日本代表は3月シリーズで何を手にした? 再び国民的な注目を集めるために…
地上波で放映されなかった北九州でのアルゼンチン戦
韓国との親善試合に快勝した日本代表は1年4カ月ぶりにW杯アジア2次予選を戦うこととなった 【高須力】
私はこの試合を自宅でテレビ観戦していたのだが、これまでにない衝撃と危機感を覚えてしまった。試合内容についてではない。「サッカー日本代表」をめぐる世間の扱いについて、である。久々の五輪代表のライブ中継。「どの局だっけ?」と思いながら地上波をザッピングしていたら、民放各社はバラエティーや歌番組ばかり。「まさか」と思いつつBSに切り替えたら、BS朝日に北九州スタジアムのピッチが映し出された。
日本代表のコンテンツバリューの低下は、この業界で禄を食んできた者であれば、誰もが実感しているはずだ。とはいえ今年は五輪イヤー、しかも自国開催である。その直前に「金メダルを目指す」日本代表が、同じく金メダル候補のアルゼンチンと対戦する。これほどの話題性がありながら、地上波から完全スルーされてしまうところに、事態の深刻さを痛感する。東京五輪の開催については、私自身、今も疑念を拭えずにいる。が、これを代表人気復活の起爆剤としたい、JFA(日本サッカー協会)の切迫した期待感は理解できる。
そんな中で行われる、A代表のモンゴル戦。日本は5日前の韓国戦に3-0で快勝しているが、森保一監督は「韓国戦という特別な試合のあとに試合をする面では、難しい試合になると思う」としながらも「われわれが何に向かって戦いをするのか。どういう意義で戦うのかを再確認してモンゴル戦に臨みたい」と前日会見で語っている。対戦相手との力の差は明白だが、それでも今回は結果がすべてのW杯予選。まずは手堅く、きっちり勝利することが何より望まれる、シリーズ最後の一戦である。
フクアリでモンゴルのホームゲームが開催される不思議さ
モンゴル戦が行われたフクダ電子アリーナ。千葉で行われた試合は、日本にとってはアウェーで無観客 【宇都宮徹壱】
そして今回のモンゴル戦は、本来ならば日本にとって2次予選最後のアウェー戦。しかし、モンゴル政府が海外からの入国を厳しく制限しているため、結果として日本開催の試合をモンゴルのホーム扱いとすることとなった。セントラル開催でなければ、予選はホーム&アウェーで行われるのが原則。ただし歴史をひもとくと、過去にも「ホーム&ホーム」が行われたことがあった。54年のスイス大会予選での韓国戦がそれで、相手国が日本代表の入国を認めなかったため、東京で予選2試合が行われた(結果、韓国が出場権を獲得)。
イレギュラーなのは、それだけではない。試合会場はジェフユナイテッド千葉の本拠地、フクダ電子アリーナ(フクアリ)に決まった。ここで国際Aマッチが開催されるのは、今回が初めて。JFAの説明によると、会場の費用が比較的安いこと(今回はモンゴル側の負担となる)、そして成田空港から近いことなどが決定の理由となったようだ。かくして、千葉県で「疑似アウェー戦」が開催されることとなったわけだが、もうひとつ忘れてならないイレギュラーが、この試合が無観客で開催されることである。
サッカーファンの間で、すっかり慣れてしまった感がある無観客だが、日本代表にとってはこれが2回目。前回は2005年のW杯ドイツ大会予選の対北朝鮮戦で、このときは北朝鮮がFIFA(国際サッカー連盟)にペナルティを課せられたため、タイのバンコクで開催された。この試合に勝利した日本は、見事に本大会出場を決めたのだが、それから実に16年ぶりとなる無観客試合。すでに海外ではスタンダードとなりつつあるが、まったくスタンドにファンがいない代表戦というものは、想像以上の違和感を禁じ得なかった。