【水戸】私の「ミッション・ビジョン・バリュー」 第11回前嶋洋太選手「成長を楽しむ楽観主義者」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【©MITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」
を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

17名の選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
第11回目は前嶋洋太選手です。


(取材・構成 佐藤拓也)

【©MITOHOLLYHOCK】

Q.MVVを策定するためにスタンス面談を行ったと思いますが、いかがでしたか?
「今までに自分の人生を誰かに伝えることはありませんでした。いろんな思い出を言葉にすることは面白かったですね」

Q.気づきもありましたか?
「ぼんやり思っていたことを言葉にすることによって明確になるし、明確になった方が細かいことも思い出せて、すごく楽しかったです。こういった取り組みをしているのは水戸だけだと思うので、有意義な取り組みだと感じましたし、いろんな気づきがあってよかったです」

【Mission】

Q.「Mission」では「『目標を持ち、努力すれば何歳からでも人は成長できる』ということを証明し続けること」と書いてあります。
「僕自身はJ3を経験してJ2に上がってきて成長する楽しさを実感できています。その感覚は何歳になっても変わらないと思うんですよ。年齢を重ねても、いい意味で変化しながら人生を歩んでいきたいという思いがありますし、自分がそういう人生を歩むことによって、何歳でも人は成長できるということを証明できると思ったので、その言葉を選びました」

Q.とはいえ、前嶋選手は23歳です。まだまだ若いと思うのですが、ご自身で現在の年齢をどうとらえていますか?
「若いとは思っていません。もちろん、年上の方から見たら、『若い』と思われているでしょうし、『これからいろんな経験ができる』と思われる年齢だと思います。でも、僕は18歳でプロになり、すでに5年が経っています。若いから許されるという年齢ではないと感じています」

Q.昨年までJ3の富山でプレーした2年間は前嶋選手にとってどんな時間でしたか?
「まず試合に出られたことが大きかったですね。横浜FCのアカデミーで育ってきて、それまで横浜から出たことがなかったんです。なので、違う環境に行ってゼロからいろんなことを学ぶことができましたし、新たな環境に合わることもできた。そして、周りの選手に合わせることも経験したことによって、サッカー選手としてだけでなく、人として一回り大きくなれたという実感があります」

Q.今年はJ2の水戸に移籍してきました。今シーズンはいろんなことがあったと思いますが、成長を実感していますか?
「サッカー的には間違いなく成長していると思っています。J3とJ2ではスピード感が全然違うのですが、徐々に対応できるようになりました。プラスして、自分ができることも増えていったと感じています。守備における課題はたくさんありますが、それでも改善できているところも多い。すべての能力が高まっているという実感はあります。人間としては、水戸は人材育成に力を入れているクラブで、今回のMVVもそうですし、Make Value Projectではいろんな業界の方からお話を聞くことができて、視野を広げることができています。学ぶことによって、いろんなことに気づけるんですよね。それがすごく楽しくて、さらに深く、広く学びたいという意欲が出てきています。そういういいサイクルが自分の中でできています。そうしたいろんな取り組みを通して、成長させてもらっているという感覚があります」

【Vision】

Q.「Vision」について聞かせてください。「チャレンジを辞めず成長を諦めない人で溢れる社会」とありますが、どういう思いでこの言葉にしたのでしょうか?
「Missionと動機は同じなのですが、チャレンジをすることによって失敗することはあると思います。それでも学べるものはある。チャレンジをして失敗したら、もうチャレンジをしたくなくなってしまうこともあると思うんですよ。でも、失敗すらも楽しみながら取り組んでいきたいと僕は思っているので、そういう人が増えてほしいなという気持ちがあるんです。自分が思っていることしか、人に伝えることはできないと思うんですよ。だから、まず自分がチャレンジする人でありたい。そういう気持ちから出てきた言葉です」

Q.秋葉忠宏監督は選手たちに失敗を恐れずにチャレンジすることを求めています。チャレンジする姿勢が見ている人の心を揺さぶると思っています。
「水戸に来て、秋葉監督からチャレンジすることの大切さをあらためて感じています。なので、そういう姿勢が多くの人に伝わるようにプレーしているつもりです。うまくいくことだけではないですし、失敗することもたくさんありますが、それも自分の成長のために必要というマインドでプレーすることができています。秋葉監督の下でプレーすることにやりがいを感じています」

Q.チャレンジしたくても、なかなか踏み出せない人もいますよね。
「実は僕自身、以前は人見知りでしたし、ビビってアンパイなプレーを選択することが多かったんです。なので、チャレンジできない人の気持ちも分かるんです。でも、意外とチャレンジしてみると、なんとかなってしまうものなんですよ。今、チャレンジできずにいる人にはそういうマインドを持ってもらいたい」

Q.人見知りだった前嶋選手がチャレンジできるようになったきっかけは何かありますか?
「ずっとチャレンジしようという気持ちがありながらも、いざその時になると委縮してしまうということを繰り返していました。一歩踏み出せない弱い人間でした。でも、一度一歩踏み出して成功した経験が大きかったと思います。やはり、個人的には富山に行って試合に出られるようになったことが大きかった。チャレンジの楽しさを知ることができたんです。トライ&エラーを続けた富山での2年間がきっかけですね」

Q.アカデミーから育った横浜FCを飛び出したことできっかけをつかんだんですね。
「富山に行くまではチャレンジする楽しさを知らなかったから委縮してしまっていましたが、富山でチャレンジの楽しさを知り、いい意味で『失敗に慣れた』ことによって、変わることができました」

Q.チャレンジの大切さをこれから伝えていくということですね。
「そうですね」

【Value】

Q.次は「Value」について聞かせてください。たくさん項目があるのですが、まずは「成長するためにやるべきことを具体的に描く」とあります。
「自分は何でもガムシャラに取り組むタイプだったのですが、それだと成長スピードがあまり上がらなかったんです。もっとやるべきことを具体的にすることで成長スピードが上がるということを富山と水戸で実感することができています。取り組むことを整理することが大事」

Q.どうやって整理しているのですか?
「僕はメモを書いています。ユース時代に監督から『君たちはすぐに忘れるからノートに書いておけ』とよく言われていたんです。その通りだと思いました。学んだことをしっかり吸収しないと同じミスをしてしまう。そうならないためにも、その時から気づいたことなどをメモするようになりました」

Q.次は「学ぶことをやめない」。
「先ほども話しましたが、一度学ぶ楽しさを知ると、さらに学びたいという欲が出てくるし、どんどん知識が深まっていく。そういういいサイクルを自分の中で作ることが大切だと思います」

Q.「自分の意見を持ちながら相手の意見を聞き自分で判断する」とは?
「プロである限り、みんな自分の意見を持っています。ただ、その分、頑固になってしまうところがあるし、人の意見を聞き入れないところがある。僕もそういうところがあるので、気を付けないといけないと思っています。見方や立場によって考え方が変わるということをちゃんと理解しないと視野が狭くなってしまう。いろんな意見を取り入れた方が人として成長できるし、いろんな考え方ができるようになる。それが大切だと感じています。その考えは、次の『双方の価値観の優先順位を考える』にもつながっています」

Q.水戸は今季、主体性をテーマにチーム作りが行われてきました。その中で選手同士でディスカッションをすることもありました。自分の意見を発信することはもちろん、他者の意見を聞いて、意見をすり合わせる大切さを再確認したのでは?
「それはありますね。それぞれに意見があるので、まとめるのが難しかった時もありましたけど、1人1人が相手の意見を聞き入れたことによって、コミュニケーションの質は高まったと思っています。サッカーの話をすることがすごく増えましたし、他の選手のサッカーの価値観を知ることができ、自分の価値観も広がったので、すごく意義があったと思っています」

Q.「常に後悔しない選択、チャレンジを楽しむ」。
「後悔しないって、すごく難しいと思うんですよ。今でも後悔することはあるし、一生いろんなことに後悔するのかもしれません。でも、一度きりの人生ですから、後悔しないようにチャレンジをしていくことが大事。それで失敗するのは仕方ないと思うべきだと思っています」

Q.「大切なことをノートに描き振り返る(テーマ:サッカー、人間、本、経済など)」は先ほど話された内容ですね。
「ほかの選手は分かりませんが、僕は結構忘れっぽいので、覚えておくためにもメモすることが大切ですし、ノートにまとめることによって、理解が深まる。読み返せば、より深めることができる。なので、自分にとっては、すごくいい取り組みだと思っています」

Q.最後は「過去は変えられない、未来を変えるしかないから、今日をがんばる」。
「かっこいいですね(笑)。後悔しても何も変わらない。取り返すのはこれから先の行動のみ。このマインドは大切だと思います。そして自分がそういうマインドでいると、他人の失敗も許容できるようになるんです」

Q.周りの人に対するオープンマインドな姿勢が前嶋選手の「Value」ですね。
「もちろん、ダメなことはダメという線引きも必要です。でも、許容範囲は以前より広がっていると思います」

【スローガン】

Q.スローガンは「成長を楽しむ楽観主義者」と書いてあります。「楽観主義者」という言葉が印象的です。
「考えすぎないことはチャレンジし続けるためには必要な要素だと思っています。考えすぎずに飛び込んでしまうことも必要。同じ出来事でもとらえ方次第でポジティブにもネガティブにもなれる。もちろん、ネガティブなところに目をつむるというわけではなく、しっかり見つめながら、最終的にはポジティブにとらえようという意識は強いですね。それが成長につながっていると思っています」

Q.「課題は伸びしろ」ぐらいのマインドが必要ですよね。
「本当にそう思います。過去は変えられないですから。常に未来を楽しみにするマインドを持っていたいですし、水戸に来てから特にそういうマインドで日々過ごすことができています」

【ⓒMITOHOLLYHOCK】

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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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