10年以上前に作られた“田澤ルール” 上原氏も疑問、時代に沿う新制度の必要性

ベースボール・タイムズ

田澤「やれる場所がない中でオファーをもらったことは率直に嬉しかった」 【写真は共同】

 MLBのボストン・レッドソックスなどで活躍した田澤純一が、ルートインBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズと契約を結んだ。3月にシンシナティ・レッズとのマイナー契約を解除されていた34歳は、入団会見で「やれる場所がない中でオファーをもらったことは率直に嬉しかった。できる限り、このチームに貢献できるように、また日本の皆さんに応援してもらえるように頑張ります」と意気込みを話した。

 この田澤の国内球界復帰に合わせ、レッドソックス時代に同僚だった上原浩治氏も自身のツイッターを更新。田澤へのエールと併せて、現在のNPBの制度に対して疑問も投げかけた。



 田澤はメジャーでの9年間で、主に中継ぎとして388試合に登板し、21勝26敗4セーブ、89ホールドを記録。レッドソックス時代の2013年には自己最多の71試合に登板し、上原とともにブルペンの軸としてチームのワールドシリーズ制覇に貢献した。その後、17年にマイアミ・マーリンズに移籍して以降は、故障もあってメジャーとマイナーを行き来するシーズンが続いた。19年は自身初めてメジャー登板なしで終わっていたが、メジャーでの実績を考えれば、獲得に動くNPB球団があってもおかしくないはずだ。しかし、その足かせとなったのが、上原のツイートにある“田澤ルール”の存在だ。

改定を経て複雑化を極めるポスティングシステム

現在、日本人選手が海外でのプレーを希望する場合は、FA(フリーエージェント)による移籍の他に、ポスティングシステムという制度がある 【Getty Images】

 現在、日本人選手が海外でのプレーを希望する場合は、FA(フリーエージェント)による移籍の他に、ポスティングシステムという制度がある。FAは、プレー年数など条件を満たせば全選手に与えられる権利だが、ポスティングはFA取得前の選手がメジャー移籍を希望した際に、所属球団に認められることで初めて行うことができるものだ。ポスティングシステムは、これまで何度か改定されており、上原がツイートしたように、複雑で分かりにくいものになっている。

 ポスティング制度は、NPB機構とMLB機構の協定(「日米間選手契約に関する協定」)に基づき、98年に導入された。選手の保有権を持つNPB球団が、当該選手との保有権をMLB球団に譲渡する形をとり、申請は選手個人ではなく、所属する球団がNPBを通してMLB側に行う。当初はMLB球団が移籍の独占交渉権を入札で獲得する形で、最高額で入札した球団のみに30日間の独占交渉権が与えられ、選手は他のMLB球団と交渉することができなかった。

 この制度ではイチローや松坂大輔など、13選手がMLBへの移籍を果たした。しかし、11年オフにテキサス・レンジャーズに移籍したダルビッシュ有の落札額が、過去最高となる5170万ドル(約39億8000万円)と高騰するなど、制度を問題視したMLBが2012年限りで協約を破棄。13年からは新制度として、入札形式は取らず、選手の保有権を譲る際に生じる譲渡金を最高2000万ドルとし、その範囲内で移籍選手が所属するNPB球団が金額を設定することになった。この形式では田中将大、前田健太、大谷翔平、牧田和久の4人が移籍している。

 18年にはさらに制度が変更され、最高2000万ドルの譲渡金を当該選手の契約内容の総額によって変動する仕組みとした。この形では菊池雄星、筒香嘉智、山口俊が移籍を果たしているが、タンパベイ・レイズに移籍した筒香が年俸2年総額1200万ドル(約13億1100万円)、所属球団だったDeNAには譲渡金として240万ドル(約2億6200万円)と、1人の選手が移籍する際に動く金額は、一時に比べると相当安く抑えられるようになった。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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