片山晋呉の忘れられないマスターズの記憶 ゴルフ人生で一番自慢したい瞬間とは?

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マスターズで日本人最高位となる単独4位の記録を持つ片山プロに、記憶に残る名場面や思い出を語ってもらった 【撮影:スリーライト】

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、例年の4月第1週ではなく、11月12日から開催されるゴルフの祭典「マスターズ」。大会史上初となる秋開催で、どんなドラマが繰り広げられるのだろうか。

 マスターズ開幕を直前に控えたいま、これまでに9回マスターズに出場、そのうち6回予選を突破、2009年には日本人史上最高位となる単独4位の成績を残した片山晋呉プロに、マスターズについて語り尽くしてもらった。第1回は、片山プロの記憶に残るマスターズの名場面、そして自身が参戦したマスターズでの思い出について話を聞いた。

片山少年が興奮したジャック・ニクラウスの優勝シーン

1986年に史上最年長の46歳で優勝したニクラウス。最終日17番でバーディパットを沈めパターを突き上げるシーンはマスターズの名場面として語り継がれている 【Photo by Augusta National/Getty Images】

――片山プロも、最初にマスターズを観たのはテレビの画面を通してだったと思います。マスターズはいつ頃から観ていたのでしょう?

 たぶん小学校3年生か4年生の時には、もう観ていたと思います。印象として強烈だったのは、1986年、僕が中学校2年生の時のジャック・ニクラウス(米国)の優勝(当時46歳。9年ぶり史上最多の6勝目)。あれは一番覚えているし、パターを突き上げるシーンは好きですね。

――当時、プレーを見るのが楽しみだった海外のプロはいたのですか?

 やっぱりニクラウスはすごかったし、フレッド・カプルス(米国)も好きでした。あと、セベ・バレステロス(スペイン)も。マスターズとは関係ないのですが、僕が大学生の頃、アメリカのカリフォルニア州に行ってコーチの指導を受けたのですが、セベも同じコーチに教わっていて、それが縁で一緒にラウンドしたことがあるんです。

――セベもマスターズで2度優勝していますね。ご自身が出場されるようになってからでもよいのですが、マスターズと聞いて思い出す場面は他にありますか?

 2004年のフィル・ミケルソン(米国)の初優勝ですかね。最終日の18番でバーディパットを決めて、万歳してジャンプしたシーンは覚えています。

――男子のメジャートーナメントは4つありますが、その中でもやはりマスターズは特別という感覚はあるのでしょうか?

 マスターズだけ開催コースが毎年同じじゃないですか。場所が変わらないということは、何年の、何曜日に、誰が、どこで、何をしたかということが、記録もそうですが、みんなの記憶に刻まれると思うんです。それって、メジャーなスポーツでいうと、マスターズとウィンブルドン(全英オープンテニス)だけだと思う。マスターズで言うと、オーガスタという場所で行われて、しかも歴史もあってとなると、やはり特別なものになりますよね。コースとその歴史が、他とは違う特別感を出させるというか。

突然実家に届いたマスターズの招待状

マスターズの招待状が実家に届いた時のエピソードを笑顔で振り返る片山プロ 【撮影:スリーライト】

――片山プロにとって、マスターズが、観る対象ではなく、出たい、出るんだという対象に変わったのはいつ頃ですか?

 いや、僕なんてプロになってからしばらくは全然ダメだったので、まったく意識はしていませんでした。27歳で初めて賞金王を獲った2000年も、当時はもうマスターズの出場は今と同じワールドランキングで決まるようになっていて、日本の賞金王というカテゴリーは数年前になくなっていたんです。あの年は結果的に賞金王にはなったけれど、その前まで大した成績を残していなかったので、ワールドランキングも60位台までしか上がりませんでした。だから、僕自身マスターズには出られないだろうなと思っていたし、周りもそう思っていましたから。

――でも、その後、2001年大会の招待状が届いたわけですよね。

 はい、大会まで1カ月を切った3月半ばになってからです。今でも覚えていますが、あの年は開幕戦で優勝して、気持ちよく2戦目の静岡に入ったんです。それで火曜日にコースの風呂場でストレッチをしていたら、母親から電話があって、家にFAXが届いていると。
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著者プロフィール

早稲田大学卒業後、ゴルフ用品メーカー、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスのゴルフライターとして活動。これまでに男子の世界4大メジャーすべてを取材。著書に『スタイリッシュゴルフマナー&ルール読本』(PHP研究所)、訳書に『超一流ゴルファーに学ぶスランプからの脱出法』(日本経済新聞出版社)がある。オフィス・プレーゴ所属。

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