
第4回

あれから4年の歳月が流れ、ブラジルで感じた世界との差を少しでも埋められたのか、それはわからない。ただ、ロシアW杯でベスト16に進出した自分たちに自信を持っていたし、それでいて謙虚さも失わなかった。FIFAランキング3位(当時)のベルギーと対峙しても、勝てる気しかしない。僕だけじゃなく、おそらく全員がそう感じていたに違いない。
個人的には、運命のいたずらみたいなものを感じて苦笑いするしかなかった。ベルギーは初めての海外挑戦の舞台として選んだ国で、日本では感じられなかった充実感とともに、本当に何度も、とてつもなく苦しい状況や厳しい現実を突きつけられた。そんなめぐり合わせを思えば試合に対するモチベーションは最高潮に達した。
麻也の姿を見て勇気をもらった
あの国で5年も生活した僕が知っているベルギー代表の特徴を考慮すると、試合の流れの中で彼らにとってネガティブなきっかけを与えることができれば、勝機は必ず自分たちの手に転がり込んでくるはずだと思っていた。
そして、それは現実になった。
前がかりになった相手に生まれたスペースを使って奪った(原口)元気の1点目、さらに(乾)貴士のミドルシュートが決まってリードを2点に広げた瞬間、イメージどおりの展開になったことを確認して拳を握った。
「勝負はここからだ」
残り時間は十分にあった。「隙を見せればやられる」という危機感も、もちろんあった。
2-0という日本にとって有利な状況とはいえ、ベルギーには乗せれば怖い選手が揃っている。
猛反撃が始まった。アザールのクロスからのシュートは左ポストを直撃し、ルカクのニアサイドへのシュートはポストの横をすり抜けていった。
どちらも決められてもおかしくないシーンだった。でも、このふたつのピンチに失点しなかったことで、僕らは自信を深めた。
「これが入らなかったらいける。流れはまだ自分たちにある」
(吉田)麻也が、(昌子)源が、自分の目の前のギリギリのシーンで何度もクリアする。この試合の麻也ほど頼り甲斐を感じた選手はいない。
麻也とは、ずっと似たような環境で苦しみを共有し、互いに頑張ってここまで来た。センターバックとGK。ともに海外でプレーしながら、ポジション柄、得点はできないし、注目されるのはほとんど失点に絡んだ時くらいのものだ。
それでも、そんな見られ方を変えたくて必死になってここまで来た。日本人のセンターバックだって、GKだって、世界でやれる。その思いを体現する麻也の姿を目の前で見て、勇気をもらった。ただ、それでも流れを変えてしまう出来事が起こってしまった。
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