連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方

廣瀬隆喜が響かす頭脳戦の果ての雄たけび ボッチャのカギを握る「先を読む戦術眼」

C-NAPS編集部

東京パラリンピックではボッチャ王国・タイに挑む

リオパラリンピックでも対峙したワチャラポン・ヴォンサー(右)を筆頭に、有力選手が多いタイは言わずと知れたボッチャ大国だ 【写真:アフロスポーツ】

 海外で強豪なのは、タイですね。リオの団体戦決勝でも日本はタイに敗れていますし、個人戦でもBC2では金・銀ともにタイの選手なんですよ。技術が高くて、楽しみながらボッチャをやっている感じなのに、抜け目がないですね。ボールの展開が早くて、他の球に当てて飛ばす「ヒット」や他のボールを押して近づける「プッシュ」、目標に近づける「アプローチ」なんかもすごく精密なんです。タイの選手の試合を見れば、ボッチャを知らない人でも一目でそのすごさがわかると思います。

 タイの選手たちとはほとんど試合でしか会わないんですが、お互い長年やっているので選手もスタッフも顔を合わせれば挨拶(あいさつ)をする仲です。タイ語は話せないので軽くコミュニケーションをするだけですけど、切磋琢磨(せっさたくま)できる存在でありたいと思っています。

 リオで金メダルを取ったワチャラポン・ヴォンサー選手や、銀メダルのウォラウット・サエンガンパ選手の2人とも倒さないと金メダルは届かないですね。そのためにも、いかにミスをしないかがカギになってきます。また、自分の体の状態を理解して、ベストな投球を常に考えることが重要ですね。ヒット・プッシュ・アプローチだけでなく、転がさずに球を直接当てる「ロビングボール」など、細かい技術を磨き続けなければなりませんね。

 大一番で勝利するためにも、試合前のルーティンは大事にしていますね。ウォーミングアップの後に、コートを後ろに向いてほっぺをたたくんです。そうすると精神統一されるんですよ。後はゲン担ぎとしてカツを食べています。大会会場によって周辺にあるレストランはさまざまなので、「かつ丼」「とんかつ」と決めるのではなく、「カツ系」としていますね(笑)。ルーティンは行う選手と行わない選手がいますが、自分の場合はすごく合っているので大切にしていますよ。

ファンへの思いを胸に誓う東京での活躍

「一丸」となり、結束力が強いボッチャ日本代表。廣瀬(左から2人目)を筆頭に全種目全カテゴリーでのメダル獲得に期待がかかる 【写真は共同】

 東京パラリンピックまで後4カ月となりました。海外客の受け入れが中止になり、国内の観客もどうなるかわからない状況です。それでもやっぱりファンの皆さんの応援はすごく選手の力となるので、会場に来ることがもしできなくても、ぜひテレビの前で応援してもらいたいですね。僕自身もこれまで講演で色々な学校などを回ってきて、応援の声をかけていただいたことがすごく力になっているんです。

 また、ボッチャは個人戦でありながらも、1人ではできない競技でもあります。僕は「チーム廣瀬」を2、3年前から立ち上げて、コーチやトレーナー、映像分析、栄養士、車いすの業者の方ら、たくさんの方にサポートをしてもらってここまで続けてこられました。サポートや応援をしてくれるすべての皆さんに、結果で恩返ししたいです。

 18歳でボッチャをはじめて、気が付けば人生の半分をボッチャに捧(ささ)げてきました。4大会目となる東京パラリンピックは、自国開催になるので今までにない経験です。自分がやってきたことをすべて出していきたいですし、前回は銀で終わっているのでリベンジを果たすべく頂点を目指します。また、ボッチャ日本代表・火ノ玉JAPANのテーマは「一丸」です。自国開催である今回は全クラスの選手が出場できるので、すべてのクラスでメダルを獲得し、ボッチャブームを継続していけたらと願っています。

(取材・執筆:久下真以子)

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著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

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