【水戸】私の「ミッション・ビジョン・バリュー」 第5回村田航一選手「自分で選んだ道を正解に」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【©MITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」
を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

17名の選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
第5回目は村田航一選手です。


(取材・構成 佐藤拓也)

【ⓒMITOHOLLYHOCK】

Q.村田選手は昨年もMVVを作成しましたが、今年はまた新しいものを作ったのでしょうか?
「新しいものを作りました。昨年は『応援してくれる人のために』という思いを言葉にしていたのですが、今年は利他というより、利己的な内容になりました。今まで『人のために』という思いで取り組んできたところ、『人のために』という思いも結局は『自分のため』であって、人が喜んでくれてうれしいのは自分なんだということに気づきました。『人のために頑張る』というより、『自分のために』頑張った結果、誰
かが喜んでもらえたらうれしいなと。そっちの考え方の方がしっくりくると思ったので、自分を中心とした内容に変えました」

Q.自分で変えようと思ったのでしょうか、それとも面談の中で変えようという話になったのでしょうか。
「昨年1年間『人のために』頑張ったのですが、自分の中で違和感があったということを面談で話をしました。それで変えることになりました。昨年はもっと自分にベクトルを向けていいのかなと感じた1年でした」

【Mission】

Q.「Mission」では「自らを高め、自らに挑戦し続ける」とあります。まさに「自分」に矢印を向けた言葉ですね。
「元々ストイックに自分を限界まで追い込むことが好きなんです。『周りの人のために』ということは自分にとって大きなテーマではありますが、そもそも自分が自分の限界を知りたいという欲求からサッカーをやっているので、その欲求を満たすことによって、周りの人のためになればいいなと思い、そういう言葉にしました」

Q.昨年、「自分」に矢印を向けようと思ったきっかけはあるのでしょうか?
「周りの選手を見て、そう思うようになりました。たとえば、清水慎太郎君(岡山)や小川航基(磐田)は『周りの人のために』というより、『俺が点を取る』という思いが強かった。でも、1年間振り返って、どちらがより多くの人に感動を与えたかなと考えると、どんなに『周りの人のために』と思っても、やはりゴールなどのプレーで表現した人なんですよ。そういうことを感じたと面談で話したところ、自分にフォーカスして取り組んだ方が自分のエネルギーに変換しやすいと感じたので、考え方を変えるようにしました」

Q.実際、プレーでの変化を感じていますか?
「最近はけがが多くて、あまりしっかりプレーできていないのですが、プレーできた時は感じることができています。『自分を出す』というか、多少強引にボールを持って仕掛けたり、シュートを打つといったプレーを昨年より出せるようになったと思います。元々『自分のために』『自分が活躍するために』と思ってサッカーをしてきたんです。大学に入ってから、周りの人に支えられていることを強く感じ、周りの人が喜んでくれることに一番幸せを感じるようになったので、昨年まではそういう思いを大切にしてきたのですが、また一周して戻ってきた感じです。よりシンプルに考えられるようになったというか、今は自分の中でそっちの方がしっくり来ている感じです。シンプルに腑に落ちる思考の方が持続させやすいと思うんですよ。なので、そういう変化がプレーにも出ていると感じています」

【Vision】

Q.「Vision」には「自分が挑戦する姿を通し、勇気を与え行動の後押しができる選手に」と書いてあります。
「自分が挑戦することは他の誰のためでもなく、自分のためなのですが、でも、自分の挑戦する姿を見た誰かに影響を与えられるようになりたい。誰かの行動を後押しできるような存在になれれば、自分にとって最大の幸せだと思って、この言葉を選びました。行動を変えることはすごく難しいことだと思っているので、そんなに簡単に後押しできるなんて思っていません。自分が挑戦する姿を通して、『明日も頑張ろう』とか『今日は楽しかった』とか思ってもらえるだけで十分だし、それだけでもすごく価値のあることだとは思います。でも、その上で行動を後押しすることができたら、自分の挑戦により大きな価値が生まれると思うので、こういう言葉にしました」

Q.村田選手自身、誰かに行動を後押しされたことはありますか?
「明治大学時代、2年先輩の丹羽詩温さん(愛媛)からはすごく刺激をもらいました。丹羽さんは3年生までほとんどトップチームの試合に出ていなかったのに、サッカーノートをしっかり書いたり、映像を見て振り返ったりしていたんです。そしたら、4年になってレギュラーとして起用されるようになり、結果を残して、プロになったんです。僕も試合に出られない期間は長かったのですが、ちゃんと行動を起こしている人は結果を出すんだなと感じて、その期間も努力し続けることができました。丹羽さんの存在は自分の信じる力の後押しになりました。丹羽さんに行動を変えられたと言っても過言ではないと思っています」

【Value】

Q.次は「Value」について聞かせてください。『日々、常に100%で臨む』は村田選手がずっとやり続けていることですね。
「試合の結果や成績は日々の成果でしかないと思っています。なので、1日1日を大切にしています。100%というのは、ピッチ上だけでなく、ピッチ外の生活にも共通していて、睡眠や食事にもこだわるようにしています。ピッチ内外で100%を尽くすことを考えて取り組んでいます」

Q.「トレーニングへの準備、トレーニングの振り返りを毎日行う」と書いてあります。「準備」は分かるのですが、「振り返り」とはどういったことでしょうか?
「プレー中だと分からないこともあるので、この場面ではこういう判断をすればよかったとか、体の使い方や技術面も含めて、練習が終わった後、映像を見て振り返るようにしています。毎日コーチが練習の映像を撮影していて、そのデータをもらえるんです。ゲーム形式やポゼッション形式のトレーニングの映像を家に帰ってから見返すようにしています」

Q.映像で振り返るためにも、練習の中で気になったプレーや場面を頭に入れておかないといけないですよね。
「そうなんです。なんとなく映像を見て振り返っても、あまり効果はないと思っています。練習中からしっかり考えてプレーすることによって、振り返った時に収穫があるし、積み上げがあると思っています。なので、“なんとなく”練習をせず、“狙いを持って”練習することを心がけています。そして、その上で映像を見て、振り返るようにしています」

Q.「目の前の結果に貪欲にこだわりつつ、目の前の結果だけで一喜一憂しない」とあります。相反する言葉が並んでいるように見えますが。
「一喜一憂しないことを自分は割とできるタイプなんです。でも、一喜一憂しないようにすると、目の前の結果に対するこだわりが減ってしまう気がするんです。100%できると信じたものができなかった時は誰でも“一憂”すると思うんですよ。そこのバランスが難しいんです。一喜一憂しないことは大事なのですが、そのためにできないことを想定してプレーしてしまうのはよくない。僕はそれをしてしまうタイプなんです。日々の練習から結果にこだわってプレーしながらも、その結果に一喜一憂しないことにトライしていこうと思っています」

Q.それを言葉にするのは簡単かもしれませんが、実際、100%のメンタルで戦っていると難しいことだと思います。そのメンタルのバランスが、特にFWは必要となってくるのですね。
「先ほども名前を挙げましたが、慎太郎君や航基はプレーよりも、そういうメンタル面にすごさを感じました。シュートを外しても、積極性を失うことはない。決定機を外しても、次のプレーの判断に支障をきたすようなことはないんです。2人とも一喜一憂はしていなかったですね。試合直後は落ち込むこともあったとは思いますが、すぐに切り替えているようでした。常に前向きにゴールを狙っていた。そこにすごみを感じていました」

Q.2人と一緒にプレーできたことは村田選手にとって大きな経験となりましたね。
「学びが多かったです。今年も(中山)仁斗君や(山口)一真君からいろんなことを学んでいます。2人ともシュートを外しても、次のプレーに影響はないですし、むしろ、それからの方が積極的になるぐらいのメンタリティーでプレーしている。それはストライカーとして大事なことだと思います」

【スローガン】

Q.スローガンは「自分で選んだ道を正解に」という言葉を掲げています。
「僕は大学卒業後の進路で就職するか、プロに進むかという選択をすることとなりました。どっちが自分にとっていいのかをすごく悩みました。でも、答えは出なくて、なかなか決めることができなかったんです。その時にある方から『自分がやりたいことをやりなよ』と言われて、プロに進むことを決断したのですが、今振り返ってみると、選択する時点で正解なんてないんですよ。結局、選択した先で何をするかが大事なんです。自分で選んだからこそ、進んだ先で後悔がないように取り組むようになる。岐路に立たされて悩む人は多いと思うんですよ。でも、結局その時に正解なんてないし、自分が選んだ道を正解にしていくしかないんじゃないかなと僕は思っています。なので、岐路に立っている人に何か伝わるような言葉になればいいかなと思い、この言葉を掲げました」

Q.選ぶことによって覚悟が生まれますよね。
「自分で選ぶことが大事だと思います。僕は中学、高校とサッカーで入学して、大学もスポーツ推薦で進学して、人生で岐路に立たされる経験があまりなかったんです。大学卒業する時に人生で最大の決断を迫られることとなりました。でも、世の中にはもっといろんな岐路に立たされている人がいると思う。そういう人たちの背中を押すような存在になりたいと思っています」

Q.残り試合少なくなってしまいましたが、そこでも活躍して、いろんな人の背中を押したいですね。
「まずは早く復帰することが目標です。そして、チームとして過去最高の6位以上を目指しています。僕はゴールやアシストといった目に見える結果で貢献したい。まずは復帰して、コンディションを整えて、いい準備をしたいと思います」

【ⓒMITOHOLLYHOCK】

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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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