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コロナ禍で自問自答した「自分の価値」
日比野菜緒を支えたコーチやファンの存在
日比野「この期間だからといって、トレーニングで特に変えていることはないです」
日比野「この期間だからといって、トレーニングで特に変えていることはないです」【スポーツナビ】

 ツアーが中断されていたこの3カ月間は、練習環境が限られるながらも、長期的視野に立ち目指すテニスに取り組めた期間でもある。


 まず重視したのは、「相手より先にコートの中に入り、早いタイミングでボールを打つこと」最近は、自分やライバルたちのプレーをYouTubeなどで見比べる時間も増えたため、お手本とするトッププレーヤーと自分のプレーがどう違うかを、客観的に分析できたとも言う。


 さらには、フォアハンドのショットそのものの質の向上。もともとスピンをかけたボールの制御力に定評のある日比野だが、この数カ月間、コースを狙った反復練習で精度を上げ、さらには実戦を想定したポイントパターン練習を重ねたことにより、「プレーの幅が広がった実感はある」という。


 トレーニング面では、常に心がけている臀部(でんぶ)の強化、そしてアジリティなどのフットワーク向上にじっくり時間を割いてきた。


「この期間だからといって、トレーニングで特に変えていることはないです」と日比野は言う。


 彼女のトレーナーを長く務める横山正吾氏によれば、「やるべきことを、高い集中力でコツコツできること」こそが、彼女のアスリートとしての大きな資質だ。


 自他ともに「器用なタイプではない」と認める選手でもある。もしかしたらそれは、コート上のみならず、人生観などの考え方でも同様かもしれない。しかしだからこそ、彼女の姿には見る者に訴える力があるのだろう。


 今回の「BEAT COVID-19 OPEN」で、ファンに見てほしいポイントは――?


 そう問うと、彼女は少し顔をしかめ「うーん、難しいな……見ててそんなに大きく変わっていると感じないと思うので」と小さくうなる。


「わたしのプレーは派手じゃないし」


 そう謙遜しつつ、最終的に出てきた言葉は「前に入って、どんどん展開していくテニスを感じてもらえたら嬉しいです」であった。


 今大会に参戦する女子選手中、日比野はランキング最上位。


「1位であることは、考えずにはいられないですよね。誰かに言われたわけではないですが、『トップ100だし、他の選手と差があるだろう』とみんな思っているのかな〜とか、余計なことを考えてしまいます」


 ただその、蓋をしようとしても考えてしまう「余計なこと」こそが、実戦の緊張感であり、プロの世界固有のプレッシャーなのだろう。それらを感じているということは、日比野が勝負モードに入った証拠に他ならない。


 その重圧とも向かいあう日比野は、今大会の目標を次のように明言した。


「いま取り組んでいることを試合で100%やりきり、結果がついてくれば嬉しいです」


 そしてもちろん、「出るからには、目指すのは優勝」だ。

内田暁

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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