セイコーGGPが桐生らに与えた大きな自信 東京五輪の舞台でスター候補が躍動

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初戦に続き、セイコーGGPでも好調ぶりを見せた桐生。ケンブリッジとの競り合いを制し、確かな手ごたえをつかんだ 【写真は共同】

 1年後に迫った東京五輪の舞台となる「新国立競技場」で、スター候補たちが本番での飛躍を感じさせた。

 陸上のセイコーゴールデングランプリ(GGP)が23日、東京・国立競技場で行われた。男子100メートル決勝は、前日本記録保持者の桐生祥秀(日本生命)が10秒14(向かい風0.2メートル)で優勝。2016年のリオデジャネイロ五輪の4×100メートルリレーで銀メダルを獲得したケンブリッジ飛鳥(Nike)や、9秒98の自己ベストを持つ小池祐貴(住友電工)ら、豪華メンバーがそろった大会を制した。

 また、女子1500メートルでは田中希実(豊田自動織機TC)が4分5秒27で優勝。小林祐梨子が06年に樹立した記録を14年ぶりに更新した。

田中は同郷の前記録保持者に「うれしい気持ちを伝えたい」

女子1500メートルでは田中が日本記録を14年ぶりに塗り替える好走。前記録保持者である、同郷の小林祐梨子にも最高の報告をできそうだ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 今季初戦の北嶺スプリントで10秒04の好記録をマークしていた桐生は、その勢いのままに優勝まで駆け抜けた。予選では10秒09でトップ通過。決勝では「赤で行こうと思ってました」と、トレードマークとなりつつある赤いウェアに袖を通し、課題としている中盤から後半にかけての加速がスムーズに決まった。予選で10秒11と好走していた、終盤に強いケンブリッジとの競り合いを制し、「勝ち切れたことが大きな収穫になった」と、確かな手ごたえをつかんだ。

 圧巻の走りを見せたのは、20歳の田中だ。約1カ月前に行われたホクレン・ディスタンスチャレンジでは、3000メートルで8分41秒35のタイムをたたき出し、福士加代子の持つ日本記録を18年ぶりに更新したばかり。この日の1500メートルでも、序盤から先頭に立ってレースを引っ張ると、ラスト1周では「無我夢中でレースの記憶がない」と語るほどに集中力を高めてスパート。14年間破られていなかった日本記録を塗り替え、「日本記録を出す練習はしてきたんですが、本当に出せて安心しています」と、満足感を見せた。

 前記録保持者の小林は、田中と同じ兵庫県小野市出身。「(レース前の期間に)祐梨子さんとお話する機会もあって、より記録を出したい気持ちが高まっていた。うれしい気持ちを伝えたいと思います」と、同郷の先輩に最高の報告をするつもりだ。

本番での盛り上がりを感じさせた、「新国立」での一戦

モンド社作成のタータン、「スーパーX」の上を駆け抜けた選手たち。東京五輪本番と同じ高速トラックで走れたこと自体が収穫で、この“ホームアドバンテージ”を生かしたいところだ 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 今回のセイコーGGPは、昨年12月に新国立競技場が竣工されて以来、初めて行われた陸上の大会だ。来年の五輪会場として作られたこの競技場のトラックは、過去にも数多くの五輪競技場トラックを手がけたモンド社(イタリア)が作成した。

 一般的なトラックはポリウレタンを使用しているのに対し、新国立ではタータン(走路)に「スーパーX」と呼ばれるゴム製の素材を使用している。かつて同素材を使用したトラックから数多くの世界記録が誕生しているように、反発力が高く、好記録が生まれやすい。五輪1年前に、本番の舞台となる高速トラックでのレースを経験できたこと自体、大きな収穫となるだろう。桐生も「2本とも上手いこと走ることができました」と、顔をほころばせた。

 新国立競技場のもう一つの特徴となるのが収容人数。旧国立競技場と比較すると、実に1万4000人も多い6万8000人のキャパシティを誇る。トラックの脇から天井のそばに至るまで、壁のように観客席がつらなっており、ファンの歓声は嵐のように選手たちが戦うトラックへ降り注ぐだろう。この日は新型コロナウイルス感染防止のため、無観客で試合が行われたが、「ここに人が入って盛り上がっている様子を想像したら、もっと楽しくなりますね」(桐生)と、声援が選手たちを後押しする力となることは間違いない。

 1年後の東京五輪で、アスリートたちが大勢のファンの前で最大限のパフォーマンスを発揮する日が訪れるのを心待ちにしたい。

(取材・文:守田力/スポーツナビ)
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