模索続くソフトボール選手強化の現在地 五輪で上野由岐子の全試合登板構想も
強化プランは「新たに作り直し」
20名に絞った代表選手候補。宇津木監督(写真中央)は選手に勝つための生活をしていくよう、伝えている 【写真提供:(公財)日本ソフトボール協会】
「3月24日に東京五輪の延期が決まったことで、4月3日に予定していたソフトボール日本代表の発表も中止となりました。最終候補は20名おり、五輪代表は15名となります。協会も緊急事態宣言中は完全に動きがストップしていましたが、宇津木ヘッドと6月上旬にミーティングを行い、現時点では20名をそのままスライドして強化していくことを確認しました」
そのように語ったのは同協会の矢端信介・強化副本部長兼チームリーダーだ。本大会の1年延期は協会にとっても大打撃だった。
「もともと東京五輪を目指した強化プランでしたから、新たに作り直しです。現在のところ、日本リーグ終了後の11月から合宿が再開できるように施設は確保しました。予算についても各スポンサー様に改めてお願いをしているところです。また、今季の活動がほとんど行えない分をどれほど回せるかなど調整をしています」
ただ、宇津木監督も矢端強化副本部長も口を合わせるのが海外代表チームとのテストマッチを行える見通しが立たないことだ。
「仮にこの秋の日本リーグなどで最終候補20名のほかに新たに突出した選手が出てきたとします。しかし、我々は日本リーグを評価しないわけではないですが、海外を相手に戦う試合でどのようなパフォーマンスを見せられるかを重要視しています。20名はそれを経て残った選手たちです。今からアピールする選手は、残念ながら海外との試合がほとんどない中なので、力を測ることができないのです」(矢端)
年が明けて2021年の初頭には海外ナショナルチームとの試合を組む可能性も出てきているが、すべてはその時の世の中の情勢次第だという。ただ、協会は新たな強化プランとして男子ソフトボールチームのサポートも想定している。矢端強化副本部長によれば「さすがに男子のトップ代表とはやれないが、高校生の強豪チームとの試合や練習は十分計画の中に入れ込むことを予定している」という。
「勝つための生活をやっていけばいい」
世界で勝つ。最大のライバル国のアメリカに勝つ。宇津木監督は活動再開までの時間も無駄にしない。データや映像を日々隅々まで洗いなおしている。敵国だけでなく、日本代表選手一人一人への理解度もより深めている。
「久しぶりに会ってもパッと見た時に変化に気づける。要は、勝つための生活をやっていけばいいんです」
上野がいかに万全でマウンドに立ち、そして隙のない守備と打撃で試合を進めるためにどんな準備が必要なのか常に思案している。また、宇津木監督は常々、「人間力」が最も大切だと説いてきた。東京五輪という大舞台に、1年延期という前例のない中での戦いに挑む女子ソフトボール日本代表。彼女たちは心の強さで、すべてを乗り越えて金メダルをつかみに行く。