連載:香川真司「心が震えるか、否か。」

香川真司の生き方が胸に響く理由 ブラジルW杯惨敗、マンU退団を糧にして…

ミムラユウスケ
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最終回

ブラジルW杯惨敗、マンU退団を糧に、香川真司は成長を遂げた。2015年夏には進化が感じられたという 【写真:アフロ】

「この本、ビジネス書のコーナーに置かれたら、すごく売れると思う! 仕事をする上で、ものすごく参考になったし、何より、勇気をもらえたから」

 香川真司のサッカー選手としての半生を、サッカー選手の本としては異例の文章量と熱さでまとめたのが『心が震えるか、否か』。

 その執筆・構成をした私のもとに、スマホの画面をスクロールしなければ読み切れないほど長文の感想文が送られてきた。送り先は大手総合商社に務める友人だった。過去には何百倍の倍率の入社試験を勝ち抜き、現在は社内での熾烈(しれつ)な出世競争を戦っている人にも通じる“何か”があったようだ。

 あるいは、『白い巨塔』のような政治ゲームに巻き込まれつつも、目の前の患者を治療することに心血を注ぐ医師からのメッセージはこうだった。

「世界中からの評価にさらされるしんどさは尋常じゃないんでしょうね。自分のレベルとは天と地ほど違えども……。組織で生き残りつつ、自分らしさを出していくために、いかにして創意工夫していくか。その気持ちの持っていき方など参考になる部分が非常に多かった」

香川の進化を感じ取った2015年夏

『心が震える、否か。』が発売されてから2週間が過ぎた。そこでは知人や友人をはるかに上回るほど多くの人からの感想が寄せられた。

 興味深いのは、以下のような声がとても多かったことである。

 2014年のブラジル・ワールドカップ(W杯)以降の話、全8章で構成された本の後半部分にあたる第5章以降のストーリーが面白かったと。具体的には香川が苦しんでは、それを乗り越えていく話である。

 この本は事実を記録したノンフィクションだ。そのような感想が寄せられるのは、14年以降の香川が成長していく様子が読者の胸に響くからだろう。

 これまで香川本人があまり語ってこなかったルーツであるFCみやぎ時代を扱った第1章はともかく、第2章から第4章までは華やかな場面や成功についての話が満載だ。

 しかも、若者特有の恐れを知らない勢いや、香川が味方につけた時代の流れもあり、何を考えていたのかよりも、何が起きたのかについての話が目立つ。

 だが、第5章以降は違う。

 壁にぶつかり、そこをどう乗り越えていくのか、どうやって挑んでいくのか、といった話が中心となっている。

 本全体を通してみれば、ひとりのサッカー少年が成長してきた様子が、その思考方法とともに描かれている。

 先に挙げたような感想が多い理由は、14年のブラジルW杯以降の香川が人として成長していく様子を知り、それを好意的にとらえる人が多いからだろう。

 実際、取材を続けてきた筆者の目にもそうしたイメージがあてはまる。
 
 個人的に香川の進化を明らかに感じ取ったのは、15年の夏だった。
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著者プロフィール

ミムラユウスケ

金子達仁氏のホームページで募集されていた、ドイツW杯の開幕前と大会期間中にヨーロッパをキャンピングカーで周る旅の運転手に応募し、合格。帰国後に金子氏・戸塚啓氏・木崎伸也氏が取り組んだ「敗因と」(光文社刊)の制作の手伝いのかたわら、2006年ライターとして活動をスタートした。そして2009年より再びドイツへ。Twitter ID:yusukeMimura

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