清水エスパルスが仕掛ける新たな広報活動 〜社長がスパイクを磨いた理由とは?〜

清水エスパルス
チーム・協会

【©S-PULSE】

エスパルスは昨年「リブランディング」を行い、長年に渡って使用してきたチームのエンブレム・クラブロゴを変更するなど大きな改革を行っている。そして今年、メディア等でエスパルスの情報を目にすることも多くなった。そこには、どのような仕掛けがあるのだろうか。エスパルスの森谷理 広報部長に話をうかがった。


――最近、SNSなどでエスパルスの情報を目にすることも多くなりました。

エスパルスはウェブサイトをはじめ、Twitter、Instagram、Facebook、YouTubeなどのSNSやアプリといったオウンドメディアを活用して、様々な情報を発信しています。コロナ感染拡大の影響により、思うようなメディア露出ができないなか、我々自身から情報というサービスを提供しなければいけないと考えています。


――そもそもどういった経緯で力を入れるようになったのですか?

今年、新たに山室晋也社長が就任しました。社長からは「これまでの常識を破るようなこと、尖ったことをやろう」と。昨年までNPB千葉ロッテマリーンズの球団社長として様々な施策を打って観客動員を上げてきた社長から見て、エスパルスは物足りないと感じたのだと思います。


――山室社長と言えば、スパイクを磨いている写真を目にしました。

エイプリルフールで、「山室社長が社長を退任してホペイロ(用具担当)に就任した」というフェイクニュースを発信しました。この提案は我々広報からですが、社長が受け入れてくれるのか正直半信半疑の部分もありました。しかし、社長からは「暗いニュースばかりだからこそ、少しでもクスッと笑ってもらえるなら」と了承を得ることができました。用具を運んだり、スパイクを磨いたりといった映像を撮りましたが、社長もノリノリで撮影に応じてくれましたね(笑)


――反応はどうでしたか?

意見が分かれることは覚悟の上でしたが、地元メディアにも取り上げていただいたり、概ね意を汲んでくれたと感じています。


――コロナの影響で取り巻く環境も大きく変わったと思いますが、エスパルスはどのような工夫をしてきましたか?

チーム活動が中断となり、ファンにとっては試合も練習も見ることができないため、我々にとってファン離れが大きな懸念でした。そこで選手たちにプライベートの一コマや「手洗い動画」など企画ものに協力してもらったり、積極的な発信を意識してきました。

活動が再開してからも、未だ練習を公開することはできていませんが、選手のキャラクターを垣間見ることができるオフショットや一般的に立ち入ることが出来ない場所や場面を映像で提供していくことに注力しました。今までのエスパルスではできなかったことに着手できている手応えはあります。


――このような活動をすることに、否定的な意見もあるかと思われます。

我々は勝負の世界で運営しているプロスポーツクラブである以上、勝たなくてはいけない、強くなくてはいけないことは大事なことです。ただ、一方ではエンターテインメントの世界であり、いかにファンの皆さんに喜んでもらえるか、いかにファンを増やしていくかということも同じくらい大事なことだと思います。

今季、エスパルスは思うように勝てない状況が続いている状況から、もちろん厳しい意見もあります。成績に関しては大変申し訳ない気持ちでいっぱいですが、だからと言って広報としては、ファンに向けた発信を止めるわけにはいきません。試合や練習の映像や写真を発信していくだけではつまらない。もっと選手やクラブの魅力を伝えていきたいと思っています。それを理解して協力してくれている選手たちには本当に感謝しています。


――こうした情報を提供する際に、どのようなことを意識していますか?

常々、広報のスタッフたちには「自分たちが面白いと思うことは、きっとファンの人たちも面白いと思ってくれるはず」と話しています。社長からもトライ&エラーを繰り返してチャレンジしていこうと背中を押されています。

良い例がNPBです。80年以上の歴史ある野球界が大きな変革にチャレンジしてきました。それぞれの球団がそれまでの常識を覆す取り組みやアプローチを行い、またそれに追随する球団も生まれて来て、どんどん新しいものを取り入れているイメージがあります。社長も野球界からの転身ということもありますが、私自身も参考にさせてもらっていることは少なくありません。


――最後に、今後の展望についてお聞かせください。

クラブのこれまでの常識、あるいはもっと広い意味でサッカー界での常識は我々が作ってきたものです。しかし、殻に収まっているだけでは面白くない。我々自身で打ち破っていかなくては、いつまでたっても、どんどん変化していくファン・サポーターのニーズに追い付くことはできないでしょう。これからも既成概念に捉われず、様々なサービスの提供にチャレンジしていきたいと思います。


今後、エスパルスが次にどのような手を繰り出してくるのか。目が離せない。


iSM編集部
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著者プロフィール

チーム名の「S-PULSE」は、「サッカー・清水・静岡」の頭文字Sと、サッカーを愛する県民、市民の胸の高鳴りとスピリットを表現するため、英語で「心臓の鼓動」を意味するPULSEを組み合わせて名付けられました。 1993年に「オリジナル10」の一つとしてJリーグ開幕を迎え、クラブの歴史がスタートしました。 こちらのサイトではチームや試合、イベントなど様々な情報をお届けいたします

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