デロイト トーマツ グループがスポーツビジネス関連情報をお届けします

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【© 2020 Deloitte Tohmatsu Financial Advisory LLC】

ビジネスの観点からスポーツ情報を発信する「デロイト トーマツ グループ公式情報」がスタートします。今後スポーツビジネスに関する調査やレポートに関する記事、コラムはもちろん、それとは一味違った情報も含め、スポーツナビ読者の皆さんにお届けします。

そもそもデロイト トーマツ グループは監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務等を様々な企業・団体・組織に提供している日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループです。

スポーツ領域においても他の産業分野で培った知見や経験を背景にクラブチームや競技団体、地方自治体ほかスポーツに関わる企業に向けて事業支援・産業化促進・地方創生・文化振興といった側面でサービスを提供しています。これらのサービスを提供するスポーツビジネスグループの活動実績にはJFA Youth & Development Programmeやイノベーションリーダーズ育成プログラム『埼玉 Sports Start-up(SSS)』の支援、FC今治との様々な取り組みのほか、大学スポーツのUNIVASの創設支援、様々なスポーツでの新リーグ設立支援などがあります。

中でも、皆様によくご認識いただいているのが、毎年秋に発表している「Jリーグ マネジメントカップ(JMC)」です。JMCは、Jリーグから公表されている各クラブの財務情報を中心に、ビジネスマネジメント(BM)において最も重要なテーマであるマーケティング・経営効率・経営戦略・財務状況の4つの視点からBMレベルを総合評価しランキングとして発表するもので、2014年から毎年発行しています。勝敗結果に基づく順位とは別に経営視点で分析したレポートとして注目いただいています。

JMCは間もなく最新の2019年版を発行予定ですが、先立ってJMCの4つの視点について解説します。

Jリーグマネジメントカップ(JMC)2019 4つの視点

ビジネスマネジメント(BM)における最も重要なテーマである「マーケティング/経営効率/経営戦略/財務状況」の4つの視点を、実際のリーグになぞらえて「ステージ」と呼んでいます。また、評価対象はJ1のみならず、J2、J3も含めた全てのJクラブとなっています。
評価方法は、ステージごとにデロイト トーマツが設定したKPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)にそれぞれにディビジョン別に順位付けを行い、その順位に応じたビジネスマネジメントポイント(BMポイント)を付与していきます。
例えば、あるKPIについてJ1の1位であった場合は18BMポイントの獲得となります。同様にJ2の1位は22BMポイント、J3の1位は15BMポイントとなります※。そして順位が1下がるごとに1ポイントずつ減らしたBMポイントを付与するルールとしています。ランキングをディビジョン別にしている理由は、ディビジョンによって試合数や勝点という環境が異なるためです。
このような評価方法に基づき、最終的に4つのステージの累計BMポイントが最も多かったクラブがCup Winnerとなります。
なお、BMポイントが同率の場合、1stステージの順位が上のクラブが上位クラブとなります。(以下、2ndステージ、3rdステージ、4thステージの順に同様の判定をします。)
※ U23のチームはランキング対象外としています。

Jリーグ マネジメントカップ(JMC)2019 4つの視点 【© 2020. For information, contact Deloitte Tohmatsu Financial Advisory LLC.】

1stステージ:マーケティング
ここでは主に集客に着目し、いかに「満員のスタジアム」の実現に向けた取り組みが成果を挙げているか、という点を評価します。マーケティングの視点は一般のビジネスでは基本的な視点の一つですが、Jリーグの各クラブにおける取り組みは、まだまだ多くのポテンシャルを秘めている分野といえます。近年はクラブだけでなく、リーグ自体もCRM(Customer Relationship Management)への取り組みの重要性を認識しており、クラブ経営のパフォーマンスを図る代表的な視点となるはずです。
具体的なKPIは以下となります。
●平均入場者数  ●スタジアム集客率 ●新規観戦者割合  ●客単価


2ndステージ:経営効率
ここでは主に勝点と経営成績に着目し、いかに効率的に「勝点」を獲得したか、というクラブパフォーマンスを評価します。この視点はフィールドマネジメント(FM)とビジネスマネジメント(BM)の連携を示すものであり、クラブ経営の両輪がバランス良く回っているかどうかを考察するうえで有意義な視点です。各クラブがこの分野への意識をより高めていくことで、FMとBMの正のスパイラルがより多く生み出されることになるはずです。
具体的なKPIは以下となります。
●勝点1あたりチーム人件費 ●勝点1あたり入場料収入


3rdステージ:経営戦略
ここでは主に経営資源に着目し、限られた経営資源をどこに投入して「利益」を獲得したか、というクラブパフォーマンスを評価します。スポーツ興行における主な「利益」は、スポンサー収入、入場料収入、放映権収入、グッズ関連収入を源泉とするものが中心となります。それらの収入を獲得するために、カネだけでなくヒトや情報といった経営資源をどこに投下したかを分析することで、クラブのビジネスへの取り組み方針が浮かび上がってきます。
具体的なKPIは以下となります。
●売上高・チーム人件費率 ●SNSフォロワー数* ●SNSフォロワー数増減率
●グッズ関連利益額
* Facebook、Twitter、Instagramの合計


4thステージ:財務状況
ここでは主に財政状態に着目し、「ビジネス規模や安定性、成長性」に関するクラブパフォーマンスを評価します。財務情報は会計というツールを通し、あらゆる業種の法人単位のパフォーマンスを可視化することのできる重要な情報です。これらの情報を積極的に活用することで、ビジネスのヒントが見えてきます。
具体的なKPIは以下となります。
●売上高 ●売上高成長率 ●自己資本比率

以上の4つの視点から各クラブのビジネスマネジメント(BM)への取り組みを可視化しますが、クラブの優劣を評価することが狙いではなく、あくまでも共通のモノサシで比較・検討することが狙いです。普段は見えにくい各クラブのBMをクラブ間で比較することで、ビジネスにおける取り組みにも注目していただければと思います。


最後になりますが、JMC2019では、データとして公開されている情報のみを使って分析しているため、活動は実施していてもデータとして公開されていない情報は基本的に分析の範囲に含まれていません。したがって、現状では、例えば各クラブが実施しているホームタウン活動等の成果が、本ランキングに反映されにくい状況となっている点にご留意ください。
今後リーグもしくは各クラブが、積極的にデータを含めた情報開示を促進していくことで、よりクラブの経営実態が正確に把握でき、同時にそれらから学べる環境になっていくことを期待しています。

さて、次回からは最新版の「Jリーグ マネジメントカップ 2019」について解説します。お楽しみに!
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著者プロフィール

デロイト トーマツ グループは、財務会計、戦略、マーケティング、業務改革など、あらゆる分野のプロフェッショナルを擁し、スポーツビジネス領域におけるグローバルでの豊富な知見を活かしながら、全面的に事業支援を行う体制を整えています。またコンサルティング事業の他、国内外のスポーツ関連メディアへの記事寄稿などを通し、スポーツ業界全体への貢献も積極的に行っています。

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