皆川夏穂が表現する新体操の壮美と旋律 マット上で華やぐ「美しく、正しい演技」
新体操の個人総合のエース・皆川夏穂に、2大会連続出場を目指す五輪と競技の見どころについて聞いた 【イオン新体操クラブ】
皆川は中学卒業と同時に新体操王国・ロシアに留学。優れた素質とひたむきな努力によって才能を開花させると、2016年リオ五輪では日本選手として3大会ぶりに個人総合での出場を果たした。翌17年世界選手権の個人種目フープでは、日本勢の個人として実に42年ぶりとなる銅メダルを獲得。自国開催の東京五輪での活躍にも期待が集まっている。
今回はそんな押しも押されもしない個人総合のエースに、東京五輪への意気込みと新体操の魅力を聞いた。果たして自身が集大成と位置づける東京五輪で大輪の花を咲かせることができるのか。「これまでサポートしてくれた方々に対して、演技で感謝の気持ちを表現したい」と語る皆川の表情には並々ならぬ決意がにじみ出ていた。
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演技とメロディーの「一体感」が新体操の魅力
新体操の個人総合は4種目の総合得点で競うため、練習通りの正確な演技で減点をしないようにすることが重要だ 【写真は共同】
また、新体操は個人競技と団体競技の2つに分かれていて、団体は1チーム5人の選手で2種目を演技します。演技時間は2分15秒〜2分30秒以内で、長すぎても短すぎても1秒につき0.05点の減点です。5人の息の合ったコンビネーションが非常に重要になります。
私が専門としているのは個人総合で、フープ、ボール、クラブ、リボンの4種目を1人で行います。1種目につき1分15秒〜1分30秒の演技時間内に収まらないと減点なのは同じですね。個人総合は4種目の総合得点で順位を競うため、どれかが飛び抜けて良くても上位には入れません。得意不得意を作らないように意識して練習していますが、強いて挙げるとすればフープとボールが得意です。
4つの手具は扱い方にもそれぞれ特徴があります。フープは一番大きな手具。多くの方がフラフープをやったことがあるかと思います。遠心力をうまく使いコントロールする必要があるので、面や重さを感じながら対角線に力が伝わることを意識して演技しています。ボールは少しでもミスをするとすぐに転がってしまうので、一番減点につながりやすい手具です。体に吸いつくように扱うことで「ボールを転がす」のではなく、「自分がボールに転がりにいく」イメージを大切にしています。曲線に合わせて体を柔らかく使うことで新体操の美しさを表現します。
クラブは他の種目とは異なり、2つの手具を同時に扱う点が特徴です。両手でしっかりコントロールしないとミスにつながります。利き手に関係なく同じように扱えるよう、小さい頃からたくさん練習を重ねましたね。リボンは長さが6メートルあって軽くてペラペラなので、体の芯から力を伝えないとすぐに絡まったり、結び目ができたり、張りがなくなったりします。床につくごとに0.1点の減点で、結び目がついたまま演技を続けるとそれまでの技がすべて0点になります。技術力を要する、1秒たりとも気を抜けない種目なんです。
また、リボンは練習後にはかなりシワが入ってしまいます。また、時期によっては湿気で重さも2倍くらいになることもあるので、実はアイロンがけをしているんですよ(笑)。海外遠征の際は荷物になるので、ヘアアイロンで代用していますね。指導を受けているナディア・ホロドコバコーチからは「試合で最後にマットに立っているのは自分と手具だけ。使い方が悪いと手具に伝わって良い演技ができなくなる」と言われています。だから私は手具をすごく大切に扱っています。
メロディと一体となって演技するのが新体操の醍醐味。皆川はクラブの種目で三代目J Soul Brothersの「SCARLET」を選曲している 【イオン新体操クラブ】
現行のルールでは、4種目のうち2つは歌ありの曲の使用が認められています。私はクラブの種目で大好きな三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの「SCARLET(スカーレット)」という曲を採用しています。東京五輪でぜひお披露目したいですね! サビの部分ではダンスステップをアレンジして取り入れていますが、YouTubeなどで動画を見て、ダンス練習もしています。日本のみなさんに楽しんでもらえると嬉しいです。三代目からクラシックと、4種目まったく異なるジャンルに挑戦したほうが面白いので、いろんな曲を選ぶようにしています。
曲に合わせた衣装選びもまた重要です。動きやすさを最優先しますが、遠くにいる観客の方にも目立つ衣装であることも意識しています。ただし、衣装や頭につけている装飾が落ちると減点につながるので、そのバランスにも気をつけています。