連載:香川真司「心が震えるか、否か。」

香川真司を口説いた名将の言葉「このポジションで活躍してもらいたい」

香川真司
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第4回

名将ファーガソン監督(右)の言葉に香川真司は即決。マンチェスター・ユナイテッドへの移籍が実現した 【写真:AFLO】

 人生における大事な決断を言葉で説明しようとすると、嘘くさくなってしまうことがよくある。でも、あの移籍を決めた理由についてはシンプルに表現できる。

「あんなに期待されているのに、勝負しないわけにはいかないでしょ!」
 香川真司は直感的にそう思った。
 5月14日の夜、香川はマンチェスター空港近くのホテルに着いた。目的はひとつ。翌日にユナイテッドのファーガソン監督と会うためだった。彼はGMの仕事、つまり、選手編成の責任者としての役割もかねていた。

 イングランドでは、ドイツのように練習が公開されることもないし、選手が取材を受ける機会も限られている。取材の機会が著しく制限されるから、パパラッチと呼ばれるカメラマンたちが暗躍(あんやく)する。プライベートでの行動を彼らに狙われる機会も多いので、うかつに街に出ていくわけにもいかない。その日の夜、香川はホテルで静かに過ごした。

 翌日、早朝の7時にファーガソンがホテルの会議室に入ってきた。しかも、タキシードを着て。聞けば、そのあとにパーティーに出席するための服装らしい。でも、香川の目にはそれが自分を迎えるための最高のおもてなしのように映った。

 握手から入る。会う前のイメージは次々に崩れていった。まず、想像していた以上に身長が高いと感じた。実際は175cmの香川よりも5cm高いだけ。ファーガソンのかもし出すオーラと風格が、そう感じさせたのかもしれない。ただ、激情型の監督だと聞いていたのに、拍子抜けするほど物腰は柔らかかった。

 口数が多いわけではないが、言葉には重みがある。いきなり、こう切り出された。

「ユナイテッドの監督として、ぜひとも、君に来てもらいたい。君には期待している」

 そこから、ファーガソンは立ち上がり、ホワイトボードの前に立った。翌シーズンに監督が考えているフォーメーションが少しずつ、見えてくる。〔4-2-3-1〕の布陣になるように選手の名前が書き込まれていく。最前線のセンターフォワードの位置にはルーニーの名前があった。10番を背負い、イングランド代表でも活躍していたチームのエースだ。
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著者プロフィール

香川真司

1989年3月17日生まれ。兵庫県出身。中学入学と同時に宮城県へサッカー留学し、FCみやぎのジュニアユースに所属。高校2年生でセレッソ大阪に加入、J2得点王に輝くなどクラブのJ1昇格の原動力となる。2010年、ドイツのボルシア・ドルトムントに移籍すると中心選手として活躍し、9期ぶりのブンデスリーガ制覇やクラブ史上初となる国内2 冠に大きく貢献。2012年にイングランド・プレミアリーグの名門マンチェスター・ユナイテッドに移籍してリーグ優勝を経験。その後、ドルトムント、トルコのベシクタシュJK、スペイン2部リーグのレアル・サラゴサを経て、ギリシャのPAOKテッサロニキに所属。日本代表には平成生まれの選手として初めて選出され、背番号10を背負い、2014年ブラジルW杯、2018年ロシアW杯に出場。日本代表97キャップ、通算31ゴール。

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