「陸(おか)で積んできたもの」クボタスピアーズ トップリーグ2021 第7節 試合前コラム

チーム・協会

【【クボタスピアーズ(ラグビー)】トップリーグ2021第7節試合前コラム】

30週のプレシーズン

シーズンスタート当初の練習(山本選手、テアウパ選手) 【クボタスピアーズ(ラグビー)】トップリーグ2021第7節試合前コラム】

このチームがスタートを切った季節は、真夏だった。

炎天下の中、日陰がないグラウンド行われた練習は、基礎的で段階的で体力的。
チームスタート直後の練習、かつ感染予防ということを考えると、これまでよりもずっと時間をかけて、この基礎的で段階的で体力的な、いわゆる「しんどい」練習を行う必要があった。


それから徐々に実践的な練習となり、世界に散らばっていた仲間たちも集まり、秋には全員が集合して、練習試合を行えるまでになった。

2020年10月10日に行われた今シーズン初のプレシーズンマッチ(写真中央は堀部選手) 【【クボタスピアーズ(ラグビー)】トップリーグ2021第7節試合前コラム】

チームのスタートから当初26週目に開幕する予定だったトップリーグ2021は、延期もあり30週目に念願の公式戦を迎えることとなった。

四季を追って作り上げられたチームは、開幕から5勝1敗。

リーグ戦最終戦を、昨季最後の相手となったトヨタ自動車ヴェルブリッツと対戦する。

今年のチーム内でのキーワードは「戦艦」だ。
「強い戦艦を作る」を合言葉に、相手戦艦を沈めるため一試合一試合戦う。

入団当初から様々な例え話を用いて、チームの精神面や文化といった土台を築いてきたフラン・ルディケヘッドコーチらしい今季のキーワードは、チームスローガンの「Mastery」と共にチームに浸透し、強い戦艦に仕上がってきている。

最長92日にもなるトップリーグの戦いは、確かに戦艦に似ているかもしれない。
92日間の航海を生き残るためには、丈夫で強い船が必要だ。また、鍛え抜かれたクルーも必要となる。
これらは、海上で作られるものでなく、陸(おか)で準備されるもの。
まさにそれはクボタスピアーズが30週に渡り活動したプレシーズンだ。

しっかりとした船を作り、クルーを鍛え、海路を練って出港した戦艦は、ここまで6戦を戦ってきた。
どれも激しい戦いだった。互いに勝利をかけて戦うのであれば、時に戦艦が壊れることもあるだろう。望まない結果の時もあるだろう。

そうした下を向きたくなるような時に、陸で過ごした時間が支えてくれる。

自分たちはなにをすべきか、どう戦うのかといった戦術の理解、どの選手が出てもレベルを落とさない選手層、苦しい場面になっても足を止めずに体を当て続ける体力、なにより自分たちのチームを愛し、全員が団結して戦おうという結束は、この30週のプレシーズンで作り上げられたものだ。


日差しがジリジリと肌を焼く真夏から、凍てついた空気がヒリヒリと肌を刺す真冬まで、共に過ごした陸での時間。
そこで作り上げ、この戦艦に積んできたもの。
この戦艦の真価が問われる7戦目。
陸で積んできたものをすべて出すときが来た。

何をするか分かった上での戦いが面白い!

トップリーグ2021第3節でのラインアウトモール 【【クボタスピアーズ(ラグビー)】トップリーグ2021第7節 試合前コラム】

このクボタスピアーズという戦艦の武器のひとつがラインアウトモールだ。
この6試合、どの試合でもラインアウトモール起点のトライをしていることを考えると、この第7節でもこのプレーに注目しないわけにはいかない。特に相手のチームが大型のフォワードを揃えていることを考えるとなおさらだ。

ラピース選手も「プライドを持っている」と話すこのラインアウトモールは相手にとって脅威になるだろう。

また、スクラムにも同じようなことも言えるかもしれないが、ラインアウトモールはわかっていても止められないプレーといえる。そこには選手の体躯の大きさや強さ、そして目には見えない個々の細かなプレーと、フォワードパックが結集して押し込む技術があるわけだが、言ってしまえば「組んで押す」というシンプルなプレーゆえに、相手としては予想しやすいプレーだ。だが、そこに面白さがある。

クボタスピアーズが相手の反則でペナルティキックを得る。タッチキックを選択し、スタンドオフのフォーリー選手が「押してこい!」と言わんばかりのキックでゴール前へ。

その瞬間に相手とすれば「確実にモールでくる」と警戒する。
対するスピアーズも「絶対にモールで(トライを)取る」と気合いが入る。

このゴール前ラインアウトをセットするまでの、両者のある意味分かり合っている空気。
「(モールで)くるよな?」
「ああ、(モールで)行くぜ。」
といった会話が聞こえてきそうだ。

そして両チーム選手の覚悟を決めた表情は、プレー中とはまた違ったラグビーの魅力を感じる一瞬だ。
そう、まるで決闘前。

プレーがスタートすれば、立ち合い出足の鋭さ。
組み合っては「痛い・苦しい」をプライドで押し殺し、前だけを向いて戦う選手たち。
戦艦同士が並列しての大砲の打ち合いをするような、大迫力の接近戦を見ることができる。

そうして取ったモールトライ。
会場中のだれもが予想したプレーでトライを取ることで、予想以上にチームの士気が上がる。相手にとっては、「わかっていても止めらない」といったことほど気持ちが落ち込むことはない。

そうしたラインアウトモールの「何をするかわかった上での戦い」はある意味面白い。

また、ラインアウトモールそのものも注目だが、クボタスピアーズはそのバリエーションが豊かなことも見ていて楽しみの一つ。

正攻法に「8人で組んで押す」のシンプルな強さがあるからこそ、第6節で見せたようなゴール前ショートラインアウトからのモールや、そのモールをフェイントに使う裏のオプションも豊富だ。

そうした強さの秘密には、練習で互いに技を磨いた仲間たちの存在がいる。
チーム全員で夏から作り上げ、ボルツ(試合に出場できないメンバー)相手に磨き上げたオレンジのモール。

クボタスピアーズが陸で積んできた「わかっていても止められない」武器に注目だ。

トップリーグ2021 第7節 クボタスピアーズvsトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦は4月11日(日)13時キックオフ



文:クボタスピアーズ広報 岩爪航
写真:チームカメラマン 福島宏治
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著者プロフィール

〈クボタスピアーズ船橋・東京ベイについて〉 1978年創部。1990年、クボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市のクボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備。2003年、ジャパンラグビートップリーグ発足時からトップリーグの常連として戦ってきた。 「Proud Billboard」のビジョンの元、強く、愛されるチームを目指し、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っている。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23では、創部以来初の決勝に進出。激戦の末に勝利し、優勝という結果でシーズンを終えた。 また、チーム強化だけでなく、SDGsの推進やラグビーを通じた普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進している。スピアーズではファンのことを「共にオレンジを着て戦う仲間」という意図から「オレンジアーミー」と呼んでいる。

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