駒澤大・大八木監督は「唯一無二の存在」 早大OB八木勇樹氏が復路の逆転劇を分析
最終10区での歴史的な逆転が起きた要因を、早大OBの八木勇樹氏が解説する。写真は10区の駒澤大・石川(右)と創価大・小野寺 【写真は共同】
今回の復路に関して、早稲田大時代に大学駅伝三冠の偉業を達成し、卒業後は実業団に加入、プロランナーを経て、現在は「RDC RUN CLUB」の代表を務める八木勇樹氏にレースと大会の総括を聞いた。
総合力の高さを見せた創価大
創価大は9区・石津が区間賞の快走を見せるなど、総合力の高さを見せた 【写真は共同】
往路とは違い、復路はタイム順による時差スタートですので、単独走での力量がポイントとなります。逆転こそ許しましたが、創価大はかなり力があり、良い走りができていた印象を受けました。駒澤大も、本来であれば“万事休す”といったタイム差まで広がりましたが、最後まであきらめなかったことが逆転を呼んだと思います。
また、往路12位の青山学院大は、チームのキャプテンである神林勇太選手(4年)が欠場となってしまいましたが、復路は単独走でも力を発揮できる選手をそろえ、やはり総合力が高いチームであることを示したと思います。
――総合2位に終わりましたが、創価大の復路の走りはどうでしたか?
創価大は6区から9区まで、全員が区間8位以内で走りました。優勝を狙えるレースをしていたと言えます。6区で駒澤大の花崎悠紀選手(3年)に差を詰められ、射程圏内にとらえられそうになりましたが、7区で原富慶季選手(4年)が、きっちりとリードを1分以上に広げ、相手の戦意をそぎ、失速を誘うような走りをしました。
特に9区の石津佳晃選手(4年)は、会心の走りだったと思います。往路と違い、復路は後半区間になればなるほど、気温も上がり、脱水を注意しないといけない区間です。その中で2位の駒澤大と1分半以上、区間2位の青山学院大・飯田貴之選手(3年)とも1分以上差をつけました。このような力のある選手を9区に残せるという点でも、創価大の総合力は高かったと言えます。
日々の努力が勝つ確率を高め、結果につながる
八木氏は「『駅伝は最後まで何が起こるか分からない』という究極パターンだった」と語る 【写真は共同】
これが本当に、「駅伝は最後まで何が起こるか分からない」という究極パターンだったかと思います。駒澤大の石川拓慎選手(3年)としては、2位を守るために淡々と走るという選択肢もあったと思います。しかし、失速を恐れずに攻めた走りを見せて、区間賞の快走でした。しっかり自分が持っている力を出し切り、チャンスをつかみ取った。このチャンスをつかむ確率を上げるのが、日々のトレーニングだったり、練習の積み重ねだったりします。レース本番で、最後まであきらめなかったことが、運を手繰り寄せた理由だと思います。
創価大の選手としては悔しい結果だったと思いますが、決して緊張で動きが悪かったとか、ケガで万全ではなかったということではないと思います。そもそも緊張感が高まった中だと、脱水のリスクは高まります。前述したように、復路のレース後半は気温も上がり、さらにリスクは大きくなります。10区の場合、そういう暑さへの適正も必要です。もしかしたら、その部分の準備や適性の確認が、優勝経験豊富なチームとの差になったのかもしれません。