【AFTER GAME】 2020-21第31節 仙台戦(4/17〜18)~選手が語る、これからのロボッツに必要なもの~

茨城ロボッツ
チーム・協会

【© IRSE / Akihide TOYOSAKI】

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

仙台89ERSをホームに迎えての2連戦。ロボッツはわずかな点差のまま繰り広げられた神経戦を根気強くものにして、GAME1に勝利。同時に他会場の結果により、B2東地区2位の座を確定させた。その瞬間、歓喜に沸いた選手たちもいれば、次の舞台への準備を着々と進める選手もいた。今回のAFTER GAMEは少し趣向を変え、「2位決定」の瞬間に感じた選手たちの想いや、これから待ち受けるプレーオフに向けてもう一度チームが気持ちを引き締めようとする様を、選手たちの言葉とともにつづっていきたい。

「肩の荷が下りた」されど「もう一度引き締めて」

【© IRSE / Akihide TOYOSAKI】

GAME1を終えたコート上で、東地区2位決定が発表されたその瞬間、#25平尾充庸は両手の拳を突き上げた。ほんの一瞬だが、今シーズンずっと張り詰めていた彼の表情が、少しだけほころんだようにも見えた。

「やったぜ!」

GAME1を終えての記者会見。会見場を後にしようとする平尾は、少し茶目っ気のあるトーンでメディア陣に叫び、再び喜びを露わにした。しかし、明くる日には再び「戦うキャプテン」の姿を取り戻し、コートへと向かっていった。

GAME2を終えて、再び平尾にその瞬間を振り返ってもらった。彼は、この一年の激闘を経ての率直な思いを吐露する。

「なんといいますか、肩の荷が下りたような感じでした。正直、うれしかったですし、少し楽になったというのもありました。」

シーズンが始まる前、キャプテン就任時に「厳しさ」あるいは「覚悟」というキーワードを掲げた平尾。練習の場には、ピリピリとした空気が漂っていた。その頃から考えれば、今のロボッツというチームは何段階も成長し、チームの姿を進化させながら戦ってきたといえるだろう。平尾も、チームの変化を感じ取っていた。

「シーズン当初と比べれば別のチームになったなという風に思っています。まだ100%ではないですけども、戦う姿勢というのをチームの全員が見せているのかなと感じていますし、『40分を通して戦う集団』になりつつあるとも考えています。」

平尾によれば、特に終盤戦におけるビッグマンたちの奮起が、チーム状態を好転させているという。さらに、そこで完結するのではなく、それが日本人選手たちに「ビッグマンが戦っているのだから」と、プラスアルファの奮起材料となり、相乗効果のようにチームが力強くなっていると分析する。それでも、平尾はあくまで現状を楽観視せず、「もう一度チームを引き締め直さなければならない」と述べる。プレーオフ、そしてそこに至るまでのレギュラーシーズン残り5試合の戦いぶりは非常に重要だ。

「まだまだ、チームはこれで完成じゃないです。ここで止まってしまうと、プレーオフで間違いなく負けてしまいます。まだ、レギュラーシーズンの中でも成長できる部分、改善できる部分はあると思っていますし、そのチャンスを活かすも殺すも、選手各々の気持ち次第だと思っています。自分たちの目標は何なのか、どこにあるのかというのを再確認して、そこに向かって戦っていかなければと思っています。仙台戦を踏まえて、今のチーム状態は100点満点で80点ぐらいのところにはいると思います。ただ、プレーオフでは80点ではいけません。トーナメントは何があるか分からないので、100点、あるいは120点というところまで持っていかなければ、重圧や後がない状況で戦うかもしれないメンタル面だとか、今まで以上に苦しい戦いになると思います。100点の出来の試合を、毎回やらなければいけないのかなとは思います。」

ともすれば、「消化試合」ともとられかねない状況ではあるが、平尾はここでもう一度目標をセットし直していくことが必要と話す。ここからのシーズンのモチベーション管理については、やはり「厳しさ」を覗かせる。

「プレーオフだったり、順位が確定したことで、気分が浮き沈みする人もいるかとは思うのですが、それが許されるのはオフの日だけだと思います。練習や試合では、やるべきことを明確にして日々を過ごさないといけないですし、目の前のことを『自分ごと』として捉えなくてはいけません。そこが本当に大事だと思います。」

決戦の舞台を知る男は何を語る

【© IRSE / Akihide TOYOSAKI】

ライジングゼファー福岡に在籍していた2017-18シーズン、B2からB1への昇格をその身をもって体験した、#6小林大祐。この年の福岡は、レギュラーシーズンで爆発的な強さを誇った秋田ノーザンハピネッツを、秋田のホームで下すという大立ち回りを演じ、B1への切符を手にした。そうした舞台を経験したからだろうか、小林は「上位でプレーオフに進むことにも怖いことがある」と話す。

「例えば、ワイルドカードギリギリで進出するチームがあるとして、そうしたチームは『負けてもともと』という気持ちで挑んでくるはずです。例えばそこで初戦に1勝取られてしまったら、もう行方なんて分かりません。『絶対にB1に上がらなきゃいけない』っていう想いがある中で、1試合落としたときにどう立ち直るかとか、考えたらすごく難しいですよね。トーナメントに入ってしまえば、レギュラーシーズンの順位は全部関係ないです。」

上位に位置したチームにとっては『勝って当たり前』というゲーム。しかも、短期決戦でそれを落とすことは許されない。小林はその状況が生み出す精神面での負担、そしてその影響についても口にする。

「プレーオフまで来ると普通の精神状態じゃないので、ボールも回りづらくなりますし、『あれ、ちょっと違うな』という場面が多々あるようになります。レギュラーシーズンのようにすんなりとは行かない中で、そこから歯車が狂って、例えば30点差付けられるようなゲームも、『あれ?』って思っている間に負けてしまうようなパターンもあります。」

小林曰く、「普通が普通ではない」というプレーオフ。だからこそ、小林はその解決策を、シーズンで行ってきたこと、行おうとしてきたことを、やりきることに求める。

「ボールを常に回すことで、的を絞らせないってことはずっと重要になってくると思います。B2優勝やB1への定着を考えたとき、必ず『ボールシェア』の考えは必要だと思います。プレーオフの舞台で、誰かが調子が悪いとなっても、ボールシェアができているってことが一種の保険みたいになっていくと思うんです。誰かがボールを持ち続けて、さらに負けてしまったとなれば、全部水の泡です。今まで、ボールシェアとかいろいろなことを言ってきましたが、全てはプレーオフや、その後B1で戦うときのために言ってきたようなものだと思っています。」

今シーズン、層の厚さを武器に戦ってきたロボッツは、試合の中でもボールが回ってこそのチーム。今節の仙台戦のように、しびれるような場面展開の中でも、いかに冷静にボールを回し、相手の隙を探り続けるか。プレーオフのために奇策を用意する必要はない。いかに今までの自分たちを信じられるか、そしてその信じた道を進み続けられるかが、重要になりそうだ。

勝って、勝ち進んで、未知のエリアを切り開け

【© IRSE / Akihide TOYOSAKI】

ロボッツはこの仙台戦でシーズンの勝ち星を「39」とした。最終戦まで地区優勝を争った2017-18シーズンの勝利数「38」を、この時点で上回ったことになる。長くロボッツを応援しているファンやブースターからすれば、これも一つ大きな通過点だったといえるだろう。

しかし、ここで立ち止まるわけにはいかない。より多くの勝ち星を積み重ねていくこと、プレーオフに少しでも実りの多いゲームを戦っていくことが必要になる。次節に行われる越谷アルファーズとのアウェーゲームにおいてもそれは同じことだ。

越谷はここのところフルメンバーを揃えた戦いがなかなかできていない。その中でも奮起しているのが#33クレイグ・ブラッキンズだ。越谷の大黒柱#5アイザック・バッツとの連携で内に外にフル回転してきた彼が、ロボッツに牙をむいてくる展開は避けたいところだ。

ロボッツとしては、バッツとブラッキンズによる強力なフロントコート陣をまず守備から抑える展開を作りたい。注目選手は、前回の対戦でも活躍を見せた#4小寺ハミルトンゲイリーだ。1on1に対して持ち味の体の強さで勝負する一方、的確な位置取りで相手を危険水域に進ませないクレバーさも彼の武器。終盤戦においてのロボッツの「守り勝ち」を支えてきた彼の活躍に、再び三度期待したい。

プレーオフ、またそのホーム開催を自力で決めきったロボッツにとって、ここからの5試合は未知のエリア。ただ、これまでのシーズンでロボッツが進んできた「一戦一戦を40分戦いきる」ことを再び定義し直し、どん欲な姿勢で臨み続けてほしい。
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著者プロフィール

水戸市・つくば市を中心とする茨城県全域をホームタウンとするプロバスケチーム 2013年7月 「つくばロボッツ」としてクラブ創設 2014年11月法人設立 2016年 拠点をつくば市から水戸市に移し、「茨城ロボッツ」としてB2リーグに参入 事業面では、今年1月には、Bリーグ初のクラブによる「スポーツまちづくり会社」である「株式会社いばらきスポーツタウン・マネジメント」を設立 官民連携で開設した「まちなか・スポーツ・にぎわい広場(M-SPO)」の運営等を行い、地域にある様々な魅力と資源をつなぎ合わせる「地方創生」をコンセプトにした活動にも注力している。

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