「オレンジのスタンドへ」クボタスピアーズ トップリーグ2021プレーオフトーナメント準決勝 試合前コラム

チーム・協会

【【クボタスピアーズ(ラグビー)】トップリーグ2021プレーオフトーナメント準決勝 試合前コラム】

クロッティ選手が勝利の瞬間に喜びを爆発させた理由「いかに貢献できたのか。」

握り締めた両拳を突き上げ、喜びを爆発させた。

選手だけじゃない。
コーチも通訳もメディカルも、そしてスタンドも。

この日、ネイビーのセカンドジャージに、母の日仕様のピンクソックスを着用した選手たちだったが、心の中はオレンジが自分たちの色だと決まっている。

トップリーグ2021準々決勝の神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦。ノーサイドの瞬間、オレンジをシンボルとした仲間たちは、立場や場所関係なく、同じように歓喜した。

世界最高峰のラグビーリーグ“スーパーラグビー”のクルセイダースを3連覇に導いた元オールブラックスのライアン・クロッティ選手は、バックスタンドをオレンジ色に染めたオレンジアーミー(クボタスピアーズファンのこと)と同じ方向を向いて、その感情を表現した。
(冒頭の写真左から3番目)

世界でも有数のキャリアを築いてきたクロッティ選手に、この写真の瞬間について尋ねると
「少し個人的な話になるかもしれないが」と前置きした上で、以下のように答えてくれた。

「いかに自分がこのチームに貢献できたか、それがこうした感情に繋がるのだと思います。私はクボタスピアーズに入団し、初めて母国を離れてプレーしました。そして、このチームを本気で気にかけることで、自分の様々なものをチームに注ぐことができました。この神戸製鋼戦では、ディフェンスでのハードワークなど『自分たちが何者であるのか』という誇りを示し、戦うことができました。それがこうした感情に繋がったのだと思います。」


いかに自分がチームに貢献できたか。
そして、チームを気にかけることができたか。

こうした話を聞いた時、試合に出場しないメンバー(クボタスピアーズでは今季「ボルツ」と呼んでいるので、以下「ボルツ」と記載)の存在を忘れてはいけない。そのボルツの存在について聞くと、クロッティ選手はこう語る。

「一番大切なことはとにかく全員で戦うということです。このチームに関わる人、全員がチームに貢献することです。試合に関わる準備という点では、ボルツの存在が特に重要です。試合でいいパフォーマンスができるのは、ボルツが敵役をやってくれているからです。」

今季、クボタスピアーズ好調の理由は、こうした試合では目に見えない結束があるからだ。

フランヘッドコーチは、このシーズンを戦艦に例えた。
強い戦艦を作り、敵戦艦を一戦一戦沈めていくという意味だ。
戦艦のボルトは、目には見えない。だが、そのボルトが緩めば、海水が入り込み、敵と戦う前に沈む。

試合で表現される23人のプレー。
その裏には目には見えないチーム全員の貢献が隠れている。

チームに関わる全員がこのチームを気にかけ貢献する。
そうした理由があるからこそ、勝利の瞬間のあの写真のように、皆で喜べる。
チームの喜びは自分の喜び。
チームの悔しさは自分の悔しさ。
立場もキャリアも関係ない。
ピッチもスタンドもTVの前でも、場所すら大きな問題じゃない。
貢献し続けた、応援し続けた、そうした者たちだからこそ湧き上がる感情がそこにはある。

チームはどんな時も様々な感情を共有してきた 【【クボタスピアーズ(ラグビー)】トップリーグ2021プレーオフトーナメント準決勝 試合前コラム】

「勝ちたい気持ちが強い方が勝つ」

トップリーグが2003年に始まって以来、初めてクボタスピアーズがトップ4入りを果たした。
それでも、キャプテン・立川選手は「これで終わりじゃない。」とすぐに次を見た。

次戦となるトップリーグ2021準決勝サントリーサンゴリアス戦。
それに合わせて行われたオンライン取材で立川選手は「勝ちたい気持ちが強い方が勝つ。」と準決勝のポイントについて言い切った。

過去の試合を振り返っても激戦必至のこのカード。
両者すべての武器を出し合って戦うからこそ、勝利の要素を一枚ずつめくっていくと、そうした根本的な部分にたどり着くのかもしれない。

では「勝ちたい気持ち」の強さはなにで決まるのか。
それは「なぜ勝ちたいのか」という問いの答えに繋がる。

最後のトップリーグ。
相手はサントリーサンゴリアス。
あの悔しかった秩父宮ラグビー場。
支えてくれたボルツのメンバー。
送り出してくれた家族たち。
いつも支えてくれる職場や関係者。
夢を託して去っていった仲間たち。
すでに今シーズンを終えた他チーム。

ラグビーを続ければ続けるほど、戦えば戦うほど「勝ちたい理由」は増えていく。

ここまで、楽な道ではなかった。
計画通りに進むことのほうが少なかった。
だけど、それでもやめなかった。戦い続けた。
それは、目指したいゴールがあるからだ。
見たい景色があるからだ。

そして、その見たい景色の中に、準決勝にはないピースが存在する。

それは、オレンジを着たファンの存在だ。

バックスタンドをオレンジに染めたクボタスピアーズファン(=オレンジアーミー) 【【クボタスピアーズ(ラグビー)】トップリーグ2021プレーオフトーナメント準決勝 試合前コラム】

オレンジのスタンドの前で戦いたい

この準決勝の2試合は、トップリーグ初の無観客試合として行われる。

これまでの練習試合で無観客試合を行ってきた選手たちにとっては、パフォーマンスに変わりはないかもしれない。

TV放送もある、SNSなどを通じて様々な形で応援することもできる。
けれど、やっぱりオレンジを着たファン、オレンジアーミーの存在はすごい。

スタジアムに向かうオレンジを着たファンを見て、どれだけ安心したか。
ピッチに出て、オレンジに染まったスタンドを見て、どれだけ勇気をもらったか。
試合の苦しい時、勝負の場面で自然発生するあの手拍子が、どれだけ「勝ちたい理由」を思い出させてくれたか。

今季1試合1試合、フェーズを重ねるごとに増えていったオレンジを着た「戦友」は、前節の神戸製鋼戦でもエコパスタジアムを埋めた。

ホームページやSNSには多くの応援メッセージが届いた。

神戸製鋼戦の翌日、ホームタウンの船橋市の市役所には、クボタスピアーズへの応援コメントが書かれた一枚の付箋が貼られていた。「昨日の試合、感動しました。応援しています。」

ラグビーを通して感動を、応援を通して勇気を。

こうした互いに情動を分かち合う関係は、クロッティ選手が話したチームとの関係性に似ている。

「自分がいかに気にかけたか。貢献できたか。そして、全員で戦うこと。」

応援から勇気をもらっているからこそ、勝った姿を見せたい。
感動したからこそ、次も応援したい、勝ってほしい。

クボタスピアーズはコロナ禍においても、試合会場でのファンサービスをできる限り行った。
その理由は、オレンジアーミーの応援こそ、チームを勝利に導いてくれると信じているからだ。
そして、私たちのラグビーから伝えることができる「迫力」「感動」「一体感」「誇り」といった価値は、共に戦うからこそ生まれるものだからだ。

この準決勝は無観客試合。しかし、秩父宮ラグビー場で行われる決勝戦は、まだ有観客試合の可能性がある。

オレンジのスタンドと、共に歩んできたクボタスピアーズの今シーズン。
そんなシーズンが、空のバックスタンドの前で終わるなんてありえない。
クボタスピアーズは、戦う姿を見せたい人がいる。
花園で勝って、秩父宮のオレンジのスタンドへ帰ってくる。
これがこの試合の「勝ちたい理由」だ。

日本選手権 兼 トップリーグ2021 プレーオフトーナメント準決勝
クボタスピアーズvsサントリーサンゴリアス
5月16日(日)13時10分 東大阪市花園ラグビー場でキックオフ
NHK総合にて生放送。J-SPORTSは当日午後5時30分から放送。


文:クボタスピアーズ広報 岩爪航
写真:チームカメラマン 福島宏治

準々決勝のノーサイド後、バックスタンドに駆け寄る選手たち 【【クボタスピアーズ(ラグビー)】トップリーグ2021プレーオフトーナメント準決勝 試合前コラム】

クボタスピアーズはシーズン前に試合会場での練習見学を実施した(写真は成田市中台運動陸上競技場) 【【クボタスピアーズ(ラグビー)】トップリーグ2021プレーオフトーナメント準決勝 試合前コラム】

この試合でクボタスピアーズ50試合を達成するラピース選手。これも「勝ちたい理由」のひとつ 【【クボタスピアーズ(ラグビー)】トップリーグ2021プレーオフトーナメント準決勝 試合前コラム】

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著者プロフィール

〈クボタスピアーズ船橋・東京ベイについて〉 1978年創部。1990年、クボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市のクボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備。2003年、ジャパンラグビートップリーグ発足時からトップリーグの常連として戦ってきた。 「Proud Billboard」のビジョンの元、強く、愛されるチームを目指し、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っている。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23では、創部以来初の決勝に進出。激戦の末に勝利し、優勝という結果でシーズンを終えた。 また、チーム強化だけでなく、SDGsの推進やラグビーを通じた普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進している。スピアーズではファンのことを「共にオレンジを着て戦う仲間」という意図から「オレンジアーミー」と呼んでいる。

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