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欧州チャンピオンズリーグ2019-20
戸田和幸×下田恒幸アナ CL決勝展望
バイエルンがのみ込むか、パリの対策は?
パリ・サンジェルマンは初優勝、バイエルンは7シーズンぶり6度目の欧州制覇を狙う
パリ・サンジェルマンは初優勝、バイエルンは7シーズンぶり6度目の欧州制覇を狙う【Getty Images】

 2019-20シーズンを締めくくるラストマッチ、欧州チャンピオンズリーグ決勝はパリ・サンジェルマンvs.バイエルン・ミュンヘンの好カードとなった。パリは初優勝、バイエルンは7シーズンぶり6度目の欧州制覇を狙う。新型コロナウイルス感染拡大の影響から準々決勝以降は変則開催となったが、ファイナルはこれまで通り中立地での一発勝負と変わらない。屈指のタレントを擁し、短期決戦を制してきた勢いも同じ。実力伯仲の戦いは必至だ。そのファイナルをDAZNで解説・実況する戸田和幸さん、下田恒幸アナウンサーに両チームの特徴、勝負を分けるポイントを聞いた。

決勝にふさわしい最高のカード

――チャンピオンズリーグ(CL)決勝のカードはパリ・サンジェルマン対バイエルン・ミュンヘンになりました。どんな感想をお持ちでしょうか?


戸田 ここまでたどり着けそうなチームは他にもあったと思うんですけど、ここに到達するにふさわしい2チームだと思います。これまでのパフォーマンスを見ると、すごく説得力がありますよね。


 今回はレギュレーションが少し特殊で、ノックアウト方式の集中開催でしたから、ワールドカップ(W杯)に近いんですよ。この大会だけに全エネルギーを注いで戦うトップレベルの選手たちを目の当たりにして、「とてつもないな」と僕は感じました。「これを見せられたら、日本はどうすればいいんだ」と。どの試合もレベルがすごく高かったです。でも、ファイナルにふさわしい最高のカードになったな、というのが個人的な感想です。


下田 バイエルンに関しては、(2019年11月にニコ・コバチからハンス=ディーター・フリックに)監督が代わって以降のパフォーマンスのレベルが高かったので、決勝進出は大いにあるだろうと。「やはり来たか」という印象です。バイエルンがいたブロックには、(マンチェスター・)シティがいて、(レアル・)マドリーがいて、ユーベ(ユベントス)がいて、バルサ(バルセロナ)もいた。名のあるクラブがたくさん入ったブロックだったけれど、バイエルンが勝ち上がってきたことにフロック感は全くなく、ねじ伏せて勝ってきたなという印象です。


 一方、逆側のブロックはどこが出てきたとしても渋い。その中で、パリは圧倒的にタレントレベルが高く、華のあるチームですが、なにせ1970年創設の新興クラブなので、CLにおける経験値が高くない。果たして「どうかな」と思っていましたが、それぞれのポジションに秀でた選手がそろっているので、勝ち上がってくる可能性が最も高かった。そういう点ではこちらも力通りに、ある意味でねじ伏せて。まあ、(準々決勝の)アタランタ戦は危なかったけれども(笑)、順当と言えば順当。トーナメント表を見たとき、予想できたカードだったと思います。

バイエルンは相手をねじ伏せに行く感じ

バイエルンは全員がハードワークし、猛然とゴールを目指す。相手をねじ伏せるような戦いが特徴だ
バイエルンは全員がハードワークし、猛然とゴールを目指す。相手をねじ伏せるような戦いが特徴だ【Getty Images】

――あらためて、両チームの強さや特徴、魅力はどんなところに感じますか?


戸田 今ちょうどDAZNでプレビューを撮り終えたところなので、「それを見てください」と言いたいところなんですけれども(笑)。どちらもボールを保持できますが、バイエルンの方が常にゴールを目指している。成功率だけでなく、常にボールを出せる選手が各ポジションにいて、後ろの選手たちが素晴らしいんですけど、バイエルンはどんどん背後のスペースを取りに行く。

 ボールを保持するところから始まって、きちんとした戦術的な狙いのもと、フリーの選手をしっかり作って、センターバックか、チアゴ(・アルカンタラ)か、というところから敵陣に入っていく。そのとき、常に近距離のパス交換ではなく、3人目のアクションや長いボールを織り交ぜていくんです。ただ、(準々決勝の)バルサ戦や(準決勝の)リヨン戦を思い出していただきたいんですけど、意外と攻撃が途中でストップするんですね。でも、「攻守の切り替え」という言い方では正しくないくらい当たり前に、猛然と向かって行ってボールを奪い返し、ゴールを目指して点を取ってしまう。これは相当なレベルだと思いました。


下田 バイエルンは本当によく走るよね。


戸田 あのレベルの選手たちが、ボールを持っていようがいまいが、ゴールに向かうために走るんですよね。長い距離を走って飛び出すランニングもそうですし、ボールを奪い返しに行くランニングもそう。その連続性があればあるほど、例えば、バルサ戦のように相手をどんどんのみ込んでいく。


 普通、放っておいたら、うまい選手たちがボールを受けたり、プレッシャーをかけたりするためにドンドン走るなんてことは、ないと思うんですよ。そういう意味では、監督が代わってから、チームに一本バシンと筋が通ったような感じがします。その中で、フリックになってから再び起用され、まばゆいばかりの輝きを放っているトーマス・ミュラーのような選手もいる。


 今のバイエルンは個々の能力を無理なく、存分に発揮できている。細やかさだけでなく、大胆さや献身性、アスリート能力も含めてなんですけど、すべてを躍動させているのが今のバイエルン。だから、どんな局面でもゲームを作れるし、コントロールするというより、相手を常にねじ伏せに行く感じです。


下田 これは推測なんだけど、フリックはヨアヒム・レーヴのもとで8年間、ドイツ代表のコーチをしていて、17年まで代表に関与していたから、ミュラーや(レオン・)ゴレツカ、(ヨシュア・)キミッヒといった代表選手たちを間近で見ていたわけです。スポーツって人が人を動かすでしょう。だから、誰が言うかによって、選手は変わると思うんですよ。


 そういう点で言うと、フリックは代表に関わっていた時期に代表選手たちの信頼をしっかりつかんでいたんじゃないかなと。実際、レーヴがポゼッションに傾き過ぎそうになったとき、「カウンターも大事にした方がいい」とフリックは進言していたらしいですし。監督の隣に違う目があって、それがプラスに作用してチームが作られていくのを感じていたから、選手たちはバイエルンの監督になったフリックを最初から信頼していたんじゃないかな、と推測しています。

パリは大一番で監督が何か策を施すか

パリ・サンジェルマンのトゥヘル監督は奇策を打ってくるのか。指揮官の選手起用、采配が鍵を握る
パリ・サンジェルマンのトゥヘル監督は奇策を打ってくるのか。指揮官の選手起用、采配が鍵を握る【Getty Images】

――一方、パリはどうでしょう?


戸田 パリはもう少し、ボールを保持するところを大切にしているように感じます。でも、相手をしっかり観察していて対応力があるということは、(準決勝の)ライプツィヒ戦ですごく感じました。アタランタ戦はかなり苦労しましたけど、チャンスクリエートと決定機の数は多かったんです。相手がマン・ツー・マンで来たら、それに応じたパスルートを作って、ネイマールがワンタッチフリックでそのまま飛び出すとか、レイオフして反転してスプリットするとか。どうしてもボールを持っているシーンが目立つんですけど、実はネイマールは相手にとって嫌なことを常に考えてやっています。


 そうした選手に、最適なタイミングでボールを渡すために、基本的にはボールを保持する。そのタイミングは基本的に間違えない。だけど、ロングカウンターも打てる。そして、プレッシングがすごい。


下田 前線の3人は本当に強烈だよね。


戸田 一切のエゴを感じない。勝つために必要なことを、ネイマールが率先してやっている。トーマス・トゥヘル(監督)がどんなマネジメントをしているのかは分からないですけど、過去に率いたクラブを見れば、いろんなことをやりたがるタイプのはずなんですよ。でも、今のパリでは「え、この試合で、この配置?」といったことがない。バランスがすごく取れていると思います。


 あと、下田さんもおっしゃっていたように、各ポジションのレベルも高い。その中で僕はマルキーニョスが肝だと思っているんですけど、彼を中心に後ろは盤石。バイエルンのようにハイラインにしてリスクを冒し過ぎることもせず、トランジションの部分もしっかりマネジメントできていて、とにかく速い。


 その速さの種類は、バイエルンとは少し違うんです。バイエルンはどちらかと言うと、サイドアタックが多い。一方、パリは前の選手が速くて、そのままゴールに向かってビュンと走る。しかも、プレーのクオリティーと連係のレベルがすごく高い。なおかつ、(アンヘル・)ディ・マリアのように変化をつけられる選手もいる。だから、これまで通りのプレーができたら、パリは相当強いと思います。そこで、ひとつ心配なのが、決勝になっていきなり3バックにしなければいいなということ(笑)。


下田 確かにトゥヘルは大一番で何か策を施そうとする傾向がある(笑)。


戸田 (ラウンド16の)ドルトムントとのファーストレグでも3バックをやって、敗れているんですよ。だから、(ジョゼ・)モウリーニョが以前、話していた言葉を思い出します。「大事な試合こそ、やってきたことをそのままやった方がいい」。パリの選手たちだったら、監督がいじらなくても十分戦えると思うんですけれどね。


下田 以前(15-16シーズン)、トゥヘルがドルトムントを率いていた頃、開幕からリーグ7戦無敗の状態でバイエルンと対戦することになったんですよ。そこまでのドルトムントは支配して、押し込んで、斜めの揺さぶりからいかようにも崩して点を取って、勝っていた。だから、バイエルン相手にどれだけやれるか楽しみにしていたのですが、その試合で突然、今までやったことのないひし形の中盤にして、ボロ負けした。トゥヘルなりの考えがあってのことだと思うけれど、時にやり過ぎて、失敗する印象があるのも確か(笑)。


 ただ、当時のドルトムントと比べると今のパリはタレントの質が圧倒的に上なので、そこも含みでしっかり戦えば、相当スリリングな試合になると思います。タレントの質の高さと、それがレギュラー+αまでそろっている点で見ると、この2チームは今、ヨーロッパのトップ5に入るでしょう、おそらく。


 今のバルサは選手層が厚いわけではないので、この2チームに対抗できるのは、マドリー、リバプールくらいなのかな。そういう点では、トゥヘルが過去に大一番でいろいろと策を施そうとしてきた前例も踏まえ、どんな入り方をするのかというのは、ひとつのポイントになるんじゃないかと思います。

飯尾篤史
飯尾篤史

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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