あらゆる涙が交錯した「10・2」の死闘 “常勝”ソフトバンクの原点
ソフトバンクとオリックスの「10・2」決戦は死闘となった 【写真は共同】
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忘れられない運命の決戦
朝からずっとドキドキして、でも不安でハラハラして、夜遅くには大興奮してとにかく仕事をしまくって、そのあとは燃え尽きたような言葉に表せない疲れを感じた一日は他に経験がない。
その運命の決戦の前に、まずは時代背景をおさらいだ。
前年のソフトバンクは秋山幸二監督が就任して初めてBクラスとなる4位に沈んでいた。73勝69敗2分と貯金を作っていたので低迷とまではいかなかったが、チームの課題が浮き彫りになったシーズンだった。11年にリーグ連覇と日本一を果たした時のメンバーとは大きく入れ替わっていた。和田毅や杉内俊哉がいない投手陣。攝津正がエースとして君臨したが、その背番号50が先発に回ったツケでリリーフ陣は少し頼りなかった。
野手でも川崎宗則がチームを去り、そして12年をもって精神的支柱だった小久保裕紀が現役を引退した。13年は長谷川勇也が198安打、打率.341で打撃2部門のタイトルを獲得したり、内川聖一(打率.316、19本塁打、92打点)や松田宣浩(20本塁打、90打点)と勝負強さを発揮したりしていたが、チームとしてはここ一番での長打力不足が心もとなかった。
そこで、14年シーズンに臨むにあたり大型補強を敢行。オリックスで4番を打っていた李大浩を獲得することに成功。そのほかの外国人では前埼玉西武のサファテ、前北海道日本ハムのウルフ、前阪神のスタンリッジを入団させ、さらにはFAの中田賢一と鶴岡慎也を招き入れた。
その甲斐あってこの年は開幕からなかなか快調だった。ぶ厚くなった先発陣、軸ができた打線、そしてリリーフではドラフト2位ルーキーの森唯斗がいい働きを見せた。
リーグ戦終盤にまさかの大失速
9月25日には五十嵐亮太(右から2人目)が押し出し四球を連発。まさかの大失速となった 【写真は共同】
4月末、5月末、6月末の時点ではオリックスが首位だった。とはいえ、両チームは激しいデッドヒートを繰り広げており、順位をたびたび入れ替えながら戦いが続いた。後半戦に突入するとソフトバンクが7月26日に首位を奪い返し、しばらくその座をキープすることになる。こうなれば地力に勝るソフトバンクが引き離しにかかると思われたが、現実はそう甘くなかった。
そして、終盤戦にまさかの大失速をしてしまった。9月17日、京セラドームでのオリックスとの首位攻防戦の結果次第では優勝マジック点灯の可能性もあったが、4対10で大敗を喫した。するとズルズルと勢いが消えていくではないか。4連敗して、なんとか1つ勝ったが、次は5連敗。10試合で1勝9敗の惨状だ。
特に辛い試合だったのが25日の楽天戦だ。7回からリリーフした五十嵐亮太が1イニングで4つの押し出し四球を与える大乱調。何度も勝利を運んできた「方程式」が崩壊して7対8で敗れると、ソフトバンクの自力優勝の可能性が消滅した。そして、この時点で2位のオリックスにマジック7が点灯するという事態となってしまったのだった。しかし、オリックスも重圧のためか波に乗れず26日から3連敗を喫する。