久々の実戦で光った10代クライマーの躍進 いざ五輪へ、コロナ禍と係争の中で再始動
2度の延期も…公式戦再開に選手も感謝
約5カ月半ぶりの公式戦となったリードジャパンカップは、ともに10代の西田秀聖(右)と森秋彩が制した 【写真:松尾/アフロスポーツ】
当初は3月に実施予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言を受けて2度の延期を余儀なくされていた。約5カ月半ぶりの公式戦は、無観客で行う格好になったが、ようやく実施にこぎ着けられた。西田は場内インタビューで「この大会を開催して下さったスタッフの皆さん、ありがとうございます」と感謝を述べた。森は、インターネット中継を見守ったファンに向けて「今日は直接声援を聞くことができませんでしたが、以前のように観戦できるようになったら、またたくさん応援してください」とメッセージを投げかけた。
リードは、東京五輪で行われる「コンバインド」の3種目のうちの一つ(残り2種目は、スピードとボルダリング)。6分の制限時間で12メートル以上の壁をどこまで登れるかを競うもの(今大会の男女決勝は最大傾斜150度、15メートルの壁で行われた)。日本が誇るクライマーが絶壁に挑んだ。
2021年に延期された東京五輪の出場権を獲得している男子の楢崎智亜(TEAM au)は終盤で落下して4位、女子の野口啓代(TEAM au)は完登したが、同じく完登した森に準決勝の成績で及ばず準優勝。ともにタイトルは逃したが上位に入り、安定した力を示した。
楢崎は「下からスムーズに行けた。最後のムーブを迷った結果、スリップして落ちてしまった。東京五輪が延期しても目標は優勝なので、そこに向かってしっかり努力したい。(五輪1年前の状態としては)結果としては順調ではないですけど、感覚としてはかなり良くなっている」と好感触を得ていた。また、8人中4人が完登した女子決勝を振り返った野口も「予選や準決勝よりも簡単な課題だった。(最後まで)登らないといけないという緊張感の中で完登できたのは、すごく良かったと思います。来年の東京五輪も同じ時期(8月3〜6日)。暑さ対策をしっかりして、暑い中でもパフォーマンスを落とさずに、集中したトライができるような練習をしたい」と1年後を見据えて、一定の手応えを示した。
今後は模擬大会等の開催も検討
久々の実戦も2位と安定した力を示した野口啓代 【平野貴也】
コロナ禍で参加できる大会が極端に減っており、日本代表選手のコンディションやパフォーマンスを管理していくためには、サポートも必要だ。日本代表の安井博志ヘッドコーチは「2月以降は大会がなく、選手はトレーニングに苦労したと思う。結果が良くても悪くても、やってきたことの確認が大会でできたことは、ありがたい。リードは、練習量と弱い部分、特に持久力がハッキリ分かる。それぞれに、今後のトレーニングプランを練り直してもらいたい。大会があればピーキングがぐっと上がる時期だが、それを選手が自分たちだけでするのは難しい。トレーニングは(コンディションを)上げる時期、下げる時期がある。どのタイミングで上げるかというのは、今後のイベントや大会によって決まるので、チームとして刺激が入るイベントなども考えたい」と模擬大会等の開催を検討中であることを示唆した。