再・五輪イヤー、卓球代表の現在地 涙のV石川佳純が示した今こそ必要な姿勢

平野貴也

1-3からの大逆転

5年ぶり5度目の優勝を果たし歓喜の涙を流した石川 【岡本範和】

 5年ぶりの優勝に、思わず涙を見せた。

 卓球の東京五輪日本女子代表、石川佳純(全農)が17日に行われた卓球の全日本選手権・決勝で伊藤美誠(スターツ)をゲームカウント4-3で破り、5度目の優勝を飾った。

 1-3からの大逆転だった。昨年11月のワールドカップで銅メダルを獲得している伊藤との対戦は、序盤こそ台上から強打を打ち込んでくる相手のスピードに付いていけずに苦しんだ。しかし、中盤からラリーで粘りを見せると、力強く押し返すアグレッシブなプレーが目立つようになり、2ゲームを奪い返してゲームオールに持ち込んだ。

 一方、流れを失った伊藤も食らいつく勝負強さを見せ、第7ゲームは石川が9-5とリードした場面から9オールの同点に。追い上げられた石川だったが「心臓が飛び出そうになったけど、もう仕方がない、美誠ちゃんも緊張していると思ったので、思い切った方が勝ちだと思った。心の勝負だと思って勇気を出してやろうと思った」と攻める姿勢を崩さず10点目を奪う。すると、最後は伊藤が待っているコースに強打を連続して打ち込み、11点目を奪って勝利。両手を挙げて、歓喜の涙を流した。

変わるきっかけはコーチや家族の言葉

石川は、若い選手の台頭が目覚ましい日本卓球界でも進化の可能性を信じ挑戦し続けてきた 【岡本範和】

「今の日本女子はレベルが高いと思うので、この大会の優勝は自信になる。卓球を20年やってきて、東京五輪は、私にとって最高の舞台。あると信じているので、それに向けて一生懸命にやっている姿をテレビを通して見てもらえたことは嬉しい。私は、頑張り続けるしかないと今は思っています」

 石川は試合後、今夏の開催が不安視されている東京五輪に向けた気持ちを語った。

 東京五輪の出場権争いでは、若手の追い上げを振り切って3大会連続の出場権を勝ち取った。しかし、全日本選手権では、下の世代の選手に敗れることが続いていた。

 若い選手の台頭が目覚ましい日本卓球界において、石川は27歳。ベテランの域に入ってきている。

「もう(全日本の優勝は)無理なんじゃないかと思ったことも、言われることもあった。でも、(試合のない時間が長く)練習時間が増え、その中でコーチや家族からかけてもらえる言葉が、もっとできるというマインドに変わったきっかけ」

 技術的にもバックハンドの技術を磨き直したことで、自信と積極性を取り戻した。若手の追い上げを受ける立場になっても、まだ進化していることを証明する優勝だった。

敗れても強さ際立った伊藤

多彩なサービスを出した伊藤も成長の姿を見せていた 【岡本範和】

 敗れた伊藤も、前回優勝の早田ひな(日本生命)を破った準決勝に続く1日で2試合のフルゲームの大激戦を展開する中で奮闘した。優勝を逃したショックは大きく、試合後はなかなか立ち上がれなかったが「どんな体の状態でも勝てる選手になりたい。実力、自信をつけ、何があっても、誰にでも勝てる選手に、もっとなっていきたい」と世界の頂点を狙う闘志は消えていなかった。

 大会を通しては、特に勝負どころで切り替えていたサーブの引き出しが多く、試合の流れを引き戻す力強さを見せた。準決勝後には「練習でサーブからの展開もやっていたので、自信を持って臨もうと思っていた。パッと決めて、出すときはしっかりと出せている。考え過ぎなくてもできるくらいに(練習を)やってきた。落ち着きながら考えられていて、ラリーもボール、相手を見られている」と手ごたえを話していた。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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