ上のミャンマーの選手全員とグータッチしていたのは、安定した守りを見せていた川島だった。モンゴル戦のハットトリックに続き、この日も自己最多となる1試合5得点を挙げた大迫。あるいは6戦連続ゴールを挙げた南野。10得点の立役者ばかりが目立っていたが、失点ゼロで抑えた守備陣も称賛されるべきだろう。6戦全勝、37得点で0失点。日本は圧倒的な戦績で、2次予選突破を一番乗りで果たした。

2次予選が「緩いグループ」であったがゆえに危惧すること

ミャンマー代表のアントワーヌ・ヘイ監督。日本戦について「大変難しいタスクだった」と語る 【高須力】

「日本は格上なので、この結果に驚きはない。7カ月間で1試合もできず、数週間の練習でアジアナンバーワンのチームと対戦することは、われわれにとって大変難しいタスクだった。大敗という結果に終わったが、選手にとっては貴重な経験となったと思う。残り2試合で、勝ち点を積み上げることを目指したい」

 ミャンマー代表、ヘイ監督の試合後のコメントである。この会見でも、国歌斉唱で選手のひとりが抵抗を示す3本指のサインを見せたこと、あるいは在日ミャンマー人の抗議集会に関する質問が出た。だが、ドイツ人指揮官の回答は「私は見ていないのでコメントできない」「私は何ら政治的な立場はとらない。良いサッカーすることに集中している」。政治的な言動をFIFAが禁じている以上、実にプロフェッショナルな態度であったと言える。

 一方、勝利した日本代表の森保監督は、2次予選突破について「どんなに力の差があっても、それは簡単なことではありません」とコメント。その上で「自分たちの目標はもっと先にあり、目指す基準は高い。選手たちが高い志を持ち、各試合に全力で臨む姿勢を見せてくれたことをうれしく思います」と、少しほっとした表情で語っている。

 今回のアジア2次予選で、日本が組み込まれたグループFは、トップとその他との実力差が他のグループと比べて顕著だった。タジキスタン、キルギス、モンゴル、そしてミャンマー。いずれも本大会どころか、最終予選にも一度として残ったことはない。オーストラリアとクウェートとヨルダンが同居するグループB、あるいはイランとイラクとバーレーンがしのぎを削るグループC。それらに比べると、かなり「緩いグループ」であった。

 アジア2次予選は2試合残っているが、今後はU-24代表に世の中の注目は移っていくだろう。そして東京五輪が終われば、最終予選に臨むA代表に再びスポットライトが当たるはずだ。最終予選の組み合わせはもちろん、どのような方式で行われるかも、今は分からない(コロナ禍の現状を考えれば、セントラル方式となる可能性も考えられる)。

 ホーム&アウェーであれ、セントラルであれ、最終予選で気になるのが2次予選とのギャップ。どんなに選手たちが「高い志を持ち、各試合に全力で臨む姿勢を見せてくれた」ところで、最終予選におけるインテンシティとプレッシャーはまったく異なる。ミャンマー戦後に2チームに分かれ、9月に再合流した日本代表を待ち受ける最終予選は、果たしてどのようなものとなるのだろうか。心静かに、発表を待つこととしたい。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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