今こそ思い出したい“一丸”となる意味 2018年・西武の大逆転劇を振り返る

中島大輔

“山賊打線”の中軸の一人として活躍した森友哉 【写真は共同】

 プロ野球にはたくさんの名勝負・名場面が存在する。今回は埼玉西武が驚異の大逆転劇を見せた2018年4月18日の北海道日本ハム戦にスポットを当てたい。この試合をライター・中島大輔さんが振り返る。

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「お客さんが帰らないチームにしよう」

 埼玉西武が10年ぶりのリーグ制覇を果たした18年シーズン、4番として全試合に出場した山川穂高が「今季を象徴する試合」として優勝会見で挙げたのが、4月18日に本拠地メットライフドームで行われた一戦だった。
「日本ハムにひっくり返してサヨナラ勝ちした試合が印象的です。『お客さんが帰らないチームにしよう』とやってきたので、それをちゃんと実行できた試合だったと思います」

 辻発彦監督が就任した前年に4シーズンぶりのAクラス入りを果たした西武は18年、開幕から破竹の8連勝を飾る。原動力となったのが、強力打線だった。開幕から15試合のうち8試合で二桁安打を記録するなど打ちまくり、太平洋クラブライオンズ時代のニックネームを持ち出したファンがSNSで「山賊打線」と命名するほどの破壊力を誇った。

 球界屈指の安打製造機である秋山翔吾(現・レッズ)が1番として牽引し、2番の源田壮亮がつなぐ。浅村栄斗(現・東北楽天)、山川、森友哉の強力クリーンアップが走者を返し、長打力のある外崎修汰、栗山巧、中村剛也が6番から並び、俊足の金子侑司が9番でかき回す。物々しいネーミングがまさにふさわしい面々は、4月18日の日本ハム戦で真価を見せた。

0対8から始まった筋書きのないドラマ

7、8回にリリーフ陣が打ち込まれ、苦しい展開となった 【写真は共同】

 西武のカスティーヨ、日本ハムの高梨裕稔(現・東京ヤクルト)の両先発が持ち味を発揮した投手戦は、日本ハムが1点リードで迎えた7回、一気に様相を変える。西武は6回1失点と好投したカスティーヨを交代させると、積年の課題であるブルペン陣の不安を露呈させた。2番手以降の武隈祥太、平井克典、中塚駿太が立て続けに打たれ、7回に4点、8回に3点を奪われた。

 8回表終了時点で0対8。長いペナントレースで争われるプロ野球には「捨て試合」という言葉があるように、普通なら勝負は決した展開だ。
 だが“山賊”たちは誰一人あきらめず、この日メットライフドームに訪れた1万2975人のファンは、文字通り筋書きのないドラマを目の当たりにする。

 日本ハムの2番手として左腕の上原健太が上がると、9番・金子は外寄りの速球を引っ張りレフト前安打で塁に出る。1番・秋山は外角の速球に対して逆らわず、レフト前へ弾き返した。続く源田のサードゴロで1死一、三塁となると、日本ハムは右の田中豊樹にスイッチ。だが、これが誤算だった。田中は二つの押し出しを含む3者連続四球で2点を献上する。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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