ソシエダの若き主将、オヤルサバルに聞く タイトル獲得やスペイン代表について

工藤拓

24歳でレアル・ソシエダのキャプテンを務めるミケル・オヤルサバル。左利きの万能アタッカーだ 【写真提供:ラ・リーガ】

 レアル・ソシエダの生え抜き選手であり、若くしてトップチーム通算200試合以上に出場してきたミケル・オヤルサバルは、24歳でキャプテンの一人を務め、クラブを代表する象徴的存在となっている。

 宿敵アスレティック・ビルバオとのコパ・デル・レイ2019-20決勝で唯一のゴールを決め、クラブに34年ぶりのタイトルをもたらした左利きの万能アタッカーは、6月のEURO2020でもスペイン代表の主力として活躍することが期待されている。

 今回行われたラ・リーガ主催のオンライン会見では、悲願のタイトル獲得やクラブへの思い、ラ・リーガや代表についてなど、世界各国のメディアから寄せられた質問に丁寧に答えてくれた。(取材日:4月29日)

コパ・デル・レイのタイトルを獲得

レアル・ソシエダはコパ・デル・レイを制し、34年ぶりのタイトル獲得となった 【Getty Images】

――24歳で強豪クラブのキャプテンマークを巻き、同僚やファンの信頼を得る選手は多くない。ラ・レアル(レアル・ソシエダ)の主将を任されていることへの思い、主将になって学んだことは?(中国)
 
 確かにキャプテンがここまで若いケースは多くないけど、自分は任されることになった。自分に何が起こるか選ぶことはできず、起こったことには慣れていくしかない。スビエタ(スペイン・バスク州の町・地区名)に来た当初は、模範となる偉大な選手たちを見習って学んでいた。それは今も変わらない。成長し、できる限り仲間たちをサポートするために今も学び続けている。望む、望まないにかかわらず、キャプテンとはそういうものだからね。

――コパ・デル・レイ優勝が決まった瞬間はどんな感情を抱いたか。(インド)

 クラブにとって、スビエタで過ごすみんなにとって、そしてラ・レアルを愛するすべての人々にとって唯一無二の瞬間だった。長年成し遂げられなかったことであり、近年クラブはこのような成功を手にするために取り組んできた。特別な瞬間ではあったけど、これを唯一の成功とするわけにはいかない。クラブは今回のようなチャンスを引き続き手にするために努力し続けている。皆にとって大きな大きな幸福のひと時だったけど、この成功を今後も繰り返し続けられると思っているよ。
――ラ・レアルが輩出したシャビ・アロンソとシャビ・プリエトについての印象は? 彼らのようなクラブの象徴的存在となっていきたいか。(インドネシア)

 2人は異なる形でラ・レアルでのキャリアを築いた偉大な選手だ。シャビ・アロンソはトップチームに在籍した短い期間でハイレベルなプレーを見せ、個人的な決断によりその後は他の道を歩んでいった。シャビ・プリエトは長年に渡ってクラブでキャリアを全うした。短い期間だったけど、彼とともに過ごし、選手として、人として彼から学べたことを誇りに思う。自分は今、ラ・レアルのことしか考えておらず、ここで良い仕事をすることに集中している。コパ優勝のような成功を手にするために、近年クラブは良い取り組みを行ってきた。幸せに過ごしているし、評価されているとも感じている。それ以外のことは頭にないよ。

――最大の目標の1つであるラ・レアルでのタイトル獲得を成し遂げた今、自身が望めば主要リーグやCLのタイトルを狙えるビッグクラブへ羽ばたくこともできると思う。そうなる可能性を心配しているファンに向けてメッセージを。(日本)

 個人的には今後も成長し続け、より優れた選手になっていきたい。今いる場所は、その意味で理想的な環境だと思っている。それに、このクラブとともに成長していきたいんだ。そのためにできる限りの力を貸したい。前にも話した通り、近年クラブは良い取り込みを行ってきた。数年前は危機的状況にあったけど、今の状況は大きく異なる。ここでプレーすることを望む選手も増えてきている。それはクラブが良い方向に進んでいる証拠だ。自分はラ・レアルでのプレーに集中している。選手として成長していくには理想的な環境だと思っているし、クラブが成長していくための力になりたいとも思っている。ともに成長していくためにね。
――いつかラ・リーガの得点王になるため、これから伸ばしていくべきことは何か。(タイ)

 現時点では、他の選手と比べて頭一つ抜けている選手がいる。彼がいる限りは難しいだろうね。実質的に、シーズン30ゴールは決める必要があるから。もちろん、もっと多くのゴールを決めたいと思っているよ。それはどの選手も同じだと思うけど、現実を見なければならない。誰もが記録を伸ばしたいと望んでいるけど、現時点で得点王を争うことは極めて難しいと認めざるを得ない。前にも言った通り、彼が他とは異なるレベルにいることは毎週末の試合を見れば明らかだよね。

――もちろんそれはメッシのことですよね?(司会者)

 うん(笑)。

――現在のラ・リーガ最高のストライカーは誰か。どんなプレースタイルが好きか。(ベトナム)

 さっきも話した通り、メッシは何年も前から他の選手たちとは異なるレベルでプレーし続けていると思う。彼をストライカーとみなすかどうかは任せるけどね。ベンゼマやジェラール・モレノ、イアゴ・アスパスといった選手たちの重要性にも触れなければならない。近年のラ・リーガにはレベルが高く、多くのゴールを決めている選手がたくさんいる。最近は(アレクサンデル・)イサクも彼らの競争に割って入りつつあると思う。彼は2シーズンに渡って素晴らしいパフォーマンスを維持している。今後もずっと自分たちを助けてほしいし、彼が成長する力になっていきたい。

――今季のラ・リーガは優勝争いが拮抗(きっこう)している。コパ・デル・レイを制したラ・レアルは近い将来ラ・リーガのタイトルを争えるようになると思うか?(南アフリカ)

 現実的に考えれば難しいと思う。バルサやレアル・マドリー、アトレティコ、セビージャといったクラブの毎週の戦いぶりを見る限り、現時点では自分たちより上のレベルにいると思うから。それでもとりわけこの2年間、自分たちは成長しながら良いシーズンを送ってきた。今後も成長し続けたいし、もちろんいつかは彼らとタイトルを争いたい。自分たちはどんな相手とも戦えることを示してきた。結果的にうまくいくことも、いかないこともあるだろうけど、正々堂々と戦える力はあると思っている。前にも話した通り、現実的に考えれば現時点で彼らが1つ上のレベルにいるけど、自分たちはその差を縮め、シーズンの最後まで挑戦できるようになるために努力し続けているんだ。

久保建英らアジア人選手について…

久保建英とイ・ガンインについて、「若い2人は将来的にラ・リーガで注目される存在になっていくだろうし、今の状況も今後良い選手に成長していくための糧になると思う」 【Getty Images】

――ラ・リーガでプレーしている久保建英とイ・ガンイン、アジアのフットボールの印象は?(シンガポール)

 クボもガンインもハイレベルな選手だけど、今は継続的にプレーできていないと思う。それはラ・リーガのレベルが高く、多くの選手が目指す舞台であり、どのチームも質が高いことを物語っている。若い2人は将来的にラ・リーガで注目される存在になっていくだろうし、今の状況も今後良い選手に成長していくための糧になると思う。現時点で十分にプレーできていない時間はこの先取り戻せるはずだよ。
――10年前のスペイン代表はバルサとレアル・マドリーの選手ばかりだったが、今は違う。それはラ・リーガ全体のレベルが上がったことを意味すると思うか?(イギリス)

 10〜12年前の代表を担っていた世代は特別で、あのレベルに達するのは難しいと思う。彼らは困難極まりない偉業を成し遂げた。当時のチームが極めて高いレベルにあったことは理解すべきだと思う。今では以前より多くのクラブから代表選手が選ばれるようになってきた。それは多くのクラブが生え抜き選手を代表に送り出せるよう育成に力を注いでいるからであり、各クラブのレベルの差がなくなってきているからだと思う。

――プロ選手でありながら経営学を学んでいる。その目的は? 将来的にどんな会社を経営したいと考えているか。(フランス)

 学びはじめた時点では、まだフットボール選手になれるかどうか分からなかった。セグンダBでプレーしはじめた最初の年にトップチームでデビューしたけど、やりたいと思ってはじめたことだし、両立できる自信もあった。興味のある内容だったしね。将来的に何をするかはまだ分からない。何年も先に、その時が来れば考えると思う。それにフットボールの世界から距離を置き、息抜きの時間を作る手段にもなっているんだ。
――アレクサンデル・イサクについて、ドルトムントでは周囲を納得させられなかったが、なぜラ・レアル加入後は活躍できているのか?(ドイツ)

 それは彼が良い選手で、プレー時間を得ているからさ。たとえ良い選手でも、継続してプレーできなければ活躍するのは難しい。毎週末10〜15分のプレー時間で全てがうまくいくことなんて珍しいからね。選手はプレーしながら自信を得ていくものであり、今の彼はそれができている。アレクサンデルのタレントは前からみんな知っていた。昨季のプレシーズンの時点から彼のレベルの高さは分かっていたけど、プレー時間を重ね、チームに貢献していると実感することで自信がつき、それが結果につながっていくものなんだ。彼は現在、とても良い状態にある。自信に満ち、自分が重要な存在であることを感じながら、チームに大きな力を与えてくれている。

――昨季にバルサ移籍のうわさがあったが実現しなかった。バルサ行きを考えているか?(カメルーン)

 あれはただのうわさだよ。自分は現実を把握していたので落ち着いていた。前にも話した通り、自分はラ・レアルで良いプレーをし、選手としてクラブとともに成長していくことに集中している。クラブは成長しており、素晴らしいグループができていると思う。選手として学び、成長していくためには理想的な環境だと思うので、今後もクラブとともに成長していきたい。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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