中田ジャパン、中国に再び0-3負けも収穫 世界1位相手に経験を積んだ2人のセッター
五輪まで80日あまり、中田監督(写真右)は最終12名をどう選出するのか 【写真:坂本清】
緊急事態宣言下の東京、有明アリーナ。当初は東京五輪に向けたテストマッチとして、観客も入れて行われるはずだったが4月23日に無観客での開催が決定。静かなコートで黙々とアップを始め、試合時間が近づくとともにボールの音が響く。
相手は世界ランク1位、紛れもなく世界女王と呼ぶにふさわしい中国。東京五輪へ向け、行われるたった一戦ではあるが、さまざまな意味が込められた大切な一戦。日本代表を率いる中田久美監督はこう言った。
「(東京五輪で)メダル獲得のためにも、世界ランク1位の中国に対して現時点でのチームの力を試したい、というのが第一です。必ず課題、修正すべきことが出てくるので、そこをより明確にして今後の強化につなげたい。国際試合が少ない状況での貴重な機会でもあるので、現時点で選手の力が十分に発揮させられるように選手だけでなくベンチワークも含め、オリンピックのシミュレーションとして臨みたいと思っています」
けがから復帰の長岡が活躍
代表初選出でスタメン起用された籾井(写真左) 【写真:坂本清】
19年のU-20世界選手権優勝メンバーでもある山田は、アンダーカテゴリーとはいえ世界と戦った経験があるのに対し、籾井はこれがほぼ初めての国際大会。しかもそれが五輪本番の会場で、相手は中国。籾井も「初めてだったので緊張した」と言うように、立ち上がりは動きも堅く、当然ながら視野も狭い。パスが返球される位置や籾井の動きを見て、トスが上がる前から中国のブロックはレフト側にややリリースしていたのだが、そのままほぼブロックの正面にトスを上げてしまい、古賀紗理那の放ったスパイクは中国のブロックに仕留められた。
単に高い、手が長いという身体的優位だけでなく、トスが上がるのを見てから素早く動き、アウトサイドとミドルブロッカーが連動しまさに「壁」となるのが中国の組織的なブロック。序盤のブロック失点が緊張と重なり、なかなか日本の攻撃を通すことができず、前半だけで4本のブロック得点を献上、5-14と大差をつけられた。
だが、少しずつ緊張もほぐれ始めた中盤からは石川のサーブを皮切りに、荒木のブロックタッチからつないだボールを古賀、黒後が決め連続得点。時折競り合う場面も見られたが、序盤の失点が響きそのまま第1セットを落とす。第2セットも同様にセット序盤にレフトからのスパイクが続けて止められ大量リードを許す形となり、18-25でこのセットも落とした日本は、第3セットからは籾井に代えて田代佳奈美を投入した。
田代のみならず、このセットからセッター対角のオポジットには長岡望悠、石井優希など経験豊富な選手を投入し、2度の左ひざ前十字じん帯損傷からの復帰戦となった長岡がライトからストレートに放つスパイクが効果を発する。中田監督も「この試合で一番の収穫だった」という長岡のスピードある攻撃が冴えれば、当然他の選手も好機につながる。中国のブロックも1、2セットとは異なりライトにも警戒を強めるため必然的にレフトへの移動も遅れ、そのすきを逃がさず田代が突くように上げるトスを古賀が素早く叩き、相手のブロック、レシーブ布陣が完成する前に叩き込む。さらにブロックがそろった状況でも石井がブロックに当てて出す巧さを見せ、一時は15-10と中国から5点リードを奪った。