連載:香川真司「心が震えるか、否か。」

香川真司、初の自叙伝 『心が震えるか、否か。』 まえがき

香川真司

香川真司、初の自叙伝『心が震えるか、否か。』を上梓。栄光、挫折、苦悩などを赤裸々に語った 【Photo by MB Media/Getty Images】

 人生のあらゆるシーンで、「選択」を求められるのは、サッカー選手も、社会人も、学生も一緒だと思う。その多くは正解なんて存在しない。

 僕が小さいころからプロ選手を志して、日本代表になって、海外で約10シーズンを過ごすことができているのは、小学6年生のときの「選択」によるものだと思っている。
 神戸に住んでいた僕は、仙台にある街クラブの練習に心を奪われた。
「僕もここでやりたい!」
 そう思った。まるで「練習帰りにアイスが食べたい!」というくらい、あたかも現実的なことのように僕は両親に主張した。「遠いし、無理やろうなぁ」と、一般常識を前に希望を飲み込むことなく、意見を伝えた。そして、その意思を貫かせてもらった。

 海外移籍を検討していた20歳のころ、ドルトムントのスタジアムに行った。8万人入るというスタジアムの熱気と、ヨーロッパ特有の寒さに身を震わせながら、僕はこの試合を見た。
 そして、感じた。「できる、通用する、やれる、やりたい」と。

 ある年は、ドルトムントからマンチェスターに飛行機で飛んだ。
 名将ファーガソンはタキシード姿で僕を迎えてくれて、そして、ホワイトボードのトップ下に「Kagawa」と書き込んで僕への期待を表現してくれた。

 よく、「選択」をする際にいわれることとして、タイミングが重要だ、とか、より困難な道を選ぶべきだ、というものが多いように感じる。
 それはなんとなくは理解できる。でも、僕の場合はちょっと違う。

 自分の「心が震えるか、震えないか」。
 それが判断基準なんだ。
「ワクワク」という表現でもいいのだけれど、「武者震いする」という方が近いかもしれない。

 仙台の街クラブの練習を見て、心が震えた。
 ドルトムントの試合を見て、このスタジアムの熱気に包まれたいと思った。
 ファーガソンのおもてなしは、粋に感じて、心につき刺さった。

 僕が本を出すにあたり、主に2つのことは伝えられると考えている。
 ひとつは、先に書いた「心が震えるか、震えないか」によって様々な「選択」をすることにより、後悔をしないでほしいということ。
 もうひとつは、そうはいっても、一方で僕は数多くの失敗をしてきたし、後悔することもたくさんある。でも、そうした苦い経験があったから、色々なことを考えられるようになったし、歯を食いしばって頑張り続けることができた、ということだ。

 いつも僕のことを見続けてくれた、スポーツライターのミムラユウスケさんの力を借りて、一冊の本にまとめました。客観的に見てくれたミムラさんのおかげで、重層的かつ資料性もある本に仕上がったと自負しています。かなり分厚く、文字数も多いのだけれど、僕のサッカー人生の追体験を楽しんでもらえれば幸いです。

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著者プロフィール

香川真司

1989年3月17日生まれ。兵庫県出身。中学入学と同時に宮城県へサッカー留学し、FCみやぎのジュニアユースに所属。高校2年生でセレッソ大阪に加入、J2得点王に輝くなどクラブのJ1昇格の原動力となる。2010年、ドイツのボルシア・ドルトムントに移籍すると中心選手として活躍し、9期ぶりのブンデスリーガ制覇やクラブ史上初となる国内2 冠に大きく貢献。2012年にイングランド・プレミアリーグの名門マンチェスター・ユナイテッドに移籍してリーグ優勝を経験。その後、ドルトムント、トルコのベシクタシュJK、スペイン2部リーグのレアル・サラゴサを経て、ギリシャのPAOKテッサロニキに所属。日本代表には平成生まれの選手として初めて選出され、背番号10を背負い、2014年ブラジルW杯、2018年ロシアW杯に出場。日本代表97キャップ、通算31ゴール。

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