卓球界、手ごたえつかんだ半年ぶりの始動 張本「不安が半分以上解消された」

平野貴也

卓球日本代表やTリーグのトップ選手が集結。半年間、試合がなかった選手にとって良い実戦の機会となった 【Tリーグオフィシャル】

 卓球の「2020 JAPAN オールスタードリームマッチ」が14日、東京・大田区総合体育館で行われ、コロナ禍で公式戦の機会を失っている日本のトップ選手が、男子対女子など新鮮な対戦カードを楽しみながら華麗な技を披露しあった。

 男子では、2021年に延期された東京五輪の代表に内定している張本智和(木下グループ)、丹羽孝希(スヴェンソン)も出場。当初は、水谷隼(木下グループ)も出場を予定し、五輪の団体戦メンバーとなる3選手のそろい踏みとなるはずだったが、水谷は体調不良により急きょ当日に欠場となった。張本、丹羽にとっては、11月に再開する国際大会や国内のTリーグまで公式戦がない中、実戦感覚を味わう貴重な機会だった。

張本、自粛期間に強化したバックハンドで2連勝

来年の東京五輪でエースとしての活躍が期待される張本は2連勝。大会を大いに盛り上げた 【岡本範和】

 イベントは、独特の雰囲気で行われた。スタンドに、まばらな人影。見下ろすフロアはがらんとしており、中央に卓球台が一つ。新型コロナウイルスのまん延防止策として、無観客で行ったためだ。

 最初に名前をコールされたTリーグ選抜の神巧也(T.T彩たま)が手を挙げるときに、ぎこちなかったのも無理はない。イベントは、Tリーグが主催する、オールスター選手によるエキシビションマッチ。第1部は「日本代表選抜vs.リーグ選抜」(11点先取デュースなしの1ゲームマッチ)、第2部は「日本男子代表vs.日本女子代表」という構成。公式戦ではないが、テレビ放送に加え、YouTubeなどでライブ配信。独自のルールを採用するなど、普段の公式戦にない刺激を加えた舞台だった。

 コロナ禍で大会が中止や延期になった春先から半年が経ち、実戦から離れていた選手が、どんなパフォーマンスを見せてくれるのかが1つのポイントだったが、東京五輪の男子代表2人は、しっかりと力を見せた。

 張本は、世界ランク4位の実力者。東京五輪では個人戦のメダルはもちろん、団体戦のエースとしても大きな期待を受ける。第1部の第1試合で神に11-4、第7試合で戸上隼輔(琉球アスティーダ)を11-10で破って2連勝を飾った。

 第1試合は、得点のほとんどが、台上からのバックハンド。ブロック、強打と使い分けて相手を翻弄(ほんろう)した。張本自身が手ごたえを示したのは、終盤の2点。10点目は、サーブを相手がいるサイドへ打ち込んでおいて、返球を逆サイドに突いたコンビネーション。11点目は、中央から少し角度を変えて、相手のフォア側へきれいに打ち抜いてマッチポイントを制した。コロナ禍でのチーム活動自粛期間にバックハンドを強化した張本は「ただ、ミスをしないようにラリーをつなごうと思っていた。バックハンドを強化していたので、最後の2本などは良い球を打てた」と振り返った。球の強度をコントロールし、一発目で射抜いたり、相手の返球を制限したりと、使い分けられたのが収穫だという。

 対抗戦が2-4の結果で後がない状況で回ってきた第7試合は、大きなプレッシャーを背負う中、そこを突こうと思い切って攻め込んできた戸上に押され、4-8と追い込まれた。しかし、落ち着いてラリーをつないでばん回。じわじわと点差を詰め、最後は10-10で1点勝負となったが、張本のサーブを強打で狙った戸上がミス。途中からミスを減らした張本の勝利となった。水谷の欠場により、急きょ2試合に出場したが、きっちりと2勝。「半年ぶりの試合で、終始緊張しっぱなしだった。ずっと練習だと、相手は全部、全力で打って来るけど、試合では違う。改めて試合で通用するボールを見られて、半年の不安が半分以上解消された」と笑顔を見せた。

丹羽は石川佳純ら相手に見せ場を作った

丹羽は女子日本代表とのスペシャルマッチでは、石川や早田らを相手に冷静なプレーで得点を重ねた 【岡本範和】

 一方、丹羽は、第5試合で及川瑞基(木下マイスター東京)を11-10で下した。試合中盤の連続失点で苦しみ接戦となったが、9-10のピンチから逆転。最後はストレートのサーブで相手の意表を突いて試合巧者ぶりを見せた。

 また、丹羽は第2部でも力を示した。第2部の日本男子代表vs.日本女子代表は、失点すると選手交代という独自ルールを採用。女子チームに4点のハンディを与えて行われた。1本目のゲームは、サーブはすべて女子が行うルール。張本も早田ひな(日本生命)のサーブに全くアジャストできず、女子の独特のサーブに対し、強打でミスをする男子選手が多かった。それに対して丹羽は強打を封印し、コントロール勝負を仕掛けて、逆に女子選手のミスを誘発した。4-9から登場した第1ゲームの場面では、東京五輪の女子代表である石川佳純(全農)らを相手に、5連続得点で9-9まで追い上げて見せ場を作った。

 サーブを平等にした2本目でも、丹羽は1-8から7-8まで追い上げて、逆転勝利に貢献。冷静なレシーブやコントロール抜群のドライブなど、台上のテクニックをしっかりと見せて存在感を放った丹羽は「2時間と短い時間でしたが、すごく楽しくプレーすることができた。11月から本格的に試合が始まるので、実戦感覚を積めたのは良かった。とても緊張感のある試合ができたかなと思います」とイベントを振り返った。

11月の国際試合再開でリスタート

 オールスター戦ということで終始、お祭りムードではあったが、点差の詰まった場面や、チームの勝敗がかかった場面では、緊張感もあった。公式戦同様というわけにはいかないだろうが、それでも3月のカタールオープン以来、ワールドツアーも中断し、実戦から離れていた選手にとって、貴重な経験だったことは間違いない。

 日本代表の強化本部長でもある、Tリーグの宮崎義仁理事長補佐は「国内でも全国大会をすべて(のカテゴリーで)中止にしていますが、再スタートをどこがやるのか。Tリーグからだという意気込みでいます。今回は(新型コロナウイルスの感染を)恐れながら、防止をやりながらイベントができたので、少し自信になりました」と話した。

 運営サイドはコロナ禍で仕様の変更に追われるが、それでも戦いの場はリスタートへと動き出している。今回のオールスター戦は、再び始まる戦いに刺激を与えるために設けられたイベントだ。丹羽がコメントしたとおり、11月から国内外で公式戦が再開予定。中国で男女のワールドカップ、ワールドツアーの上位成績者が出場するグランドファイナルが行われ、国内でもTリーグが開幕を迎える。日本が世界に誇る選手たちの活躍を、再び実戦で見ることが楽しみになる1日だった。
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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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